国民政党、途半ば?

激戦となった自民党総裁選は、安倍晋三元首相が決選投票で石破茂前政調会長を破り、第25代総裁に選出された。総裁経験者の再登板は初めて。決選投票での逆転は石橋湛山氏が岸信介氏を破った1956年以来56年ぶりとなる。

26日の投開票日、私は、党本部8階のホールで新総裁誕生の瞬間を見守っていた。(とは言うものの、今の私は党員としての一票しか行使できないのだが…。)
開票前から、5人の候補の中では石破氏が一位になるだろうが、議員票のみの決選投票となれば2位の候補が勝つのではないかと言われていた。

それでも、1回目の投票結果発表で、石破氏の党員獲得票が165票(党員票の55%)と読み上げられた時、一瞬、会場がざわついた。
石破氏の地方の党員獲得票が事前の予想より多かったのだ。2位の安倍氏は87票だからダブルスコアでダントツの第一位である。しかし、党員票と議員票を合わせた第1回目の投票では、どの候補も過半数を制することはできなかった。

石破氏は全国各地で150回を超える遊説を重ね、また、TVの討論番組での分かりやすい論説から、地方の党員の人気は高まっている。しかし、派閥に属さない、と言うより派閥解消を唱えているため当然ながら議員票は少ない。
ただ、民意の反映とも言える党員の意向は、各議員も無視できない。2001年総裁選で党員票の圧倒的多数を獲得した小泉氏に議員票がなだれ込んだように、石破氏が党員の6割以上を押さえれば、決選投票で議員の多くが石破氏支持に回るとも言われていた。

石破氏が今回獲得した党員票165票は、決選投票に臨む議員心理にどう影響を与えるか否か? 結果的には微妙な得票数だったと思えた。
思わず私は隣にいた同僚に「この得票だと、ひょっとすると石破が勝つかも知れないね?」と言った。「党員票のこの結果を2回目の議員のみの投票で覆したら、又、永田町の論理と言われるな」とも。彼は黙って頷いていたが…。

決選投票の結果は「安倍晋三君108票、石破茂君89票」。地方の党員と永田町の国会議員の選択はねじれることとなった。
ルールに則り行った選挙なのだから、秋田県連のように結果に抗議するのはいかがなものかと思うが、圧倒的な地方の票数差が2回目の投票で無視されることには確かに違和感を覚える。次回の総裁選挙までに、何らかの形で制度改正を行うべきだと思う。
「永田町の論理でなく国民政党として地方の意見を大切にする…。」3年前に政権を失った時、その原因を総括し反省をした筈なのに。まだまだ教訓が生かされてるとは言えない…。

ともかく、来るべき総選挙に向けて自民党の新体制が整った。安倍新総裁は、野党党首としてのスタートになるが、野党の地位にある今だからこそ、やっておかなければならないことがある。

それは「責任野党」像の確立だ。東日本大震災直後の復興支援策の提案や、我が党が主導した社会保障と税の一体改革に係る三党合意などは、その一つの姿である。しかし、ともすればこの3年間、理不尽な審議拒否、不信任や問責を繰り返す、古い野党的な対決手法も見られてきた。

我が党が野にあっても為すべきことは、常に国民のために政策を議論することである。
そのために、まずは三党合意をしっかりと実現するとともに、一票の格差の是正、特例公債法案などは一刻も早く採決し、そして、山積する課題に対処する政策をどんどん提案していくことだ。「反対のための反対を繰り返し、国会の責務を放棄するのが野党ではない」ということを、次期野党である民主党に示すためにも「責任政党」を目指すべきだ。

この3年間、何故自民党の支持率が上がらなかったのか? もう一度3年前に戻って、自民党をゼロから改革していく必要がある。
「自民党が変わらなければ、日本の未来はない!」と街頭で訴えていた石破幹事長には、
その先頭に立って頑張ってほしいものだ。