消費税の議論を先送りするな

 14日のテレビ番組で管財務大臣が「消費税の議論は2011年度以降」との方針を軌道修正して、3月からの議論開始を打ち出した。

 これに対して鳩山総理は「議論を行うことは結構だ」と言いつつ、「議論は早過ぎる」とも発言し、相変わらず国民を混迷させている。
 与党内も混乱し、「4年間引き上げないものを議論しても仕方ない」、「参議院選前に消費税の議論を行うのは自殺行為」といった声もあがっている。

 菅大臣は消費税について「逆立ちしても鼻血も出ないという位の歳出削減をしてからでないと国民の理解は得られない」と言っていた。

 なぜこの時期に方針を転換したのか…。疑問は残るが、私は、管氏の豹変を歓迎したい。

 増税論議の前にムダを削減というのは、小泉政権の方針でもあった。しかし、ムダ撲滅は永遠の課題でもあり、これ以上悠長にムダ探しだけをしている余裕はない。

 財政収支の均衡とそのための収入拡大は、それほど重要な課題だ。

 これまで鳩山政権が実施してきたマニフェストに基づく政策には、2011年度以降はさらに大きな歳出増が見込まれる。

 政府の長期債務残高は650兆円、国民一人あたりで割ると500万円(赤ん坊まで含めて)となる。しかも、現状を放置すれば、人口減少と高齢化により、税収の減少と社会保障費の増嵩は不可避である。

 金融危機は小康状態にあるとはいえ、ギリシアやドバイのように国家の巨大債務が経済危機を招くと言う現象も起こっている。わが国の財政赤字はこれらの国より悲惨な状況にあるのだ。

 また、将来の財政不安は、社会保障制度への不信となって、消費を冷え込ませる。これがデフレの一因となっていることも否定できないだろう。

 もちろん財政がこのような状況に陥った責任は過去の自民党政権にもある。
しかし、今、過去の政権を批難していても始まらない。現政権がなすべきは、将来に向かって、国家財政の立て直しを急ぐことだ。今すぐに。

 今年は参議院選挙の年、選挙を前にして増税議論はタブーと言われるが、選挙を理由に消費税の議論を先送りする余裕は、今の日本にはない。
 むしろ、参議院選で税制の在り方を問うべきではないのだろうか。そのためには、6月までに与野党ともあるべき税制の姿を(せめて骨格を)描き上げ、国民に提示しなくてはならない。

マニフェストより大切なことは

 衆議院予算委員会の審議で民主党のマニフェスト違反が焦点になっている。

 私は、現実の政策立案、予算編成に当たっては、必ずしもマニフェストを厳守する必要はないと考えている。ガソリン税等の暫定税率維持などはマニュフェスト違反であっても、厳しい財源不足に対応した正しい選択と考える。

 ただし、国民と約束した以上、それを変更せざるを得なくなった場合は、理由を明確に説明し、国民の理解を求めなければならないのは当然である。内容の重要性によっては、改めて信を問うことも必要だろう。

 22年度政府予算には、子ども手当、農家の戸別所得補償、高校授業料の無償化、高速道路の無料化(社会実験)など新規政策が盛り込まれた。

 これらの個々の政策の是非についてはここでは言及しないが、制度導入にあたって財政規律が無視されていることが最も大きな問題ではないか。国民は、「子ども手当や高速無料化のためなら、いくら借金をしても良い」とは言っていない。

 昨年の夏、我々自民党が民主党の諸施策の財源手当について問い質した際、彼等は「無駄をなくして予算を組み換えれば財源はある」と断言したはずではなかったか。マニュフェストの工程表でも、初年度である平成22年予算では、7.1兆円の新規財源を捻出できると明示していた。

 しかし、ムダの掘り起こしのため盛大に行われた事業仕分けにおいても、発掘された金額は1兆円に満たない。百歩譲って時間が限られているから仕方なかったとの言い訳を認めるとしても、財源の見通しなしに制度改正を行うことはあまりにも無責任ではないか。

 「無駄づかいをなくすことで借金を減らし、未来の子供達に負担を残さない」と言っていた主張とは明らかに矛盾する。

 昨年の夏、「皆さん、財源はあるんです」と街頭で絶叫していた鳩山総理のあの演説は何だったのか…と、腹立たしく思う。

 自民党政権時にも確かに多額の国債を発行していたが、一方で経済財政諮問会議による財政再建目標も維持していた。

 今や財政立て直しの指標を失った日本。6月に策定予定の中期財政計画には、借金削減の明確な数値目標が盛り込まれ、これ以上わが国の信用力失墜を食い止められることを願う。

政治とカネ

 民主党小沢幹事長の資金管理団体の土地購入を巡る事件への検察の判断が下った。小沢氏は嫌疑不十分で不起訴、元秘書の石川衆議院議員ら3人が起訴というものだ。

 これを受けて新聞各社は緊急世論調査を実施し、その結果が先週日曜日の朝刊のヘッドラインを飾った。
国民の声は、小沢幹事長の説明には納得できないとするものが9割、幹事長を辞任すべきとするものが7割と、各社ともほぼ横並びだ。

 この結果をよそに、小沢氏はすでに幹事長続投を宣言、鳩山総理もそれを了としている。世論調査をどの様に受け止めているのか…、今後も幹事長の職に留まるのであれば、自ら進んで身の潔白を証明すべきではないのか。

 「私は潔白だ、やましい事は何にもない」と言われているのだから、国会への招致に応じない理由は無い筈だ。
 民主党も「国民生活を守る為に一日も早い予算の成立を」と主張するのなら、まず国民の疑問に答える必要がある。まして、連立与党の社民党からも小沢氏の説明を求める声がでているのだから。

 我が自民党にとって、内閣支持率や民主党支持率が低落することは歓迎すべきかも知れない。しかし一方で、灰色に包まれた政治とカネの問題が、国民の政治不信を一層加速してしまうのではないかとの懸念が脳裏をよぎる。

 民主党の各位には、政治に向けられた厳しい国民目線をしっかり受け止め、迅速かつ適切な問題解決を図られることを望む。小沢独裁体制との批判を払拭する為にも、国民の信頼を損ねることなきよう、自らの良心に従って行動される事を期待したい。

責任政党のあり方は

 今年も早や一ヵ月が過ぎました。

 通常国会では補正予算案が可決され、審議の中心は22年度予算案をめぐる議論へと移ります。

 それに先立つ施政方針演説で、鳩山総理は「いのち」と言う言葉を24回も使いました。

 これを聞いて思い出したのは、今から15年前の代表質問の光景です。当時新党さきがけの代表幹事鳩山氏が、本会議壇上から「皆さん。政治は愛です。」と語りかけられました。

 演説内容については、与野党から賛否様々なコメントが出されていますが、私の感想は「善し悪しはともかく、鳩山さんらしい新スタイルの演説だった」ということにしておきたいと思います。

 いよいよ予算委員会で、92兆円の政府予算案の審議が始まります。野党となっても自民党は責任政党です。政府案を批判するのみではなく、具体的な対案を作成し、考え方の違いを明確に示していく方針です。

 まず、大きな論点とすべきは、短期的な細かな施策よりも、中長期的な成長戦略や財政規律・安全保障でしょう。政策面で与野党の対立軸を際立たせ、国民の皆さんにわかりやすく選択肢を提示しなくてはなりません。

 メディアの報道は、政治と金の問題を追求している様子に集中しがちです。予算委員会の実況中継をご覧いただき、政策についての地道な議論も行なわれていることを分かって戴ければ幸いです。

 そうは言っても政治と金の問題も避けては通れない問題です。政治への信頼を回復するには、まず、政治家自らが清廉潔白でなくてはなりません。
 
 国会審議のスムーズな運営のため、国会が本来の政策議論の場となるためにも、疑惑を持たれた政治家は、倫理綱領に基づき自ら進んで国民に対し説明責任を果たすべきでしょう。渦中の方々の潔い対応を期待しています。