年の瀬・2017年

漢字の日にあたる12日、京都の清水寺で森 清範(もり せいはん)貫主が特大の和紙に一気に「北」の一字を書き上げた。2017年の世相を表す“今年の漢字”だ。

“今年の漢字”は日本漢字能力検定協会のキャンペーンとして、毎年一般公募で選ばれる。今年は「北」が7,104票を集めた。朝鮮の数次にわたるミサイルや核実験の強行。九州部豪雨、海道のじゃがいも不作、海道日本ハムの大谷翔平や清宮幸太郎選手の露出。極め付きは、島三郎さんの愛馬キタサンブラック号の大活躍などが選ばれた理由として挙げられている。

 

二番手以降の漢字を見ると順に「政」→「不」→「核」→「新」→「選」→「乱」→「変」→「倫」→「暴」であった。これらの字を見ていると、どうも今年はネガティブな年だった印象だ。

 

ちなみに政界の面々が掲げる“一字”は以下のとおり。

安倍晋三総理大臣:「挑」 国難に挑むために総選挙に挑んだ年。

小池百合子都知事:「改」 改革の改。改めていろいろ挑戦していきたいし、改めて都政に

しっかり取り組んでいく。

枝野幸男立民党代表:「立」 立憲民主党の『立』だし、多くの皆さんから『枝野立て』

と背中を押していただいたということ。

小池晃共産党書紀局長:「偽」 偽りの答弁、偽りの行政、偽りの外交。そうしたことが続いた一年。

 

改めて一年を振り返ってみると、やはり今年の顔はトランプ大統領か?1月の登場から始まり、内政に外交にその発言が世の中を揺り動かし続けた。

欧州では、フランスで若き大統領の誕生という明るい話題があったものの、英国のEU離脱手続き開始に、スペインのカタルーニャ地方独立運動、そしてドイツでも連邦議員選挙でメルケル首相率いる与党が勝利したものの、連立政権の立ち上げが難航している状況で、不安を感じさせる出来事が続いている。一方のアジアは、北朝鮮の暴挙の裏で、10月に中国の習主席が盤石の新指導部を発足させ、周辺諸国への影響力を強めた。

中東に目を転じれば、サウジとイランの対立など混迷の度合いを増しつつある。

 

このような世界情勢の変化にもかかわらず、我が国の国会での議論はいわゆる「もりかけ」問題に終始してしまい、立法府の貴重な時間が浪費されたのが惜しまれる。

そんな中、安倍総理は「国難に立ち向かう」として、10月に衆議院を解散、総選挙が実施された。総選挙の直前に野党の再編が一気に加速し、一時は政権交代も起こり得るかもしれないという雰囲気が列島を覆ったが、結果は野党の混乱と自壊により自民党が大勝、自公連立による安定した政権運営が続くことになった。

 

しかし、今回の選挙を経て自民党内では明らかに変化が起きていると、私は考えている。

例えば私も所属する総務会の議論の質が変わった。この最高意思決定機関での発言が活発化し、しかも政府の方針に対する批判や党の方針に対する厳しい意見も飛び交っている。政策立案の主導権を官邸から政党に引き戻すため、正に国政の重責を担う議論が展開されている。

 

最後に、私の”今年の漢字”は「拓」。日本の未来を切り拓く「科学技術・イノベーション」「人材育成(教育)」に注力した一年だった。選挙で国民の皆様にお約束したとおり、今後とも党内外で政策議論を積極的に展開し、政党政治の一翼を担っていきたいと思っている。

 

今年も余すところ2週間。1年間いろいろとお世話になり、本当に有難うございました。平成30年も引き続きご指導の程、宜しくお願いいたします。

来るべき年が皆様にとって輝かしい年でありますよう祈念いたします。

 

 

大相撲

先月末から連日連夜ワイドショーを賑わしてきた元横綱日馬富士の暴行事件。未だに被害者である貴ノ岩の生の声は聞かれていないが、関係者の証言により事件の全容がほぼ見えてきた。秋巡業中の“モンゴル会”の酒席で、先輩の大横綱白鵬が話している最中にスマホをイジった貴ノ岩の態度に日馬富士が激高し、暴行。頭部に9針も縫う大ケガを負わせた。日馬富士は、横綱として責任を執るとして11月29日に引退を表明した。

 

2011年には力士の携帯メールから発覚した八百長事件などで、一時は存続の危機とまで騒がれた大相撲だったが、その後琴奨菊や豪栄道など日本人力士の活躍で、徐々に人気が回復。今年の正月場所後には稀勢の里が横綱昇進し、19年ぶりの日本人横綱が誕生した。「スー女」と呼ばれる若い女性の相撲ファンも急増するなど、国技としての地位を取り戻したかに思えた大相撲だったが、今回の事件で組織とガバナンスの在り方が再び厳しく問われることとなった。

 

思えば10年前の2007年、稽古中の暴力行為により時津風部屋の17歳新弟子・時太山(ときたいざん)が死亡、そして親方らが逮捕された事件があった。当時、文部科学大臣の任にあった私は、所管する公益法人である相撲協会が引き起こした不祥事に対処する立場にあった。

ただ、事件直後の金曜日の定例記者会見で質問を受けた私は、「熱心なタイガースファンで野球のことは詳しいが、相撲はそれ程詳しくない」と正直に答えてしまい、記者たちの間に不穏な空気が漂ったと記憶している。

 

会見が終わるとすぐに、詳細なレクチャーを受けるべく担当部局を呼んだが、週明けの月曜日に伊勢ノ海親方から経緯を聞くとのことだった。瞬時に土日を挟んでは不味いと判断し、「今日中に責任のある立場の人に来てもらうように」と指示。その結果、北の湖理事長の来訪を受けることとなった。

 

理事長が大臣室の扉から現れた時、私としては普通にお辞儀をして迎えたのだが、理事長はお腹がつっかえてお辞儀ができない。結果、私が謝っている様なシーンがテレビのニュースに流れ、多くの方々から「もっと堂々としていろ」とお叱りを受けることになった。

 

週刊誌には「北の湖の態度が大きい」との非難もあったが、当の理事長は事件の経緯を丁寧に説明するとともに協会の管理不備を認め、「この度は申し訳ありませんでした」と何度も繰り返しておられた。今は亡き氏の名誉の為に記しておきたい。

 

私はこの面談で、「外部の識者を協会の理事に迎え、相撲ファンの声が届くような体制にするように」と強く指導した。当時の相撲協会の理事会メンバーは約10名、理事長以下すべて力士出身者で占められ、閉鎖性が強かった。

翌年には親方以外から理事2名と監事1名が決定、選任されて体制は刷新されたかに思えたが…、今回、またしても暴行事件が起きてしまった。

 

相撲協会は、警察の取り調べ終了後に、貴ノ岩からの事情聴取を行うようだ。このような事件を招いた原因を究明し、新たな再発防止策を講じるべきことは言うまでもないが、問題はその本気度だ。

社会の規範や倫理とずれている言われる協会の体質を刷新するために、過半の理事を外部から招くくらいの意気込みで、さらなる改革が行われることを望みたい。