大切なことば。

 最近気になっているTV コマーシャルがある。

 「時雨、五月雨、こぬか雨‥‥、日本には同じ雨にも色んな雨がある。」何のCMかは覚えてないが、こんなセリフのCMだ。

 たしかに日本語は表現が豊かだ。

 20年ほど前にケニアへ行った時、スワヒリ語の一日には夜と昼しかないことを知った。ケニアでは太陽が昇れば昼、沈めば夜。その二つだけで、朝や夕は存在しないのだ。

 限りなく水平に広がる地平線にオレンジ色の太陽が沈むと、またたく間に夜の暗闇が訪れる。だから二つの違いを表現する言葉があれば十分なのかもしれない。

 季節の変化も雨期と乾期の二つだけで、景色に至っては一年中ほとんど変化がない。ちなみに挨拶は朝でも昼でも夜でも「ジャンボ(Jumbo)」という一語ですませる。

 一方、日本語では同じ夜でも、宵の口、深夜、明け方と様々な言い表し方がある。
朝も、情景に応じて、あけぼのや夜明け、早朝と多様な言葉を駆使する。挨拶でも、朝昼晩と時間帯により使い分けなくてはならない。

 日本語の豊かな表現力は、わが国の気候や自然の多様性に起因するのだろう。

 四季に応じて気候が移ろい、美しい自然が姿形を変えていく中で、私たちの先人は豊かな語彙を生み出してきたに違いない。

 そんな美しい日本の自然、そして日本人の繊細な感性を、我々は大切にしていかなければならない‥‥。文明が進歩し、暮らしぶりが多少変化しても、四つの季節は必ず巡ってくるのだから。

 もうすぐ梅雨(つゆ)が訪れるが、何故〝梅〟と〝雨〟なのか‥‥。梅花咲き誇るのは早春2月のはず? では、梅の実りを呼ぶ雨の意か?

 TVのコマーシャルを見て改めて考えている。