発信力(説明力)

/
日本中が「iPhone4S」の新発売に沸き上がるなか、その開発者であり、永らくIT産業のトップリーダーとして君臨してきたスティーブ・ジョブズ氏の訃報が届いた。 ジョブズ氏が歩んできた人生は、IT産業の歴史そのものだ。 大学を中退し20歳で友人らと「アップルコンピュータ」を創業、家庭で手軽に扱えるパソコン「アップルⅡ」を開発した。その後、マウスを使って簡単に操作できるパソコン「マッキントッシュ」により、アップルは4000人の従業員を抱える会社に成長した。 ちなみに私が初めて購入したノートパソコンは「Macc550」。平成6年のことだ。もちろん日本ではまだ、インターネットはほとんど普及してなかった。 当時、私が主催する「新世紀フォーラム」の講師として招いた浜野保樹氏(現東京大学情報大学院教授)が、小さなノートパソコンを使ってホワイトハウスのホームページに接続、インターネット技術のデモンストレーションを行った。 ビデオプロジェクターでスクリーンにホワイトハウスの写真が映し出された瞬間、会場の聴衆からどよめきがあがったのを今もはっきり記憶している。 その様を見た私はMacc550の虜となり、暫くはインターネットに夢中になったものだ。 ジョブズ氏はインターネットパソコンを世に送り出した後も、携帯音楽プレーヤー「iPod」や、高性能携帯電話「IPhone」、タブレットコンピュータ「iPad」などを次々とヒットさせた。 美しく先練されたデザインと使い勝手の良さがアップル製品の魅力だが、それを分かり易く伝えるジョブズ氏のプレゼンテーション力も抜群だった。 聴衆の心を掴むジョブズ氏の発信力なくしては、アップル社の製品もここまでユーザーに愛されることはなかっただろう。 政治にも同じことが言える。いくら正しい政策でも、発信力(説明力)なくしては国民の理解は得られない。 経営手腕にも優れ、アップル社は今年8月にはニューヨーク株式市場で時価総額が「世界で最も価値のある企業」ともなっている。 「創造と破壊」の精神を失わず、既存の秩序に挑戦し続けたジョブズ氏の存在なくしては、現在のIT社会はなかったであろうし、これ程多くの人が簡単に情報に接し共有することができる社会も実現していなかっただろう。 過ぎ去った歴史に「もしも…」と言うことはあり得ないが、もしアップルコンピュータによるインターネットの爆発的普及がなかったら、「アラブの春」も起きなかったかも知れない。そして、アメリカ全土を覆う若者たちの暴動も…。 ジョブズ氏は、かつてスタンフォード大学で「Stay…