都議選が終わって

23日に投開票が行われた東京都議会議員選挙は、事前の予想どおり国政与党の自公の圧勝に終わった。両党とも候補者全員が当選し、過半数の64議席を大きく上回る82議席(自民59、公明23)を獲得する結果となった。候補者全員が当選するのは都政史上初めてのことで、前代未聞の勝利と言えるだろう。

都議選の結果は、直後の国政選挙の先行指標になると言われる。12年前の平成13年(2001)の6月には、4月に誕生した小泉政権のブームにあやかった自民党が、改選48議席から5議席伸ばして53議席を獲得した。その余勢を駆る形で臨んだ7月の参院選でも、改選121議席に対して自民単独で64議席を獲得するという大勝利を果たした。

逆に、前回平成21年(2009)7月の都議選では、(当時は日の出の勢いであった)鳩山代表率いる民主党が改選前プラス20増の54議席を獲得、初めて都議会第1党に躍り出る大躍進を遂げた。我が自民党は改選議席を大きく下回る38議席に留まり、大敗北を喫する。2カ月後の8月に行われた総選挙でも民主党の勢いは衰えず、自民党は結党以来の大惨敗を蒙り、政権を譲ることとなった。

今回の首都決戦で、昨年の衆院選に続き、都市型政党の典型といわれる民主党を打ち負かしたことは、我が自民党にとっては来月の参院選に向けた明るい材料と言える。
が、政治の一寸先は闇といわれている。決して気を緩めることなく、緊張感をもって参院選に臨まなくてはならない。

ただ気がかりなのは投票率の下落傾向だ。ネット選挙時代のスタートを飾るように思えた今回の都議選だったが、投票率は43.5%にとどまった。歴代ワースト2だそうだ。この著しい投票率の低下は、有権者の政治不信のメッセージと受け止める必要がある。

決められない政治の根源である衆参のねじれ状態を解消し、政治の安定を実現するには、来るべき参院選で与党である自民・公明両党が勝利しなければならない。しかし、その勝利が国民の信任を得るに足らない低投票率がもたらすものであれば、勝利の意味も半減する。

明治23年(1890年)の第一回衆議院議員選挙の投票率は93%。初の普通選挙であった昭和21年(1946年)の総選挙でも73%である。
国民が政治に参画する意欲を持ってこそ、このような高投票率が実現する。自分の一票で政治が変わるという期待がもててこそ、その票を託す政治家を選ぶ気概が生まれる。

アベノミクス効果で経済には明るい兆しが出てきた。とは言っても、本格的な成長戦略の実行はこれからだ。さらに日本の未来を拓くには、人口減少に負けない社会保障制度の再構築が必要であり、行財政構造の改革も不可欠である。

来月早々に始まる参院選では、先に決定した「骨太の方針」に基づき、未来への進路を示す「選挙公約2013」をしっかりと打ち出し、国民の選択を迫らなくてはならない。そして、ネット選挙の利点をフルに活用し、政策を訴えなくてはならない。一人でも多くの方々に、我々の政策に賛同いただいてこそ、強い政治が実現できるから。

第三の矢

アベノミクス第三の矢である「成長戦略」は、与党内調整も終わり14日の閣議決定を待つばかりの状況だ。「骨太方針2013」と成長戦略の一丁目一番地といわれる「規制改革に関する答申」についても、同日に決定する。

安倍首相は4月19日に日本記者クラブで会見し、成長戦略の第一弾として「女性の活躍」を中核に位置づけた。日本では働く女性の約6割が第1子出産を機に離職する傾向がある。働き盛りを目の前に戦線離脱しているのだ。この流れを変えるため、2年間で20万人、5年間で40万人の保育環境を整え、20歳代後半から30歳代の女性就業率を改善する。こうして女性の能力をフル活用すれば、自ずと国内総生産(GDP)も押し上げることができると訴えた。

先月17日には第二弾として、今後10年間で「農業・農村の所得倍増目標」を新たに掲げ、農地の集約や大規模化、農産物の輸出を推進する方針などを表明した。TPP交渉入りを控え、守勢に回りがちな農業だが、品質で競えば世界の産地にも太刀打ちできるはずだ。

5日に公表した第三弾は、電力小売りの完全自由化やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)によるインフラ整備、医療分野の規制改革などを進め、民間投資を喚起する成長戦略を提起した。これら出揃った成長戦略の完遂により、10年後に1人当たりの国民総所得を150万円以上増加させようとしている。

しかしながら、この三本目の矢に対するメディアの反応は必ずしも良いとは言えない。
「世界と比べ高すぎる実効法人税率(40%→世界標準は20%台)や雇用流動性を妨げている過剰な労働者保護制度が放置され、企業活動の活性化につながる踏み込んだ改革がない」、「多くの数値目標が掲げられたものの、その達成に向けた具体的な政策が示されていない」といった指摘がなされている。

確かに今回の戦略には、4月に日銀が示した“黒田ショック”(大胆な金融緩和)のような劇的な内容には欠けるかもしれない。だが、今後日本経済が目指すべき方向性はしっかり示されており、この点については誰も異論を唱えていない。
具体性に欠けるのは、これから予算編成や税制改正を通じて施策の立案を進めるのだから、当然のこととも言える。今後、夏から秋にかけて、示された工程表に従い、しっかりと施策の肉付けをし、計画を実行に移すべきだ。

安倍首相も9日のNHK番組で「秋には思い切った投資減税を決めたい」とも明言した。また菅官房長官は、「企業が国際競争を勝ち抜くためにも環境を整備するのが政府の役割」とし、法人税率引き下げを示唆している。経済戦略の目的は言うまでもなく「日本経済再生」であり、そのためには日本を世界で一番企業が活動しやすい国にしなくてはならない。その目標に向けて、考え得る手だてを総動員し、スピード感を持って政策を打ち出し、実現していくことである。

去る8日、私が主宰する新世紀政経フォーラムを姫路で開催した。講師は安倍内閣の経済政策を担う甘利 明・経済再生担当大臣だ。大臣は講演のなかで「この秋に、国家戦略特区を選定する。全国で三つか四つ、せいぜい五つの地域を選定する。大阪から神戸の阪神地区は有望な地域だ。そこでは思い切った投資の減税や規制緩和を徹底的にやっていく」と宣言した。

長期にわたるデフレと景気低迷、いわゆる“停滞の20年”から日本経済を復活させるには、我が国の総力を発揮しなくてはならない。その主役は、民間企業であり、地方の活力である。中央政府の政策を待つのみではなく、企業や自治体がアイデアを競い、必要な具体的政策や規制緩和を政府に提案する。政府はそれにしっかりと応え、政策判断を下さなくてはならない。

思い切った政策を決断するためにも、安定した政権が必要だ。その為には7月21日に予定されている参議院選挙には、必ず勝利しなければならない。