野次

先週の19日(木)から平成27年度の予算委員会審議が始まり、通常国会での本格的な論戦の火ぶたが切られた。

野党第一党の民主党からは本会議での代表質問に続き、岡田克也代表がトップバッターとして質問に立った。質問者の一方的な問いかけに対して答弁者が用意した原稿で一方的に答える代表質問とは違って、一問一答形式の委員会質疑ではディベート能力がその評価にダイレクトに反映される。

論客と言われる岡田氏である。果たしてどんな議論になるかと注目していたが、比較的穏やかな議論から論戦のスタートとなった。

民主党が今国会での攻めどころとしている格差問題をはじめとする経済政策、後半国会の最重要課題である安保法制、過激派テロ組織ISによる邦人人質殺害事件についての政府対応など、90分間にわたって総理を中心に政府の姿勢を正した。岡田氏周辺によると、政府施策の評価すべき点と問題点を区別する「責任政党路線」を重視したという。

そんな岡田氏の姿勢に私は好感を覚えたが、メディアからはいささか盛り上がりに欠けたとの論評が多かった。果たして国民の目にはどのようなに映っただろうか。

ところでこのところ国会での「ヤジ」が問題視されてといる。

一つは17日の本会議でのヤジ。共産党委員長が「首相が『テロに屈する』の一言で冷静に検証を拒否する態度をとっている」とした質問の後に、「さすがテロ政党」と自民党席から飛んだもの。後に当事者から発言撤回と陳謝で一応の決着をみている。

もう一つは、衆院予算委員会における首相の質問者(民主党の玉木雄一郎衆議院議員)に対するものだ。玉木委員が砂糖の関係団体から西川公也農水相への献金のことを「ダミー団体から迂回した脱法的献金」と指摘した時、安倍総理から「日教組はどうするの」とヤジが飛び、総理と委員の間バトルが続いた。さすがに大島理森予算委員長も見かねて「いやいや、総理もっと静かに」と注意するほどだった。

その場は取り敢えず収束を見たが、翌日の前原誠司委員がこの問題で総理に反省を求めたことからバトルが再燃された。

安倍総理は日教組の本部所在地である日本教育会館に言及。「日教組は補助金を貰っていて、その教育会館から献金を貰っている議員が民主党にはおられて・・・」などと、同党の過去の政治献金問題を持ち出して反論した。玉木氏は自身のブログで総理の指摘は全く事実と違うと記載するなど、いささか泥仕合の様相を呈してきている。

いずれにしても一国の総理が答弁席でヤジを飛ばす光景はいただけない。激しいヤジと怒号が飛び交い、発言者の声が定かに聞こえないような本会議なども問題だ。

議会制民主主義の発祥の地イギリスでは、ヤジは日常茶飯事と聞く。与野党それぞれ声が大きくてユーモアセンスがある議員で構成された “ヤジ飛ばし部隊”が議場を沸かせる。それらの議員は敵からも味方からも一目置かれる存在だという。

「ヤジは議会の文化、議場の華」などと言う人もいるが、今の我が国の情況を考えると、文化というにはほど遠い。国会でのヤジのあり方が問われそうな、今年の予算委員会での論戦のスタートであった。

ところで後日談だが、事態は23日になって急展開をみた。首相は日教組発言に関して、「記憶違いによる正確性を欠く発言で遺憾であった。訂正する」旨の陳謝があり、夕刻には農水相の電撃辞任ニュースが飛び込んできた。24日現在、野党が審議拒否に出て本会議もストップしている。

15年度予算の早期執行は、長期デフレから日本経済を脱却させる意味で正念場である。正常な審議に早く戻り、国民経済が困らないよう本予算の年度内成立を期したい。