統一地方選をふり返って

4年に一度の統一地方選挙が終わった
とはいっても、東日本大震災により一部の被災地では選挙が延期され、また、他の地域でも被災者への配慮から街頭演説や選挙カーの活動を控えるなど、自粛ムード一色の異例の選挙戦となった。
そして、その結果を見ると、民主党の不振を強調される報道が目立ったが、かといって我が自民党が躍進した訳でもない。

確かに、民主・自民両党が対決した東京、北海道、三重の3知事選挙では民主党系候補が全敗し、道府議会選挙や政令都市の選挙でも、民主の党勢は拡大しなかった。
後半戦の市区町村選挙でも、直接対決型の10市区長選挙で、民主は3勝7敗の大幅な負け越しだ。
このほか候補者の擁立もできず、不戦敗に終わっている例も多い。いわば国政与党の失政に足を引っ張られる形で、全国的に民主党の名では浮動票が獲得できない状況にあったといえる。

一方、このような民主自滅状態にもかかわらず、自民党は前回勢力をほぼ維持した程度にとどまった。ひいき目に見れば、今後の政権戦略に一定の道筋をつけたとも言えるが、必ずしも国民の自民支持が回復したと自信をもてる結果ではない。
むしろ、自民や民主といった既成政党への失望感が広まっているのかもしれない。

その証拠の一つが地域政党の隆盛だ。
橋下大阪府知事が率いる「大阪維新の会」は府議会で過半数を獲得、大阪・堺市議会でも第一党へと躍進した。吹田市長選でも維新の会新人が現職を破り、キャッチフレーズの「大阪都構想」の実現間近(?)の勢いである。
中部圏では、2月の愛知県知事選挙、名古屋市長選挙で、川村名古屋市長の「減税日本」が旋風を巻き起こした。(ただし、今回の統一選挙では無理な“減税”という化けの皮がはがれた形で伸び悩み。)

成熟社会の国民ニーズは多様かつ複雑だ。高度成長期のような効率重視の全国画一的政策では応じきれない。自ずと地方自治の重要性が高まり、中央政府と地方政府の役割が分立してくるだろう。
その際に、国政を担う政党と地方政治を担う政党が同一である必要性はない。むしろ、地域ごとに個性ある主張を唱える政党が林立し、特色あるまちづくりを進める動きは、地方の自立・独立の時代にふさわしい姿かもしれない。

しかし、個人的な人気に過度に依存した政党、減税といった大衆迎合的公約のみの政党というのは、ちょっと考えものだ。
さらに、既成政党への失望や政治不信が、地域政党の人気につながっているという現状もいただけない。

政党たるもの、本来、確とした政策理念を綱領として掲げ、その下に志を同じくする者が集うべきものだ。民主党のように綱領もなく、選挙で当選することを目的に集まった烏合の衆では、やがて党内抗争により自滅するのは目に見えている。

一方、我が自民党は、昨年綱領を改変し、「健全な保守政党」として出直しを図っている。勤勉を美徳とする、自立を誇りとする、家族や地域の絆を持つ、公への貢献と義務を果たす、等々の方針を掲げ、「日本らしい日本の確立」の実現をめざしている。
しかし、まだまだ、この立党の理念が党員、国民に浸透しているとは言いがたい。より、かみ砕いた言葉と、具体的な政策提案による情報発信が求められる。

明日、5月3日は憲法記念日。国家のあるべき姿を描き、国民に示すことは政治家、政党の大きな役割だ。地方自治のあり方も含めて、国のかたちを大いに論じ、「日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定」をめざして行かなくてはならない。