助け舟

「社会保障と税の一体改革関連法案」の審議時間は、連日の集中審議の成果で既に63時間を数える。各党の主張が出そろい、論点もほぼ明確になってきたようだ。
これまでの質疑で私が最も注目したのは、我が党の茂木政調会長が提案した「社会保障制度改革国民会議」である。 党内ではこの会議の創設を含む政府案への対案「社会保障制度改革基本法案」が了承され、近々国会に提出される予定である。

これまで自民党は、関連法案成立に協力する前提として、民主党マニフェストの象徴でもある「最低保障年金の創設」や「後期高齢者医療制度の廃止」の撤回を要求してきた。しかしそれでは、あまりにもハードルが高く、歩み寄りは絶望的だった。

民主党の看板政策を自民党案に掛け替えることはできないと言うのなら、一時棚上げして「国民会議」の場で協議のうえ国民の総意として修正してはどうかと、茂木氏が「助け舟」を出したのだ。マニフェストに揚げた政策の旗を今すぐ降ろす訳ではないので「公約違反」との批判を弱めることはできる。極めて現実的で妥当な提案だ。

厚生年金と共済年金の一元化や介護保険料の抑制、社会保障番号の導入などは、政府案と自民党案でほとんど違いはない。少子化対策における待機児童抑制や医療保険の財政基盤の安定化も政策の方向としては同じである。腹を割って(足して二で割るのでなく)しっかりと政策協議を行えば、より良い案が見つかることもある。

野党がここまで歩み寄り、手を差し伸べているのだから、政府には一体改革関連とされる十数本の法案をもう一度見直し、すぐに採決すべきもの、国民会議に委ねるものに再整理してもらいたいものだ。

そんな中、先週30日と3日の二度にわたり、野田首相と小沢元代表との会談が行われた。予想されたことではあるが、首相の協力要請を小沢氏は拒否、両者の主張は平行線で終わった。この結果を受けて、首相は、ようやく小沢氏の説得をあきらめ(?)、野党の協力に向けて舵を切ったようだ。4日には問責決議を受けた2大臣をはじめ、審議の足かせになる閣僚を交代させる内閣改造を行われる。福島と神戸で地方公聴会も開催され、着々と採決に向けて環境が整えられつつある。

気がかりなのは自民党の姿勢がもう一つ定まらないことだ。谷垣総裁は未だに「解散総選挙の確約」「会期中の採決に向けての日程提示」を求められているが、見方によってはハードルを上げようとしているようにも見える。こちらから提案した条件に相手が応じたら、さらに条件が追加されるのでは、自民党の姿勢が問われかねない。

政治の課題は消費税だけではない。決められない政治から脱却するためにも、ここは与野党とも大人の対応が必要だ。