Japan is back

平成25年もあとわずかで幕を閉じようとしている。この1年、久々に国政の第一線に復帰させていただいた私にとっては、本当に充実した365日だったと思う。

ちょうど1年前の12月26日に発足した第二次安倍内閣は、最優先課題として日本経済の長期デフレ脱却と景気回復を掲げ、“3本の矢”で日本を再生することを高らかに宣言した。
しかし、当時、産業界はもちろんのこと、メディア、労組、そして多くの国民も「言うほど簡単にデフレの現状を打破できるのか、本当かな?」と半信半疑の視線で見られていたのではないだろうか。

あれから1年。先日公表された「社長100人アンケート」では、来年4月の消費増税で一時的に需要が落ち込むものの、設備投資の下支えと個人消費の早期回復で、半年後の9月には国内景気は今より更に上昇するとの回答が6割に達していた。
「景気の“気”とは、人々の気持ちの持ちようだ」とはよく言ったものだ。景気の好循環が始まっていると考える経営者の増大が、設備投資や雇用を呼び起こし、さらなる景気拡大につながっていく。

今年の漢字“輪”を象徴する出来事である「2020東京五輪・パラリンピック招致決定」が国中に歓喜を巻き起こしたのも、“気”の改善に大いに寄与した。五輪招致はスポーツ関連施設整備や観光需要創造の契機ともなり、「第四の矢」として経済成長のブースターとなるだろう。

まだまだ予断を許さないが、「第一、第二の矢」が絶大な効果を発揮し、円安進行による輸出産業の業績改善、重点的な公共投資による国内需要拡大が、景気回復に大きく寄与しているのは事実だ。東証指数はバブル期にも例がないほどの伸びを示し、1年間で1.5倍以上になっている。これこそがアベノミクスの最大の成果と言えるだろう。

私自身もこの1年、微力ながらアベノミクスを後押しする政策形成に携わってきた。
その第一は「研究開発力強化法」の改正。日本の長期的な成長力の基盤となる基礎研究能力の充実を図るための法改正だ。我がライフワークである科学技術の振興は「第三の矢」である成長戦略の一翼を形成すると言っても過言ではない。
iPS細胞の研究をはじめ基礎研究は成果が花開くまで長期間を要する。今回の法改正は、それに対応して労働契約の特例を設け、研究者との長期契約を可能とするものだ。前科学技術・イノベーション推進特別委員長である私は、議員立法のとりまとめ役となって法案を作成し、先の臨時国会に提案、成立させた。

二つ目は、推進議連幹事長を務めるスーパーコンピュータの開発。今、世界一の座を懸けた競争は神戸にあるスパコン“京”の100倍=エクサ級(一秒に1兆の100万倍回の演算能力)のレベルが舞台となっている。この1000億円以上の巨大プロジェクトの初年度予算として12億円を獲得した。開発整備は“京”と同じくポートアイランドの医療産業都市エリアで進められることとなるだろう。このエリアは成長戦略の核となる国家戦略特区の候補地としても名乗りを上げている。地域指定に力を尽くしていることは言うまでもない。

地元の長年の懸案である「播磨臨海地域道路」の整備計画も、ようやく前向きに動き出した。ここ5年ばかり国交省と掛け合ってきた思い入れの強いプロジェクトである。
加古川・姫路バイパスの交通量は一日10万台。設計時の2倍に達し、渋滞が慢性化、重大事故も多発している。播磨地域の強靱化には新たな幹線の整備が不可欠だ。すでに近畿地方整備局で先行着手区間の選定に向けた検討も始まっている。我が国を代表するものづくり拠点である“ふるさと播磨”を支えるために、早期着工・完成をめざしていきたい。

矢継ぎ早に放たれるアベノミクスの矢。今、その政策効果で日本経済は好循環へと向かいつつある。
12月の日銀短観では、中小企業・非製造業の景況感が約22年ぶりにプラスに転じた。景気回復が幅広く浸透しつつある証左と言えよう。
第三の矢である成長戦略を具体化する法制度、予算案も整った。あとは実行あるのみだ。
20年の景気低迷を打ち破り、日本経済が力強くよみがえる日=“Japan is back”は近い。

会期末のドタバタ

10月15日から始まった第185回臨時国会が閉幕した。
アベノミクス第三の矢である成長戦略を具体化する国会のはずだったが、終盤は特定秘密保護法案をめぐり与野党が激突。担当大臣、国家安全保障特別委員長の問責決議案、さらには内閣不信任案までも提出されるなど、またしても法案審議を度外視した茶番劇が繰り広げられてしまった。

会期不継続の原則(会期中に議決されなかった議案は廃案となる)の弊害だが、このところ国会の会期末には必ずと言って良いほど、法案の廃案をねらった無意味な審議引き延ばしが見られる。これに対抗する手段として行使せざるを得なかった強行採決。今回については、いささか強引で稚拙であったかと思わないでもないが、ギリギリになって時間稼ぎの修正案を提出した民主党の対応にも辟易するものがある。

ただ、混乱はあったとしても、成長戦略実行の二本柱となる国家戦略特区法と産業競争力強化法は成立し、日本経済の飛躍に向けた布陣は整えられた。デフレ脱却を確かなものとするために、今週末にも編成する補正予算案とともに早期の執行に移していきたい。

今国会冒頭の所信表明で訴えたもう一つの重要政策が、世界の平和と安定に寄与する「積極的平和主義」を唱える外交政策である。就任1年で、すでに25か国を歴訪した安倍首相。とりわけASEAN加盟10か国はすべて訪問し、激変する北東アジア情勢をにらみ外交・安全保障上の布石を着々と打ってきた。

昨今の東アジアを取り巻く最大の懸念事項は中国の領土拡張政策だ。我が国の固有の領土である尖閣列島を中国領と主張し、海洋進出を名目に度重なる領海を侵犯する。先月には一方的に尖閣諸島上空に防空識別圏まで設定した。同様の強引な拡張行為はフィリピンやインドネシア海域でも行われている。
また、罪なき民を拉致し、あまつさえ核とミサイルによって隣国に軍事的恫喝をおこなう北朝鮮。そして本来同盟国であるべき韓国までもが、我が国が領有を主張している竹島を占拠し、反日外交を世界各地で展開している。

これらの行為に対抗する手段が、新たに安全保障の指令塔となる日本版国家安全保障会議(NSC)であり、その活動基盤となる特定秘密保護法である。
アメリカの上院外交委員会で「日本はスパイ天国」と証言されたこともあるように、我が国は、外交上の機密情報が漏れやすいと指摘されている。
今回の法制で、外交、防衛、スパイ活動防止、テロ防止に関する秘密保全のルールがようやく整備された。首相、外相、防衛相、官房長官の4者を基本とするNSC設置と相俟って、インテリジェンス(情報収集、分析力)は格段に高まるだろう。

法案審議の最中、戦前の治安維持法になぞらえたメディアの喧伝が行われたが、首相が「一般国民が特定秘密を知ることはあり得ない。ゆえに処罰されることはあり得ない」と答弁したとおり、法の趣旨は国家機密を知り得る立場にある政治家や官僚の行動を縛るものであり、一般国民が処罰の対象となることは基本的にはあり得ない。
アメリカ、英国、ドイツ、フランスなど、民主主義の先輩国も同様の国家機密保護法制を有している。これらの国で言論の自由が棄損されているだろうか。
戦後、国民が育んできた民主主義国家が全体主義国家に後戻りすることなど、あり得ない。ここに断言しておく。ブログ読者の方々には、まずはご安心いただきたい。

しかし、法案審議の過程で、政治に対する国民の不信感が増大してしまったことは、重く受け止めなければならない。法施行まで最大1年の猶予期間がある。政府はより丁寧に法の趣旨を説明し、国民の疑念や不安を解消しなければならない。
国会議員も一人ひとりがその責務として、国家安全保障に係る特定秘密をどのように限定し、特定秘密指定権限の濫用をいかにしてチェックするか、更なる議論を深めて行く必要があると思う。