暑中見舞い

 ある友人が今年の梅雨は男性型だと言った。

 梅雨に男性型と女性型の区別があるか否かは定かではないが‥‥、確かに今年の梅雨は異常だった。「しとしと」の時期が無く、梅雨入りとともにいきなり集中豪雨が続いた。しかも特定の地域が繰り返し襲われ、列島各地で大きな災害が発生した。

 豪雨による土砂崩落や浸水といった災害は毎年の様に起きているのに、防ぐことはできないのだろうか?

 確かに、どこで発生するかわからない予防対策より、壊れたところを復旧する方が予算は確保し易い。だが、それは甚大な犠牲を伴う。

 災害への備えは、いずれ必要な社会資本整備なのだから、将来への投資として前倒し実施することも検討すべきだろう。特に山林の崩壊を防ぐ、治山、砂防事業は、その効果が実証されており、小規模で数が多い事業は経済対策としても効果が期待される。

 国の調査では、福祉施設のうち1万3千を超す施設が土砂災害に巻き込まれる危険性がある地域に立地している。せめて、こういう地域だけでも前倒しで万全の対策を講じてはどうか。
この際、思い切った補正予算で災害対策を加速すべきではないだろうか。民主党も、まさか、「いのちを守る」工事を無駄とは言わないと思うが‥‥

 列島に大きな被害をもたらした梅雨が明けたら、今度は猛暑の到来だ。

 35度を超える毎日がもう10日以上も続いている。夜になってもあまり気温が下がらず、寝苦しい日々となっている。気温の上昇に比例するように、熱中症で倒れる方や、海や川の事故が毎日のように報道される。例年のことと言えばそうなのだが、この種のニュースを見るにつけても、「分かっている筈なのに、毎年同じことがくり返されるのは何故なのか? 防ぐ方法はないのか?」とつい考えてしまう。

 話は変わるが、地球の反対側(南半球)のアルゼンチンでは異常寒波が押し寄せ、マイナス14度(平年は8度だとか)にもなり多くの死者もでているらしい。

 北半球の熱波は偏西風の蛇行が原因だそうだが‥‥。CO2濃度(による魔法瓶効果)を気にしているうちに、太陽の活動が異常化しつつあるのかではないか?地球の自転軸がブレ始めているのではないのか?‥‥などと考えてしまうのも暑さのせいなのか‥‥。

 皆様も猛暑にはくれぐれもご注意を。

さて、

 この度の参議院選挙の結果をどの様に分析するか‥‥

 まず、改選議席を大きく減らした民主党。議席ゼロの国民新党。この与党両党が国民の批判を浴び、敗北したことは明らかだ。

 かと言って、自民党が勝利したと言えるだろうか?確かに谷垣総裁が掲げた与党の過半数阻止を達成し、改選第一党にはなった‥‥しかし、一方で比例区での得票数、獲得議席は過去最低である。一人区での大勝は各候補者の頑張りと公明党の協力であり、自民党への支持が高まったわけではない。

 そのほか、社民・共産は凋落傾向に歯止めがかからず、新しく船出した たちあがれ日本、新党改革も何とか1議席を確保したのみだ。

 唯一、誰が見ても勝者と言えるのは「みんなの党」だ。民主党に対する批判票を集め、東京・神奈川・千葉の3選挙区で議席を獲得し、比例区でも794万票と公明党を上回る得票で、7議席を獲得した。

 「消費税を上げる前にやることがあるだろう~無駄撲滅、国会議員の半減、公務員給与カット‥‥、経済成長を成し遂げれば消費税を上げなくても財政は破綻しない。」そんなストレートな主張が有権者には分かり易く共感を呼んだのだ。

 国会議員数の削減や、行政改革は否定しない。無駄撲滅の努力も継続しなければならない。
経済成長政策を戦略的に進めることにも異論はない。

 ただ、それだけで明るい未来が展望できるほどには、この国が置かれた状況は容易くない。歳出予算額の半分もまかなえない税収、GDPの1.8倍にも上る債務残高。毎年1兆円ずつ自然増加する社会保障費。この現実に立ち向かうには、節約と経済成長のみでは不可能だ。(もっとも、小さな政府を目指す「みんなの党」は、社会保障費の大幅削減に踏み切るのかもしれないが‥‥)

 国民は消費税増税を全面拒否しているわけではない。菅総理が党内議論も無く、思いつきのように10%引き上げを持ち出したが故に、子ども手当てや高速無料化のバラマキ財源のために増税するような誤解を与えたのではないか?

 加えて総理の発言のブレも影響したのだろう。

 民主党は参院選の総括で揺れており、国会での本格的な政策議論は9月の総裁選後になるようだ。しかし、菅総理が確信をもって提案した税制改革(というよりも社会保障税源への対応策)についてだけでも、早急に民主党内意見の集約をなすべきではないのか。

 自由競争を基調とする小さな政府をめざす「みんなの党の政策」をめざすべきか?、当面の社会保障財源として消費税5%引き上げを訴えた責任政党「自民党の政策」を選ぶのか?、それとも党内議論も終わっていない与党民主党の政策か?

 今すぐ、日本の針路を定める議論を始めなくてはならない。前回の繰り返しになるが、残された時間はほとんどないのだ。

国民の声は。

 国民の審判が下った。民主党 44議席、国民新党 0議席、与党は参議院で過半数割れとなった。衆議院でも3分の2を押さえているわけではないから、法案の再議決権も行使できない。これで民主党政権の暴走はストップできる。完全な衆参ねじれ状態の出現だ。

 ここで、自民党がかつての民主党のような理不尽な戦術(=与党案へのなりふり構わぬ反対)をとれば、すべての法案審議はストップし、民主党政権を窮地に追い込むことができるのかもしれない。しかし、それが日本の政治としてふさわしい姿なのか?それが国民の利益になるのだろうか?

 政治家の第一の責務は、政権を取ることではない。国民のために政策を議論し、実現することだ。政権獲得はそのための手段にすぎない。(ところが、ここ数年の政治は、政争に明け暮れ、まともな政策は実現していない。急激な少子高齢化による社会保障の危機が唱えられたのは、1980年代。財政の持続可能性が問題視され始めたのは1990年代。しかし、何の策も実現できないまま、20年がむなしく過ぎ去っている。策を講じても、国民が痛みの声を発すると、諭して継続する努力をせず、即時撤退する愚を何度も繰り返している。これでは改革はできない…)ねじれ国会であっても、しっかりと政策を議論し、成立させるべき法案は成立させる仕組みを確立しなくてはならない。それが政治の責任だ。さもなければ、二院制のあり方を根底から議論すべきだ。

 菅総理は、選挙に先立ち、消費税率引き上げをはじめ財政健全化のあり方を議論する与野党協議会の設置を呼びかけた。もちろん今回の選挙直前の唐突な呼びかけは、野党にも消費税引き上げの責任を負わせようという作戦だろうが、動機はどうであれ、この種の協議会はぜひ実現して欲しい。

 社会保障や外交方針など政権が交代しても継続性が重要な政策は多々ある。もちろん財政や経済政策は、小さな政府をめざすか、大きな政府をめざすか、によって大きく異なるだろう。しかし、国民生活や我が国の安全を左右する基本政策は簡単に変えてはならない。ゆえに、与野党が共同して、共有すべき政策を協議する場が必要なのである。

 そのなかで、議論すべき最優先課題は、まず社会保障のあるべき姿だ。50兆円に迫る年金、30兆円台半ばの医療保険、10兆円が見えてきた介護保険。(加えて5兆円の子ども手当て?)これらの支出にどう対処すべきか。つまり、給付を削るのか、保険料を上げるのか、増税により税を投入するのか。まず、それを議論し、設計図を示すことが必要だ。税制の議論はその後で良い。

 しかし、この結論は半ば見えている。(平成10年から始まった社会福祉基礎構造改革の議論で増税と保険料引き上げは必然となっている)毎年、1兆円ずつ拡大する財政負担を眼前にして、悠長に将来像を議論する暇はないとも言える。まず、当面の措置として、3%程度の消費税引き上げが必要という「たちあがれ日本」の主張は、この点で妥当だ。

 もちろん、より一層の歳出削減は断行しなければならない。だが、公共事業への政府支出をゼロにしても、6兆円しか浮かない。防衛費をゼロにしても5兆円。教育費をゼロにしても5兆円だ。これに対して現在の社会保障の政府支出は既に27兆円で、これから毎年1兆円ずつ増えていく。

 競争を基調とする経済成長を優先する「みんなの党」の主張も、ある意味で理解できる。経済が拡大すれば自ずと税収も拡大するだろう。しかし、それは不確実で格差拡大を伴う、さらに、実現しても数年先の話だ。加えて持続可能な社会保障の安定には安定財源が必要である。今は、続々と定年退職を迎える団魂の世代が社会のお荷物にならないように早急に議論を始めなければならない。

 各党は早急に議論のテーブルに着くべきだ。戦いは終わったのだから‥‥