日本の誇り

ラグビーのワールドカップで“桜ジャージ”が南アフリカとサモアに快勝!

スコットランドには敗れたものの、今までラグビー弱小国と評価されていた日本が、世界ランキング3位で優勝候補の南アに歴史的大金星を挙げ、フィジカルで圧倒的な差があるサモアにも圧勝したことで、俄かラグビーファン(私もその一人だが)が国民の間で一気に広がった。

 

4年後、2019年のワールドカップは日本で開催される。この大会を大成功に導くには、地元日本のラグビーが強くなり、国民の人気が高まることが第一。惜しくも決勝トーナメント進出は逃したものの、明日(12日)のアメリカ戦でも選手たちが大活躍し、勝利を得ることが、強さの証となりファンの拡大と定着につながるだろう。

 

そんなイングランド発のラグビーニュースで盛り上がる日本に、ストックホルムからも朗報が連続した。二人の日本人科学者のノーベル賞受賞である。自然科学分野の医学・生理学賞に大村智氏、物理学賞に梶田隆章氏が栄誉に輝いた。

 

大村氏は、細菌の発見とそれによる感染症治療の医薬品を開発し、河川盲目症と呼ばれる風土病から症状の悪化や感染を防ぎ、多くの人々を失明の危機から救ったことが評価された。

梶田氏の授賞理由は、物質を構成する最小単位である素粒子の一つ、ニュートリノに重さがあることを発見、物理学の常識を覆したことだ。

 

昨年に続く今回の受賞ラッシュは、大いに国民を勇気づけてくれた。街頭インタビューで最も多かったのは「日本人として誇りに思う」との言葉。今世紀に入ってから自然科学部門の受賞は16人となり、アメリカに次ぐ第二位だ。我が国の基礎研究力の層の厚さを実証している。科学技術政策の推進をライフワークと考えている私にとっても、これほど嬉しい知らせはない。

 

科学技術政策の基本方針は、1995年制定の科学技術基本法に基づく科学技術基本計画で定めている。私自身も毎回この計画の策定に深くかかわっている(現在第5期計画策定中)が、2001年に定めた第2期計画では「ノーベル賞に代表される国際的科学賞受賞者を欧州主要国並みに排出すること。50年間でノーベル賞受賞者を30人程度輩出」という数値目標を掲げた。当時は「大胆で意欲的な目標」と言われたが、今やクリアして当然の通過点のような気がしてきた。

 

ただ少し心配なことは、“子どもの理系離れ”や最先端科学分野への“留学生の減少”である。基礎研究は成果の発揮までに非常に長い時間が必要となる。教育は国家100年の計といわれるが、計画的な人材育成無くして科学の発展はあり得ない。一連のノーベル賞受賞が若者たちの探求心に火をつけ、我が国の科学技術振興に追い風となれば幸いである。

 

偉業を成し遂げたにもかかわらず謙虚な姿勢で記者会見に臨んでおられる受賞者の二人の姿は、私たちに日本人としての誇りを感じさせてくれた。桜ジャージをまとい一団となって戦い、君が代を歌う日本代表の選手達の姿も然り、日本への“誇り”こそが、ふるさとの明日を拓くのかもしれない。