震災補正

先週17日夕、熊本地震の復旧・復興に対応する総額7,780億円の平成28年度補正予算が成立した。衆参とも全会一致で可決している。
過去の震災直後の復旧補正予算は成立までに、阪神淡路大震災で42日、東日本大震災では52日要しているが、今回は33日目の “スピード成立”だ。

予算は、当面の被災者支援に要する費用として「災害救助等関係経費」を780億円計上。その内訳は15,000戸分の仮設住宅費573億円、自宅が全壊した方々に最大300万円を支給する生活再建支援金に201億円、災害弔慰金などに6億円である。
残りの7000億円は「熊本地震復旧等予備費」。使い道を限定せず、被災者の方々の事業再建、特に中小企業や農林漁業者、観光業などの産業基盤の復興を後押しするとともに、道路・施設などのインフラ(社会基盤)復旧やがれき処理等を迅速かつ十二分に進めていくための経費に充てる。

野党は「7,000億円の中身が決まってない」と批判していたが、被災地の早期復旧のため、被災者の方々の不安を緩和するためには行政の迅速な対処が第一だ。まして、今回の地震は、余震が続き被害が確定しない。将来の産業基盤の復興まで配慮して機動的に対応する今回の補正予算は、むしろ適切である。

発災直後の支援物資の輸送などに一部混乱もなかったとは言えないが、今回の初動対応は総じて素早かったと思う。5月の連休には全国からボランティアも被災地に入り、がれき処理などに尽力した。なかんずく、自衛隊の出動、ならびに米軍との協同による救助活動は日米の力強い同盟関係を観た気がした。

さて、発生から1ヶ月が経過し、被災地は救助から復旧の段階に入ってきた。何よりも優先すべきは“生活再建”だ。まずは住まいの確保。車で寝泊りする方々のエコノミークラス症候群も発生している中、仮設住宅の整備が急がれる。

ただ、仮設住宅入居や生活再建支援金の給付を含め、速やかな公的支援を受けるにためには“罹災証明書”が必要であるが、その発行作業が遅れている。5つの自治体で役場が被災し庁舎機能を失っていることに加え、家屋被害の調査認定を担当する調査員が不足しているからだ。

すでに、全国の自治体から応援員が現地に駆け付け、判定作業を急いでいるが、今後の大震災、大水害への対応として、事前の応援体制の強化が望まれる。民間建築業界の協力も含め、調査員の登録、研修の充実や派遣協定の構築も必要ではないだろうか。
この31日に私が幹事長を務める自民党建築設計議員連盟の総会が開かれるが、緊急議案として提案しようかと考えている。

これから被災地は、梅雨の季節を迎える。九州は元々多雨地域である。地震で緩んだ地盤が土砂災害を招くことも懸念されるなか、補正で措置した予算を有効に活用し、復旧作業を急がなくてはならない。
安倍総理は衆院本会議で、今後被害状況が拡大していけば更なる財政支援を検討する意向も表明した。

東日本大震災、熊本地震とも、被災地の創造的復興を実現し、そしてその教訓を後世に活かし、我が国の安全・安心、公共の利便性をスムーズに確保するためには、中長期の観点から息の長い支援が必要である。

地域おこし

今年のゴールデンウィークは、「2日(月)と6日(金)の両日に休みをとれば、10連休の超大型連休となる」という方が多かったのではないか。どちらか一方でも休めれば、7連休や6連休だ。JTBによると今年のGWは「海外旅行人数は昨年より2.8%増の54.6万人。国内旅行人数と海外を含めた総旅行人数はともに過去最高で、2,395.6万人」ということらしい。

巷間、景気の動向に関して、あるいはアベノミクスの成否について様々な意見が交錯しているが、この旅行動向は明るい指標を提示している。
この大型連休はふるさとへの帰省の時節でもある。懐かしい山河の初夏を味わい、ご両親、祖父母との語らいを楽しまれた方も多いだろう。

私のふるさと東播磨ではGWの時期に「国恩祭」という祭事が行われる。地域の22の神社が、毎年輪番で郷土の繁栄と安泰を祈念する春の大祭だ。今年の当番は、加古川市の平之荘神社と明石市の御厨神社。私は4日に平之荘神社のお祭りに出席させていただいた。

この国恩祭は江戸時代の天保年間(1830年代)に起こった大飢饉に由来する。飢饉による人心荒廃を憂いた加古郡と印南郡の神職が集い、「祓講」という神社組合組織を結成して臨時の大祭を行ったのが始まりといわれている。180年以上の歴史を有し地域に根差した財産ともいえる文化行事となっている。

このような地域の伝統文化を「地域おこし」に活用しようとするのが“日本遺産”(Japan Heritage)の認定制度だ。平成27年度からスタートし、この2年間で37件が認定されている。兵庫県内では、「丹波篠山 デカンショ節 -民謡に乗せて歌い継ぐふるさとの記憶」「『古事記』の冒頭を飾る「国生みの島・淡路」~古代国家を支えた海人の営み~」の2件だ。今後、平成32年までに100件程度まで増やす予定という。

文化庁も保護一辺倒の文化財行政から転換を図ろうとしている。地域に点在する歴史的魅力や特色ある有形・無形の文化財をパッケージ化し、物語性を付加して観光資源として積極的に国内外へ発信し活用しようとしているのだ。

いにしえより神社は「鎮守の森」と称され、地域を守ってくださる村のシンボルであり街づくりの中心であった。そしてそれは地域の核であり人々の心の拠りどころ、絆となってきた。
日本各地で様々な祭りが継承されているが、我がふるさとの「国恩祭」のように、「複数の神社が地域貢献のために連合して行う祭事」というのは全国的にも極めて珍しいのではないだろうか。自治体も含めた地域の合意形成が必要であるが、日本遺産の認定に一度チャレンジしてみる価値がある。

大地震に襲われた熊本県でも1件、南部地域の10市町村による「相良700年が生んだ保守と進取の文化 ~日本でもっとも豊かな隠れ里―人吉球磨~」が認定されている。

熊本では大地震発生以来3週間が経過したものの、未だに大きな余震が断続的に続いている。まだまだ収束が近いとは言えない状況だが、活動を一時停止していたご当地人気キャラクター「くまモン」が、最近活動を再開したと報道されている。是非、地域おこしの主役として被災者のみなさんに元気を届けて欲しいと切望している。

改めて、この度の地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げるとともに、不幸にもお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。