年の瀬に思う

平成24年の辰年もあと一日。恒例の今年の世相を表す漢字はオリンピックの年らしく「金」が選ばれた。

7月末のサッカーから始まり17日間にわたり、日本中を睡眠不足に陥れたロンドンオリンピック。日本は金7・銀14・銅17の計38個という過去最高のメダルを獲得した。日の丸の誉れを背負って大活躍し、私たちに勇気と感動を届けてくれた日本選手陣に改めて拍手を贈りたい。それとともに、選手たちを育成し、裏方で支えたスタッフの努力も忘れてはならない。今回のメダルラッシュは、選手たちの頑張りとともに、科学的な選手強化を進めてきたスポーツ振興政策の成果でもある。

ナショナリズムの高揚を煽るわけではないが、日の丸を脅かす事件も数多く起こってしまった。7月にロシアのメドべージェフ首相が北方領土を訪問し、8月には韓国の李明博大統領が竹島に上陸、同じく8月に尖閣諸島に香港活動家が上陸した。それぞれ許せない行為ではあるが、日本政府の外交力の弱化と事件に対する稚拙な対応が、いたずらに感情的対立を深め、さらには経済関係の悪化をも招いてしまった感がある。特に尖閣諸島の国有化については、もう少し大人の対応が必要だったのではないだろうか。いずれにしても歴史をすることはリセットできない。日本人も領土に関する認識を新たにしつつ、隣国との関係改善も図らなくてはならない。

秋になると山中教授のノーベル賞受賞に沸き上がった。受賞対象となったiPS細胞は、細胞を受精卵のような状態にリセット(初期化)する技術。自らの細胞から臓器や神経を創り直す再生医療への道を拓く基礎技術だ。これが確立すれば、あらゆる治療が可能になる。新年には神戸の理化学研究所(発生・再生科学総合研究センター)で網膜の再生治療に係る臨床研究も始まる予定だ。12月の授賞式のあとで山中教授が話していた「日本は科学が国を支える柱、ぜひ多くの若者たちに科学者となって欲しい」との言葉は、そのまま私の願いでもある。ノーベル賞級の科学者を次々と輩出できるようになれば、科学技術創造立国という私の永年の夢も叶う。

この一年は、世界の有力国で次代の指導者が定まった年でもある。特にアジア太平洋では、中国、北朝鮮、韓国、アメリカ、ロシアで大統領選挙や政権交代が行われた。閉塞感が高まる日本の外交を建て直すためにもリーダーの交代を好機としたいものである。

そして日本でも年末の総選挙を経て政権が再交代し、自民党と公明党からなる第二次安倍内閣が誕生した。私にとっても自民党にとっても、臥薪嘗胆の年月がようやく終わり、本領を発揮する舞台が与えられた。

年が明けると自民党では各行政分野ごとの部会での政策議論が始まり、税制調査会の活動も本格化する。景気浮揚のためにも、東北の本格復興のためにも、未来への成長戦略のためにも、とにかく大急ぎで平成24年度補正予算、引き続いて25年度予算案を取りまとめなくてはならない。

私事ながら、特別国会で衆院科学技術・イノベーション推進別委員会委員長を拝命した。政治への信頼を取り戻すためにも、3年余りの充電を生かしてフル活動に向け決意を新たにしている年の瀬である。

消極的選択

今回の総選挙の結果、自民党単独で衆議院過半数の294議席、自公では2/3を上回る議席数を獲得することとなった。

 一見すると大勝利のようだが、私自身は自民党が有権者から広く支持されたというよりも、民主党政権の失政に対する厳しい審判の裏返し、さらには第三極の多党化により票が分散した結果の漁夫の利を得たに過ぎないと分析している。また投票率の低調さも国民の政治への不信、“声なき意思表示”と捉えなければならない。

 この与えられた1期でどのように活動するか。私にとっても自民党にとっても正に正念場である。

 

 自民党にあっては、前回の政権担当時には、与野党対決法案が参議院で否決されても、衆院の2/3再議決制度を駆使して押し切ったが、今回はよほどの場合を除いてそのような強行策を弄してはならない。数の力に驕ることなく、対話と協調を基調に政策ごとに丁寧に対応し、安定した政権運営の下、国家国民にとって実りある政治を実現していかねばならない。また、地方を支える党員の意思が正確に伝わらない総裁選規定や、派閥などが関与しない適材適所の人事システムへの改革も断行する。つまり、“永田町政党”ではなく、真の国民政党、進歩する保守政党に脱皮していかなければならない。

私自身がまずやらねばならないことは、国家に何が必要であり、責任を持ってやり抜ぬかねばならないのは何なのかを政治家として国民に正しいメッセージを伝え、「政治への信頼を回復する」ことである。そして、日本を世界一の科学技術力を持った国家に再生し繁栄させ、そして日本人としての自覚と道徳を持った人材を育てていきたい。これらは必ず実現させる。なぜなら、政治家として私のライフワークであるからだ。そして、これらを実現させることによって、国家、国民、子供たちの「未来への責任」を果たしたい! ふるさとであり活動の基盤である“東播磨”の経済発展と暮らしやすい社会環境の構築に全力を傾注するのは言うまでもない。

 

政府与党の一員としての重い責任を改めて噛みしめ、新たな一歩を踏み出したい。

舌戦?

衆議院解散から半月、日替わりで離合集散を繰り返す第三極の動きもあり、総選挙への注目は日々高まっている。天下分け目の衆院選。公示日が近づくにつれ、自ずと舌戦も激しさを増してきた。

ただ、私は今回の舌戦の中身にいささか違和感を覚えている。各党党首、各陣営とも、相手を攻撃することで自らを正当化する場面が目につきすぎるからだ。
先のアメリカ大統領選でもあきれるほどのネガティブキャンペーンが繰り広げられたが、いくら民主主義の先輩と言っても、こんな様をまねることはない。

有権者が一票を投じる先を選択するのが選挙である以上、政党や候補者が他者との差別化、区別化を図ることは必要だろう。
しかし、それは自らが目指す国家像、その実現に向けた具体的な政策論で示すべきだ。
政策と言っても空虚なスローガンや理念のみでは困る。実現への具体的な道筋、財源や工程を示すことも、求められる。

国民は、これからの日本の舵取り役に、どの政党が、どの候補者が適しているかを選ぶのだ。候補者は相手を批判するよりも、自ら信じる政策を訴え、その具体的な実現方策を示さなくてはならない。

4日から本番を迎える選挙戦。この国の歩むべき道筋を、子どもたちの未来を、建設的な政策を提案しあう選挙にしたいものだ。

私の政策、国政への想いは、3年間にわたりこのコラムで語り続けてきた。HPでバックナンバーもご覧いただきたい。

*公職選挙法の関係で公示後のHPの更新はできないので、このコラムはしばらくお休みです。