ねじれ解消の先に

既にご承知のとおり、参議院議員選挙は自民党の圧勝に終わり、自公の与党は参議院でも安定過半数を確保することとなった。アベノミクスの成果を、国民の皆様が高く評価していただいたと言えるだろう。

これで当面、日本の政治は安定する。逆に言えば、我々与党は政策決定においてねじれ国会を理由にすることはできなくなるということだ。これからは、6年あまりの間、迷走を続け、先送りされてきた政策判断を一つ一つ責任を持って下していかなくてはならない。

まず目前に控えるのは23日から正式に参加するTPP交渉。今は懐かしい菅総理時代に参加を表明してから3年弱を経てようやくスタートラインに立てた。失われた時間は今更どうすることもできないが、全力を挙げて情報収集し、グローバル社会を先導する経済ルールづくりに取り組まなくてはならない。併せて農業分野への影響もしっかり把握し、競争力強化を図る必要がある。

消費税率の引き上げ判断の期限も、あと数ヶ月だ。こちらはアベノミクスの成果で順調にGDPが伸びつつあり、安心して推移を見守ることができる。むしろ、政策課題は税率引き上げ時の混乱回避ではないか。取引に関する付加価値対して課税し、流通の諸段階で広く薄く公平に負担するのが消費税だ。円滑な転嫁を妨げる行為がないようにしっかりとした監視体制、ルールを定めなくてはならない。将来的には、社会保障・税番号(マイナンバー)制度を活用し、より、公平で透明な課税システムを構築していきたい。

8月に結論を出すはずの社会保障制度改革の方は難問山積だ。国民会議の議論は行われてきたものの、まだまだ制度改正案といえるレベルにはない。しかも、どちらかというと少子対策や年金に関する給付充実策の議論が目立ち、肝心の給付抑制、財政負担軽減策については理念にとどまっている。厳しい判断になるが、与党としてしっかり議論をリードし、家族のあり方地域社会のあり方を含めた、制度設計の抜本改革が必要になるだろう。

周辺諸国との外交、安全保障政策いついても、失われた時間の回復が急がれる。

領土問題を巡ってこじれてしまった日韓、日中の外交は一日も早く正常化しなくてはならない。今の状況は双方にとって、失うものが大きい。まず政府間の関係を正常化した上で、草の根レベル、国民レベルで歴史を共有する努力が必要だ。

普天間問題に端を発する日米安保問題は、国防を考える一つの好機とすべきかもしれない。もちろん当面は、現行の日米合意に沿って辺野古への移転を進めるが、中長期的には我が国の防衛力を高め、米軍を代替することも考えるべきではないだろうか。

このほかにも政策課題は数多い。日本が決められる政治を取り戻したことを内外にアピールするためにも、スピード感を持って党内議論をこなし、山積する課題に的確に対処し、6年間のねじれのロスを取り戻していきたい。

一方で、今回の選挙を通じて、残念なことが二つある。

一つは、投票率の下落傾向が止まらなかったことだ。全国の投票率は52%。前回比で5ポイント下回り、歴代3番目の低さだ。話題になったネット選挙解禁も空振りに終わり、国民と政治家の議論は深まらなかったということか。

以前にもこの稿でも触れたが、低投票率は有権者の政治不信の現れだ。今回の圧勝劇も、投票率をみるとその価値が半減しまう。

もう一つは二大政党の崩壊だ。あまりにもあっけなく民主党の地位が数ある野党の一つになってしまった。私は若き日、「ユートピア政治研究会」の一員として政治改革を目指していた頃から、政権可能な二大政党制こそが、健全な民主政治の基本であると信じている。その体制がいつまでたっても確立されないことは残念だ。

野党が再編され、我々与党としっかり政策議論できる主体が構成されることを期待したい。

日本という国の将来像は、日本国民が定め、一人ひとりの活動で創りあげるもの。政治はそのための手法である。我々政治家と有権者の皆さんをどうつなぐか。

難しい課題だが、これからも理想の政治制度を求めて挑戦していきたい。