究極の選択

サッカーの競技人口は、200以上の国と地域で25000万人以上。故に4年に一度の祭典、“2018FIFAワールドカップ”は世界の人々が盛り上がる国際イベントだ。TV視聴者数は10億人とも言われている。

 

開催国ロシアはFIFAランキング70位と出場32カ国中最下位だが、熱狂的なサポーターの応援を受けてグループリーグで2連勝し、早々と決勝トーナメント進出を決めた。一方、ランキング1位で大会2連覇を狙っていたドイツをはじめ、ランキング上位国が続々と敗退する波乱含みの大会となってきている。

 

番狂わせと言えば、ランキング61位の日本代表(サムライブルー)は、初戦に16位の格上コロンビアに2対1で快勝し勝ち点3を獲得、世界からは「奇跡の勝利」と称賛された。アジア勢が強豪の南米勢に勝利したのはワールドカップ史上初のことらしい。

 

今大会のサムライブルー、羽田出国時の見送りファン数は150人程度であったという。大会直前の監督交代劇や新鮮みに欠けたと言われたメンバー選出などが、影響したかもしれない。ところがコロンビア戦の勝利で機運は一転、日本中がワールドカップ一色となった。

 

その後押しもあり、第2戦のセネガル戦では2度のリードをはね返し2対2のドローで勝ち点1を獲得した。その結果、最終のポーランド戦で引き分け以上であれば、自力でベスト16、決勝トーナメント進出が決定するということで、先週木曜日、列島の応援ボルテージは最高潮に達し、深夜にもかかわらずTVの瞬間最大視聴率は54%を記録した。

 

前半は日本が押し気味だったがチャンスに得点できず0対0で折り返した。後半に入ってもボール保持率、シュート数などほぼ互角に戦ったが、後半14分のセットプレーからポーランドに得点を許しリードされる展開となった。

 

同時刻にキックオフされたグループHのもう一つの試合(セネガルVSコロンビア)は前半終了時で0対0。2つの試合がこのまま終了すれば日本は3位となり、予選リーグ敗退となる。サムライブルーは残された時間内に得点し、最低でも引き分けに持ち込まなければならない苦しい状況に追い込まれた。

ところが後半37分過ぎ、日本は突如攻撃を止めて“パス回し”を始めた。

状況を把握できずに自分の目を疑ったのは私だけではないだろう。

その後コロンビアが後半29分に1点を先取しリードした速報が入った。このままの状況で試合が終われば、負けても日本の決勝進出が決定するとのことだが、攻撃を放棄してパス回しに終始する超消極策は、他人任せ、運任せの謗りは免れない。

 

2試合ともアディッショナルタイムも含め10分程度の時間が残っている。ポーランド戦がこのまま終了しても、もう一方の試合が現状のまま終わるとも限らない。

セネガルが得点する可能性、日本が得点する可能性、ポーランドに追加点を許すリスク、反則を犯すリスクなど、すべての状況を考えたうえで総合判断した西野監督の戦術(究極の選択)であったと思う。報道によると、日本のベンチの中でも意見は分かれていたらしい。

 

この采配をめぐっては内外で疑念が噴出した。海外メディアは批判的な意見が多かったようだ。国内でも賛否は分かれた。

西野監督は、試合後のインタビューで「不本意な選択であった」と自ら言及した。

誇り高きサムライブルーにとって、「フェアプレーではない」と酷評された戦術であったが、

セネガルとは勝ち点、得失点差、総得点が全く同じで直接対決で引分け、日本が競り勝ったのは今大会から採用されたフェアプレーポイントの差であったことは特筆しておきたい。

 

目の前のゲームの勝敗よりも、決勝トーナメント進出という大目標の達成を優先せざるを得なかったと思う。そして、その方向で決断し、結果を出したことは肯定されるべきだろう。

 

いずれにしても、サムライブルーの戦いはまだ続いている。大会の総括は全ての戦いが終わった後でよいのではないだろうか。今はベルギー戦へのエールを全力で送ろうではないか!