竹島

日本政府が、内政論議であたふたしている間に、韓国の李明博大統領による“竹島”上陸という暴挙を許してしまった。
竹島は韓国併合(1910年)以前からの我が国の領土であり、サンフランシスコ平和条約発効時(1952年)に我が国が放棄した「朝鮮に関する権限」の範囲には含まれいない。むしろ韓国の初代大統領が一方的に設定した境界線=李承晩ラインにより、かすめ取られたような形になっているのだ。今、韓国大統領という立場にある人物が、この島を訪問するということは、我が国にとって、極めて遺憾であり、日韓の将来に暗雲をもたらす愚行と言わざる得ない。

さらに、李明博大統領は14日に「(天皇は)韓国を訪問したがっているが、独立運動で亡くなった方々を訪ね、心から謝るなら来なさいと(日本側に)言った」と発言した。我が国から要請した事実のない天皇の訪韓に言及し、謝罪まで要求したことは常軌を逸脱したものであり、日本と日本国民に対する侮辱とも言える。

政府は毅然とした態度で、「竹島は歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに我が国の領土である」との立場を明確に主張するとともに、「一連の大統領の反日的発言は一方的な歴史感に基づく侮辱的な発言であり、日本としては受け入れることはできない」と明言すべきである。

大統領がこのような大人げない行動に走るのは、韓国の内政問題=末期的な政権の求心力回復をねらう故だろう。とは言っても、互いの国民間に反日、反韓感情をあおる行為は、日韓関係にとって不幸のタネをまくのみだ。
ただ、幸いなことに、今のところ両国民の感情的対立は高まっていないように見える。少なくとも我が国では、(良い悪いはともかく)、従来と変わりなく韓国ドラマが放映され、K-POPが流れている。

隣国の暴挙にもかかわらず意外なほどに反韓感情が高まらない一因は、竹島問題について、日本人の意識が希薄なためだろう。それもそのはず、私が文部科学大臣時代に行った2008年の学習指導要領改定以前は、竹島問題について触れていた中学校教科書は半分に満たなかった(7冊中3冊のみが記述、北方領土については全ての教科書が記述)のだ。

これでは日本の領土について正しい知識を与えることはできない。指導要領の改訂作業では竹島について明確に日本の領土と記述すべく検討を進めた。当時は李明博大統領の就任時期であり、両国の関係に波風を立てないように配慮が求められたが、私は「領土は国家の基本である。子どもたちには正しい教育をしなければならない」との信念のもと、指導要領解説書に「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせることも必要である」という文言を盛り込んだ。

現在中学校の社会科の教科書や地図帳が何冊採択されているのかは知らないが、全ての教科書や地図帳で明確に竹島が日本の領土であることが記されている筈だ。
しかし学校現場では、竹島問題の存在と日本の主張について正しく教えられているのだろうか? この機会に、もう一度しっかりと検証しなくてはならない。

昨今の領土を巡るいざこざは竹島のみではない。北方領土へのロシア大統領の訪問、尖閣諸島への中国の活動家の強襲上陸等々。これらの問題=隣国たちの強気の行動は民主党政権になってから顕著になった事象だ。
もちろん我が国の領土をないがしろにする隣国たちの姿勢は許されるものではない。しかし、彼らの行動を促したのは、我が国の外交力、防衛力の脇の甘さであると言えなくもない。

さらにその遠因は、普天間問題を発端として日米同盟を弱体化してしまったことであろう。その問題の責任者であった原因者であり、退任後も民主党外交顧問を名乗られ、奇行を重ねられている元総理は、少しは反省されているのだろうか?最近の言動を見る限りにおいては、とても反省されているとは私には思えないのだが…。