地球が危ない

東北に停滞する梅雨前線の影響で、秋田県の雄物川が氾濫し、大きな浸水被害が発生している。(被害の全貌は明らかになっていないが、被災者の皆さんが一日も早く下の生活に戻れることを願っている。)昨年は多数の台風が東北・北海道を襲い、大きな被害をもたらしたが、近年、北国での豪雨被害が多発している。また、先月の九州北部ように、全国的に熱帯のような局地的集中豪雨も増えている。「100年に一度の大雨」、「記録的な豪雨」という言葉が使わるのは日常茶飯のことだ。

 

一方で、全国的な降水量でみると、今年の梅雨は空梅雨ぎみであったようだ。関東、中部、四国地方など、全国7水系9河川で取水制限が行われている。今後の降雨量の状況次第で、より大規模な渇水対策が必要となるかもしれない。

気温の方は、全国115カ所の観測地点で5月の最高気温が更新されるという高温化が進んでいる。今も熱中症による被害がTVニュースで連日報道されている。

私の地元の実家は伝統的木造建築で風通しがよく、また川沿いにあるので夜になると涼風が通り抜ける。例年は湯上りと就寝前くらいしかクーラーのお世話にならないのだが、今年はスイッチを入れることが多くなっている。

 

激しい気候変動に襲われているのは我が国に限ったことではない。

ここ数年続けて記録的な猛暑に見舞われているインドでは、暑さや干ばつで多数の死者を出す事態となっている。昨年も最高気温が51度に達するなか、数百人が亡くなった。今年もそれに匹敵する暑さが予想されている。

 

7月12日、NASAは南極大陸で過去最大級の巨大氷山が棚氷から分離する映像を公表した。氷山の面積は約6,000平方kmで重さは1兆トンを超えるという。この氷山の分離自体も温暖化の結果であり、また巨大な冷媒の漂流は各地の気候に影響を与えるだろう。

 

地球規模の気候変動に対処するには、世界各国が協調した対策が必要である。にもかかわらず、6月1日にトランプ大統領は、米国内の石炭産業保護という理屈でパリ協定からの離脱を宣言した。パリ協定とはご承知のとおり、加盟各国が地球環境保全という共通の責任の下、それぞれの実施可能な目標と対策を講じて、温室効果ガスの排出を抑制する多国間協定だ。

 

米国という大国の離脱は、この協定の効果を半減させ、我々の孫子の代の地球環境の行方に大きな不安をもたらす。20世紀の産業革命を先導してきた先進国には今日の地球温暖化への責任がある。米国は「アメリカファースト」などという利己主義を振りかざすよりも、思いやりの心で、その地位にふさわしい責務を果たしてもらいたいものだ。(我が国の首都も同様だが‥‥)

 

我が国はパリ協定に基づき、2030年までに温室効果ガスを2013年度比26%削減するという意欲的な目標を掲げている。日本国内の対策を推進することはもちろん、必要とする国々に我が国の技術を移転し、地球全体の環境保全に貢献していくべきと考える。

無信不立

7月2日に投開票が行われた都議会議員選挙、事前予想でも苦戦が伝えられていた自民党は、改選前の57議席から大幅に議席数を減らし、過去最低だった8年前の39議席も大きく割り込み、最終的に23議席にとどまった。

翌日の朝刊各紙の一面には「歴史的大敗」と、大きな見出しで報道された。

前号で言及したように、森友学園や加計学園をめぐる一連の問題、国会終盤の組織犯罪処罰法の強引な国会運営に対する批判から、内閣支持率は大きく低下していた。

自民党にとっては大逆風の選挙になるとは思っていたが、これ程とは予想していなかった人がほとんどだろう。

 

これまでの自民党への高い支持の背景には、「受け皿がない」「他に選択肢がない」といった消極的な事情があったが、都議選では受け皿として小池知事率いる都民ファーストが登場し、自民党批判票を集めた形となった。

 

安倍総理は翌3日朝、首相官邸でのぶらさがり会見で「自民党に対する厳しい叱咤と深刻に受け止め、深く反省しなければならない」と語った。敗因について「安倍政権になって4年半、政権に緩みがあるのではないかという厳しい批判があっただろうと思う。しっかりと真摯に受け止めなければならない」とも言及した。

 

確かに、閣僚による失言や所属議員(特に安倍チルドレンと言われれる2回生)による不祥事など、「緩み」と言われても仕方がない出来事も数多くあった。

ただ、私は「緩み」よりも政権の「驕り」へ反省を求める声を、(地方公共団体の選挙が国政問題に影響されることの是非はともかく、)首都の有権者が示したと受け止めるべきだと強く感じる。

 

絶対的多数を擁して安定的な政権運営を続けてきた安倍政権。

自民党は今年3月の党大会で早々と党則変更し、総裁の3選を可能ともした。

これまで党内でも反対勢力はほとんどなく「安倍一強」といわれる体勢を保ってきた。

 

強いリーダーシップで安保法制をはじめ困難な法案も次々と成立させ、我が党の結党以来の課題である憲法改正も視野に入ってきた。4年半で延べ124の国と地域を歴訪する戦略的外交で、世界を牽引するトップリーダーの一人にも目されている。

その安倍政権を支えてきた国民の支持は、「他に選択肢が無い」という消去法の結果でしかなかったという事実が、今回の都議選で明らかになった。

 

局面を打開するにはまず国民の疑問に一つ一つ丁寧に答え、信頼回復に努めなければないない。前号でも言及したが、その第一歩として当面の課題である加計学園問題について求められれば、国会の場で説明責任を果たす必要がある。

記者会見で言及したように安倍総理は、積極的に国会に出席し丁寧に説明することで信頼回復を果たされるべきと思う。信頼回復なくしては自らの考えを国民に正しく届けることはできない。

 

憲法改正という大仕事を遂行する為にも、まずは信頼回復を最優先すべきだ。

「無信不立」。これまでも度々このコラムで言及してきたが、この言葉の実行が今また求められている。