夏本番

梅雨明けとともに今年も本格的な夏がやってきた。近畿地方でも先週は、連続の猛暑日(35℃以上の日)に襲われた。特に先週末の26日の暑さは極めつけ。朝からたくさんの行事に参加し、夏祭りなど屋外のイベントでも多くの方とふれ合えたが、とにかく「あついですねぇ」「あついなぁ」という単調な会話だけで十分な一日だった。夜になっても一向に蒸し暑さは収まらず、この夏初めて一晩中エアコンをつけっぱなしで就寝した。ここ数日は夏将軍もちょっと一息ついてくれたようだが、それでも真夏日(30℃以上)は避けられない。

暑さの高まりとともに熱中症被害も増えてきた。気象庁では高温注意情報を発信して警戒を呼び掛けているものの、26日には全国で救急搬送される方が相次ぎ、その人数は千人を超えた。亡くなられた方も二桁にのぼる。外出は勿論、屋内でも油断できない。気温上昇を甘く見ず、体感温度で「異常に暑い、のどが渇く」と思ったら充分な熱中症予防が必要だ。原発が全停止し電力不足が懸念される中、昨夏以上の節電対策が求められているが、命を落としてしまっては元も子もない。無理に我慢せず適度にエアコンを使用してもらいたい。

27日には楽しい行楽が悲劇に転じる水の事故も相次いだ。特に気をつけなくてはならないのは河川での遊泳。昔とちがい、プールでしか泳いだことがない子どもたちは(川で泳ぎを覚えたのは昭和30年代までか?)、水流の怖さがわからない。場所により流速が変わり、思わぬ深みもある。事前のちょっとした注意、どんなリスクが潜むかを意識しておけば多くの水難事故は避けることができる。

地球温暖化の影響かどうかは定かでないが、近年の日本の気候は明らかに熱帯化しているように思える。今年の7月はじめに九州北部を襲った豪雨では、「これまでに経験したことのないような大雨」という短文気象情報が発信され、各地で避難指示が相次いだ。確かに1時間雨量が100ミリに迫る状況は“梅雨”と呼ぶには激しすぎる。正に熱帯の“スコール”の降りようではないだろうか。

気象予報技術は日々刻々と進歩している。1時間程度の局地降雨情報は最新鋭のレーダーで正確に把握可能であり、その情報はスマートフォンで入手できる。地震はともかく、雷や竜巻も同様に予測できる。だが、その情報を有効に使えるかどうかは個々人の判断と能力。

阪神・淡路大震災や東日本大震災で崩壊した近代都市の姿から我々が学んだのは、いかに科学技術が進歩しようとも災害を完全に防ぐ「防災」の達成は難しいということだ。むしろ、いかにして災害を避け、被害を小さくするかという「減災」の発想を広げることに力点を置かなくてはならない。

日本人は古来、自然と共生することで素晴らしい文化を育んできた。“里山”にしても“ため池”にしても、自然と人工の協調により生命の輪廻が維持され、美しい景観が形作られ、そして水害を押さえる貯留機能も備えてきた。長い歴史の中で根づいた文化を守っていくためにも、そして何よりも貴い命を守るためにも、我々は今一度自然に謙虚に向き合うことから始めなければならないのではないか。