総選挙を終えて

大型台風21号が列島を駆け抜けた22日、嵐の中で行われた第48回総選挙は、多くのメディアの事前予想どおり自民党の大勝に終わった。あれから1週間、列島は再び台風22号が来襲し、その後には冬の到来を告げる木枯らしが吹き荒れている。

 

それにしてもこの一カ月は、目まぐるしく政局が変化した。

9月25日に安倍総理が衆院解散・総選挙を表明すると同時に、小池都知事が「希望の党」を設立。28日の解散直後には民進党が両院議員総会で、できたての「希望の党」への合流を全会一致で決定し、政権交代可能な二大政党成立かと思われた。が、その直後、合流を巡って小池氏の排除発言で流れは一転。合流を拒否された民進残党による「立憲民主党」が設立され「希望の党」を凌ぐ人気を博した。勝ち馬を探る野党陣営の離合集散劇の中、全く政策論議に盛り上がりがないまま行われたのが今回の総選挙であった。

 

我が自民党としては野党の混乱に乗じて有利に選挙戦を展開、結果として解散前から6議席を減らしたものの、単独で過半数を大きく上回る284議席を獲得した。連立を組む公明党29議席を合わせると、獲得議席数は313。公示前より減らしたものの、議員定数が10減しているため、与党で2/3を上回る勢力を確保した。

野党第一党となったのは立憲民主党で、55議席を獲得。一方、政権の受け皿となるべく過半数を超える235人を擁立した希望の党は、公示前の57議席にも届かない50議席にとどまった。

 

この結果をどの様に分析するべきか?

自民党の大勝は強く支持されたのではなく、野党の混乱による「漁夫の利」を得た形だ。加えて、得票率と獲得議席数が乖離する小選挙区制度の特性が出た結果でもある。事実、小選挙区で自民党は48%の得票で75%の議席を獲得している。

因みに比例区での得票率は、自民33%で66議席。立憲民主党は20%で37議席、希望の党は17%で32議席となっている。

 

今回に限った話ではないが、絶対多数の議席数=国民の絶対的な支持ではない。むしろ多数の議席を得た今こそ、数におごらず国民の声に耳を傾ける、より慎重な政権運営が求められる。総理をはじめ、閣僚からも「謙虚に」とか「真摯」とかの発言が出ているが、今後も“安倍一強”などと揶揄されることがないよう、与党全体として、責任をもって政権運営を担わなくてはならない。

 

政策に目を移すと、選挙で私が最も力点を置き、訴えたのは「教育の無償化」だ。このコラムでも何度か言及してきたが、幼児教育と高等教育の無償化の手法について選挙中も政府で検討が進んでいる。年末までには“全世代型社会保障”への第一歩として政策方針をまとめなくてはならない。

 

財政の悪化を危惧する財政審議会からは、「高等教育の無償化について対象範囲を絞り込むべき」との意見が出ているが、私は、未来を切り拓く子供たちへの投資は財政再建以上に重要と考えている。

 

もちろん、無償化が大学の経営支援策となることは許されないし、すべての国民が大学へ進学する必要もない。進学を望む者には誰にも門戸を開くべきということだ。その受け皿として、優れた教育を提供できる大学のみが生き残るシステムも必要だろう。早急に説得力ある制度設計を提案しなければならない。

 

選挙が終わって少しはゆっくりしたいと思わない訳ではないが、取りまとめまでに残された時間に余裕はない。有権者の皆さんへの約束を守るためにも、戦闘モードからスイッチ切り替えて公約実現に向けてフル稼働しなければならない。

 

 

 

第48回総選挙にあたり、皆様方の熱い支持のお陰で議席を守り抜くことができました。
厚く御礼申し上げます。
選挙戦で訴えてきた公約の実現にむけ、引き続き邁進してまいります。

解散を受けて

安倍総理は28日召集の臨時国会冒頭で、衆院を解散した。

総選挙は10月10日の公示で、22日に投開票される。

 

総理が国民に「信を問う」主要な項目は、①2019年10月に消費税率10%にした際、国の借金返済分に予定されていた4兆円規模の財源の一部を、子育て支援や教育無償化など「全世代型」社会保障制度に使う使途の変更と、②挑発を強める北朝鮮の安保上の危機対応、「圧力強化路線」について、国民に投げかける2点である。

 

前回のコラムでも言及したが、この時期の解散には多くの疑問が出されており、私もいささか疑問を覚える。

が、解散は総理の専権事項。「国の重要政策を強力に進めるうえで、国民の信任を得たい」と総理が解散を決断した以上、受け入れるしかない。

 

首相が解散を表明した25日には、若狭 勝、細野豪志の両代議士が立ち上げようとしていた新党をめぐって、去就が注目されていた小池東京都知事が、これまでの動きを「リセット」して“希望の党”を立ち上げると発表、自らが代表に就任すると宣言した。

都知事選、都議選に続いて、またまた「小池劇場」の幕が上がったといえる。

 

また、野党第一党の民進党は春先から離党者が出ていたが、代表選が終了してからは離党ドミノが加速し離党者が相次いだ。

このままでは総選挙を戦えないと判断したのか、前原誠司代表は27日、衆院選の党公認候補約200人について公認を取り消し、希望の党に立候補者の公認を申請することを提案した。提案は28日午後の両院議員総会で了承され、野党第一党・民進党は事実上、希望の党に合流することになった。選挙戦の構図は一気に激変した。

 

このほか、日本維新の会は都内での候補者擁立を見送る見返りに、大阪府内での維新の意向を尊重するよう、希望の党との調整に入る見込みと言われている。また、野党4党合意を放棄された共産党の志位和夫委員長は、「希望の党との連携や共闘はしない」と言明し、民進党との協力関係を見直す方針を示した。

 

総選挙を前にしたこれらの一連の野党の離合集散が、国民の目にどの様に受け止められるかは今後経過を見守る必要があるが、いずれにしても、われわれ与党にとって厳しい戦いになることは間違いないだろう。

 

総理が今回の総選挙での最重要政策とした、幼児教育の無償化や高等教育の機会均等・負担軽減は、この2年間、私が最も力を注いできたテーマである。何としてもこの仕事をやり遂げたい。

そのためにも、来るべき戦いに勝ち抜いて、これまでの議論を具体的な政策として実現したいと強く願っている。

「勝利を目指して全力で戦い抜いていく!」。その決意を今新たにしている。