六甲おろし

“春はセンバツから”春を告げる選抜高校野球大会を「球春」と呼んでいるが、正にピッタリの表現である。

高校野球の歴史は古く1915(大正4)年夏に全国中等学校優勝野球大会としてスタート、第二次世界大戦中の数年を除いて長い歴史を重ねてきた。1924(大正13)年からはセンバツとして春の大会もスタート、今年で85回となる。

文部科学大臣として私が甲子園のマウンドに立ったのは5年前、第80回大会であった。ただ、以前にもこのコラムで言及したが、私は考えるところがあって、自ら投球せずに高校球児の一人にボールを託し代わりに始球式をしてもらったのだが…。後日、私が球を投げると期待してTVを見ていた支持者の皆さんから大変お叱りを頂くこととなった。

ところで、甲子園は高校球児の聖地でもあるとともに、阪神タイガースファンにとってもかけがえのない聖地である。
しかし、プロ野球開幕の日程がセンバツと重なるため、タイガースの開幕戦はたとえホームゲームであっても他球場で行わなければならない。

今年は第4節の対巨人3連戦が、甲子園での開幕試合となった。 

そこに至るまで阪神は3勝5敗と少々出遅れていた。一方の巨人は開幕7連勝と最高のスタートを切っていた。
伝統の一戦、しかも9日(火)の第一戦で巨人が勝てば球団新記録(開幕8連勝)がかかった大一番である。阪神VS巨人戦はファンが待ちに待った甲子園での開幕戦と重なり、球場はいやがうえにも盛りあがった。ジャイアンツの原監督も「新記録を目指して甲子園に乗り込む」と、気合充分であったのだが・・・。

結果は阪神の2勝1分け、しかもジャイアンツにとっては「31イニング連続無得点(球団タイ記録)」、「対阪神3連戦無得点(新記録)」と新記録ではあるが、期待とは正反対の結果で終わった。タイガース打戦も必ずしも好調とは言えないが、投手陣が良く頑張ったということなのだろう。虎キチの私としては、この結果にはまずまず満足はしている。

これから阪神のホームゲームは、聖地甲子園での試合が基本となる。その甲子園で勝利の美酒に酔いながらスタンドに響く「六甲おろし」は、ファンの明日への活力である。
負けても勝っても球場に足を運び続ける多くのファン(虎キチ)の期待に応えて、シーズン終了まで楽しませてほしいものだ。

オウ オウ オウ オウ 阪神タイガース フレ フレ フレ フレ!

今年は何度「六甲おろし」が聞けるのか? 期待がふくらむ対巨人3連戦だった。

*13日の淡路島を震源とする地震におきまして、被害にあわれました皆様にお見舞い申し上げますとともに、今後もご余震等に注意くださいますようお願い申し上げます。

司令塔

年度末を迎えた国会では、予算委員会審議の合間を縫って日切れ法案(脚注1)の処理が行われている。また今国会は平成25年度予算の審議入りが遅れたため暫定予算が必要で、先週末には必要な社会保障費などを盛り込んだ50日分の予算も成立した。
私が委員長をしている科学技術・イノベーション推進特別委員会は、審議を急ぐべき法案は特にないものの、開催について野党民主党の筆頭理事との話し合いがつかず、未だに山本一太担当大臣の所信表明は済んでいない。

衆議院には常任委員会として文部科学委員会があるものの、科学技術創造立国を目指す我が国にあって、特に発明や研究開発の新機軸などに対して国として総合的な対策を樹立し強力に推し進める目的で、国権の最高機関である国会に平成23年9月に科学技術・イノベーション推進特別委員会が新たに設置された。
アベノミクスが提示している3本の矢の一つ新成長戦略は、科学技術を進展させイノベーション(脚注2)に開花させて、民間の成長を喚起しながら我が国の国民経済を活性化して行こうというもので、当委員会が依って立つべきところである。しかしながら、委員会が開かれず審議が行われないことは非常に残念だ。

その代わりではないが、安倍総裁の成長戦略構想を受けて自民党政務調査会内に“科学技術イノベーション戦略調査会”が設けられ、その傘下で私は政策の方向性を決定する「司令塔機能整備」小委員長として、1月末以来この2ヶ月間はほぼ週1回1時間の定例会と、毎日レクチャーを受け、取りまとめに励んだ。
講師として産業界からは第一線経営者、学会からは気鋭の学者を招き、我が国の科学技術イノベーション進展のあるべき姿を、またどのような提案をし、リードしていくべきか熱心な議論を基に、3月27日に中間報告ではあるが我が国の科学技術政策をリードするための“司令塔強化”提言を、党として政府に申し入れをおこなった。

以下に提言の骨子を記す。
①科学技術創造立国を国是としている我が国が科学技術イノベーションを強力に推進するために、司令塔機能強化を大きく分けて「官邸のリーダーシップを発揮するための機能強化」と、「総合科学技術会議の機能強化」の2つの視点で捉え、これらを確実に実
施できる体制・機能を措置することを最重要課題と位置づける。

②安保・外交、経済・財政・規制改革等の総合戦略として科学技術イノベーション政策を位置づけ、官邸のリーダーシップを発揮することが重要である。特に、福島第一原子力発電所事故対応の教訓を踏まえ、政治決定と科学的助言の機能強化を図る必要がある。

③総合科学技術会議の司令塔機能を強化するため、毎年度の予算編成時に科学技術イノベーションのための特別予算枠(仮称)(以下、「特別枠」という。)を設け、総合科学技術会議の課題設定に基づき、一元的に実施すべきである。
これらの提言を実現するためには更なる調整が必要となるが、政府内での動きと進捗状況を合わせる意味もあり、今回中間報告として方向性を示したものである。

アベノミクスの3本目の矢は新成長戦略。新成長戦略の柱は短期的には規制改革、中長期的には科学技術イノベーションが誤りのない政策といわれ、日本の未来がかかっている。今後もしっかりと党内議論を重ね、間違いのない針路を提言したい。
それこそが、いま私に与えられた「未来への責任」だと思うから。

脚注1)特定の期日までに成立しないと国民生活に影響を与える法律案で、年度終了とともに失効したり廃止となる時限立法などが相当する。
脚注2)イノベーションの概念は、技術的な革新に留まらず、世の中に普及する新しい概念全般を指す。古くはワットの蒸気機関や自動車、近年ではインターネットやカーナビ、携帯などのイメージ。