6年ぶりの総裁選

我が国では年に3回国民の大移動が起きる。年末・年始、ゴールデンウイーク、そして盆休みだ。今年の盆休みは11日(土)から16日(木)までの6日間が一般的らしいが、17日に休暇を取れば19日までの9日間の長期休暇となる。

 

そんな連休前の10日、石破元自民党幹事長は国会内で記者会見し、9月に予定されている党総裁選への出馬を正式に表明した。

 

今回の総裁選を巡っては、予ねてより自民党内の各派閥の対応が報道されている。早々と安倍支持を打ち出した二階派、麻生派に続いて、7月24日には総裁候補の一人と言われていた岸田政務調査会長が、立候補の見送りと安倍首相支持を表明した。

派閥をどのように定義づけるかについては様々な意見があるところだ。小選挙区制度への移行や政治資金制度改革に伴い、その性格が大きく変化してきたのは事実である。ただ総理に直結する総裁選を戦う上では、派閥の果たす役割は今でも大きいと言える。

 

このような中で、党内第三派閥の竹下派(55人)は、衆院議員の大勢が安倍首相支持、参院議員の方は石破氏支持と意見が分かれ一本化の調整が難航、最終的に自主投票となった。「派として総裁選の対応が分かれるのでは派閥とは言えない」との意見もあるようだが、私はそうは思わない。

総裁選において派閥内に候補者が存在しない場合、派として一人の候補に一本化しなければならないと言う必然性はない。むしろ自主投票が正しいと私は考えている。

 

私は党・政治制度改革実行本部長として平成26年に総裁公選規程を改正した。“党員の意思を、より反映する”ことを改正のベースとし、党員、党友の投票による地方票と、一人1票の国会議員票のウェイトを等しくしたことが焦点だ。つまり、現在の国会議員数は衆参あわせて405人、ドント方式で割り振られる約106万人の地方票の総数も405票となり、あわせて810票で総裁選が争われる。今回の総裁選で初めて適用されるが、我が党が民主的で、より開かれた国民政党であることの証左だと思っている。

 

9日には石原派が安倍首相支持を決定、各派閥の動向が明らかになった。国会議員票だけを考えると、出身派閥である細田派(96人)に、麻生派(59人)、岸田派(48人)、二階派(44人)、石原派(12人)を加えた259票を確保し、さらに竹下派の一部の支持も得る安倍首相の圧倒的優位が予想される。

 

私自身は現在どの派閥にも属していないが、今回の総裁選では三原朝彦氏(衆・竹下派)とともに、石破氏を支持することをすでに表明している。

我々三人は昭和61年(1986年)7月の衆参ダブル選挙で初当選を果たした“同期の桜”だ。与野党67人だった同期生は32年の歳月を経て、今国政の場に籍を置くのは7人(衆院5人、参院2人)のみとなった。

そんな同期の仲間で唯一総裁候補まで登りつめたのが石破氏であり、三原氏と同様に永年の盟友でもある。加えて私は今日に至るまでの石破氏の努力を高く評価しているし、政治姿勢にも共感を覚えている。

 

報道によれば、安倍総理は11日の地元山口県連の会合などで3選出馬に意欲をにじませたと言う。また、野田総務大臣も出馬に向けて推薦人確保を最後まで努力すると言及している。何れにしても6年ぶりに総裁選が行われることは間違いない。

 

自民党は野党時代の平成22年に改定した綱領で「国家社会主義的な統治との対峙」を掲げ、その第一の柱を「常に進歩を目指す保守政党である」とした。そして、具体的には、「①勇気を持って自由闊達に真実を語り協議し、決断する。②多様な組織と対話、調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる。」といった党運営の基本姿勢を定めている。

 

経済、財政、外交、社会保障、安全保障、教育、憲法、政治改革、行政改革、国会改革など、総裁選で議論すべき政策課題は山ほどある。

今回の総裁選で、綱領で定めるとおりの自由闊達な議論が繰り広げられ、それが国民の政治への関心を高め、政治への信頼回復につながることを切に願っている。