祭りの前夜

播磨路に祭りの季節がやってきた。高砂から姫路にかけての播磨灘沿岸、いわゆる浜手の神社の秋祭りは、10日の高砂神社を皮切りに荒井神社(12,13日)、曽根天満宮(13,14日)、そして14,15日は大塩天満宮と飾磨松原八幡宮と西へ移動し、締めくくりの21,22日の魚吹八幡神社(網干)まで続いて行く。

ただ、この10日あまりの期間、ずっと晴天が続くのはまれで、毎年、どこかの祭りが雨にたたられる。今年は我が町の曽根天満宮がその順番になってしまった。しかも、ISS(国際宇宙ステーション)から「こんな台風見たこと無い」と言うコメントがつぶやかれた巨大台風19号の襲来である。しかし、少々の嵐くらいでは、氏子連中たちの盛り上がりを止めることはできない。今年も錦に飾られた屋台から熱気あふれる太鼓が響き、竹割りの歌声が街中を満たす筈なのだが、相手が最大級の台風では…。

盛り上がりと言えば7日夕刻、素晴らしい知らせがストックホルムから届いた。「赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏の3教授がノーベル物理学賞を授与される」とのニュースである。私はそのとき、先の通常国会で成立した「地方教育行政に関する法」の慰労会に臨席していた。延び延びになっていた党・教育委員会改革小委員会の打ち上げ会は、当然ながら教育行政、科学技術行政の応援議員団総会のようなもの。乾杯直前にもたらされた朗報に、会場は歓喜に満ちあふれた。

邦人の受賞はiPS細胞を開発した山中伸弥教授以来、2年ぶりの快挙である。平成13年に制定された“第2期科学技術基本計画”では、「21世紀前半までに自然科学分野でノーベル賞受賞者を30人程度輩出する」目標が掲げられている。同年に化学賞を受賞された野依良治先生から数えて、この度の3氏まで、13年間で受賞者は13名にのぼる。目標の上方修正が必要となりそうなペースである。

今回受賞が決まった「青色発光LEDの発明」は、基礎研究と産業応用の連結融合によりもたらされた。数十年単位で積み重ねられた赤崎氏と天野氏の基礎研究(=明るい青色を放つ材料の構造研究)の成果を、製造現場にいた中村氏が発展させ、安定して光を出す青色LEDの量産化を果たしたものだ。日本人が得意な愚直なまでの“モノづくり”精神が高く評価され受賞に至ったものと言える。

日本の企業経営者の皆さんには、この受賞を契機に、生活の質を高め、世界の進歩に貢献する新たな産業技術の開発に、さらに尽力してもらいたい。産学双方の若手研究者の皆さんには、先人の誉れある成果に習い、こだわりをもって誰も手をつけない独創的な研究に取り組んでもらいたい。

大学や中小企業で眠っている基礎研究の成果を掘り起こし、産業化、実用化に繋ぐのも政策の務めである。科学技術政策をライフワークとする私としては、新年度予算編成に向けて実用研究分野の拡充にも力を注いでいきたい。

宇宙から気象観測ができるようになってから、まだ半世紀足らず。いつの日か、台風を消滅させたり、コースを変えたりできる科学が実現するかもしれない・・・と、ふとそんな思いが脳裏をよぎる今年の祭り前夜である。