国会改革

安保法案の審議のために95日という長期の延長となった今年の通常国会、9月27日の閉幕から早や一カ月が経過しようとしている。

10月7日には第3次安倍改造内閣も発足、副大臣や政務官、恒例の政策調査会をはじめとする自民党内の一連の人事もほぼ一段落した。永田町もいささか閑散とした感がある今日この頃だが、水面下では臨時国会の開催を巡って与野党の駆け引きが繰り広げられている。

 

民主、維新、共産、社民、生活の野党5党などは21日、憲法53条に基づく臨時国会の召集要求書を提出した。要求書ではTPP(環太平洋経済連携協定)について大筋合意に至った経緯の説明や、内閣改造で新たに起用された閣僚の所信表明と質疑などが必要と主張されている。

 

これに対して政府は、安倍首相の外交日程が立て込んでいることなどを理由に年内召集を見送る方針だ。TPP等の報告・審議については、予算委員会の休会中審査を開催することを検討していると言われているが、私はこれらの方針には賛同できない。

野党の臨時国会開催を求める趣旨は極めて妥当なものであり、その要求を拒否することは政治的に正しい選択と言えるのか否か、慎重に検討する必要がある。

 

憲法53条は「いずれかの議員の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と規定しており、召集期限は定めていない。つまり、年内の臨時国会を見送り、来年の通常国会の召集時期を早めるという対処を行っても憲法違反とはならない。だが、国民には極めて分かりにくい処置ではないだろうか。

 

安保法制についての違憲論争の余韻も消えていない現在、「自民党は憲法を軽んじている」と悪宣伝に利用されるおそれがあるし、「政府は政策議論を逃がれている」と言われても仕方がないだろう。

無投票再選により党内基盤を固め長期政権も視野に入っている安倍総理には、野党の開催要求に応じて、堂々と論戦を挑んで欲しい。

 

ただ、野党も国会審議に対する態度を改めるべきだ。

これまでの様に首相に過度の国会出席を求めていては、国政が停滞しかねない。民主党の高木国対委員長も「首相の外交日程は配慮する」と言っているのだから、これを実践してもらいたい。各委員会での審議についても、副大臣対応を広く認めるなど効率的な運営手法の導入を進めるべきだろう。

 

短期間とはいえ、政権を担当した民主党議員の皆さんは、過度に閣僚を拘束し、政府の日程を縛る国会運営の現状を体感し、改革の必要性を理解されている筈だ。万年野党をめざされるのであればともかく、責任野党を名乗るのであれば共に改革を進めて欲しい。

 

まずは、この晩秋の臨時国会対応。

野党から改めて、政策議論重視の効率的な審議運営への協力を提案し、その上で政府与党は臨時国会の召集を受け入れる。召集したからには、閣僚のスキャンダル探しといった政局論争に時間を浪費することなく、国民生活に係る政策実現に必要な議論を堂々と行う。これこそ国民が求める国会の姿だろう。

 

政治の信頼回復のためにもこの臨時国会を国会改革のスタートとすべきだ。

日本の誇り

ラグビーのワールドカップで“桜ジャージ”が南アフリカとサモアに快勝!

スコットランドには敗れたものの、今までラグビー弱小国と評価されていた日本が、世界ランキング3位で優勝候補の南アに歴史的大金星を挙げ、フィジカルで圧倒的な差があるサモアにも圧勝したことで、俄かラグビーファン(私もその一人だが)が国民の間で一気に広がった。

 

4年後、2019年のワールドカップは日本で開催される。この大会を大成功に導くには、地元日本のラグビーが強くなり、国民の人気が高まることが第一。惜しくも決勝トーナメント進出は逃したものの、明日(12日)のアメリカ戦でも選手たちが大活躍し、勝利を得ることが、強さの証となりファンの拡大と定着につながるだろう。

 

そんなイングランド発のラグビーニュースで盛り上がる日本に、ストックホルムからも朗報が連続した。二人の日本人科学者のノーベル賞受賞である。自然科学分野の医学・生理学賞に大村智氏、物理学賞に梶田隆章氏が栄誉に輝いた。

 

大村氏は、細菌の発見とそれによる感染症治療の医薬品を開発し、河川盲目症と呼ばれる風土病から症状の悪化や感染を防ぎ、多くの人々を失明の危機から救ったことが評価された。

梶田氏の授賞理由は、物質を構成する最小単位である素粒子の一つ、ニュートリノに重さがあることを発見、物理学の常識を覆したことだ。

 

昨年に続く今回の受賞ラッシュは、大いに国民を勇気づけてくれた。街頭インタビューで最も多かったのは「日本人として誇りに思う」との言葉。今世紀に入ってから自然科学部門の受賞は16人となり、アメリカに次ぐ第二位だ。我が国の基礎研究力の層の厚さを実証している。科学技術政策の推進をライフワークと考えている私にとっても、これほど嬉しい知らせはない。

 

科学技術政策の基本方針は、1995年制定の科学技術基本法に基づく科学技術基本計画で定めている。私自身も毎回この計画の策定に深くかかわっている(現在第5期計画策定中)が、2001年に定めた第2期計画では「ノーベル賞に代表される国際的科学賞受賞者を欧州主要国並みに排出すること。50年間でノーベル賞受賞者を30人程度輩出」という数値目標を掲げた。当時は「大胆で意欲的な目標」と言われたが、今やクリアして当然の通過点のような気がしてきた。

 

ただ少し心配なことは、“子どもの理系離れ”や最先端科学分野への“留学生の減少”である。基礎研究は成果の発揮までに非常に長い時間が必要となる。教育は国家100年の計といわれるが、計画的な人材育成無くして科学の発展はあり得ない。一連のノーベル賞受賞が若者たちの探求心に火をつけ、我が国の科学技術振興に追い風となれば幸いである。

 

偉業を成し遂げたにもかかわらず謙虚な姿勢で記者会見に臨んでおられる受賞者の二人の姿は、私たちに日本人としての誇りを感じさせてくれた。桜ジャージをまとい一団となって戦い、君が代を歌う日本代表の選手達の姿も然り、日本への“誇り”こそが、ふるさとの明日を拓くのかもしれない。