国政停滞

今年の冬は強烈な寒波が何度も押し寄せ、山陰・北陸・北海道地方は観測史上最高となる豪雪に襲われ、各地から豪雪被害が届いた。

そんな日本列島にも先週半ばからの気温の上昇により、15日(木)には高知から桜開花の一報が入った。全国から「桜開花」の知らせが届く日も近いだろう。あと数週間で、一年の内でも最も晴れやかな季節となる筈だ。

その一方で、このところの永田町や霞ヶ関周辺には暗雲が立ち込めている。

 

発端は3月2日の朝日新聞朝刊。“森友文書、財務省が書き換えか「特例」など文字消える”の見出しが躍った。森友学園との国有地取引をめぐり、財務省近畿財務局の契約時の決裁文書と、その後に国会に開示された文書内容が違っているとのスクープだった。

以後、参議院の予算委員会はこの問題一色となり、新聞や週刊誌、ワイドショーの主役として、連日連夜報道された。

 

これらの動きを受けて、野党6党は佐川元理財局長や安倍昭恵総理夫人の証人喚問を求めて、6日以降、完全に審議拒否状態に入った。

そして、9日の佐川国税庁長官辞任と12日の書き換え文書の国会報告により、スクープの通り、国会での佐川氏の答弁とは異なる内容の存在が明らかになった。

 

自民党の二階幹事長と立憲民主党の福山幹事長の話し合いで、19日から参議院予算委員会で集中審議を行うことが決定したが、その行く手は藪の中である。

 

虚偽の答弁を行ったということは、国会を、ひいては国民を冒涜するもので、言語道断である。また、公文書の書き換えなどという、常識はずれの行いに及んだ財務省の責任は非常に重い。

答弁を正当化するために公文書の書き換えが行われたのか? それとも、偽りの答弁を行うために書き換えが行われたのか? なぜ、偽りの答弁を行う必要があったのか? 裏に誰かの指示があったのか? 単なる役所の忖度なのか?

 

謎は深まるばかりだが、役所の中の役所である財務省の官僚が、自らこのような暴挙に至ることは、私には想像しにくい。今は真相究明が最優先課題であるが、その責任が政権与党にも及ぶことは避けられないだろう。第2次安倍内閣発足以来、最大の危機であることは間違いない。

 

日本の政界が森友問題で時間を費やしている間に、朝鮮半島では南北対話が予定され、米朝対話も実現にむけて動き出した。欧州では英露の緊張も高まっている。

トランプ大統領が“国家安全保障上の脅威になる”として、米通商拡大方232条に基づき鉄鋼とアルミニウムに関税を課す輸入制限を36年ぶりに署名、自由貿易体制に揺るぎも生じている。

 

いつまでも国会の機能を停止させていては、日本は世界から取り残される。

内政においても生産性革命や人づくり革命など、国会で議論し、解決しなければならない課題は山積している。

国会が本来の機能を取り戻すために、国家の未来、国民の生活に関する議論を展開するために、一日も早く真相を解明し、政治不信を払拭しなければならない。

祭りとそのあと

2月25日(日)に閉幕した平昌オリンピック。

前半戦は有力選手の活躍も、金メダルには及ばなかったが、折り返しとなった男子フィギアの羽生結弦選手と小野昌麿選手によるワンツーフィニッシュから、後半戦はメダルラッシュとなり大いに盛り上がった。

 

18日には、女子スピードスケートで事前の予想どおり小平奈緒選手が五輪レコードで金メダル!その後も、チームパシュートとマススタートで髙木菜那選手らが金メダルを獲得した。

閉会式前日には女子カーリングが五輪史上初めての銅メダルに輝き、列島が歓喜に沸いた。

終わってみれば、日本のメダル獲得数は金4、銀5、銅4、の計13個。冬季大会では過去最高の長野大会の10個を上回り、大会目標の10個も超える結果となった。

 

右足首のけがを乗り越え、66年ぶりの五輪連覇を達成した羽生選手。

前回のソチ大会での敗北の悔しさをバネにオランダ留学を始め、この4年間に極限の努力を重ねて実力を養い、ついに金メダルを獲得した小平奈緒選手。レース後に国旗を背負いライバル選手とお互いの健闘を讃えあった姿は、世界中に感動を届けてくれた。

 

また、スーパー中学生として15歳でバンクーバー大会に出場し、ソチでは代表落ちという屈辱を味わい、それをエネルギーに変えて再び日本のエースに返り咲いた髙木美帆選手。

年300日の合宿を通じて一糸乱れぬ隊列走法で、メダリストを揃えたスピードスケート王国オランダに勝利し、金メダルに輝いたチームパシュートの選手たち。

苦しい戦況下にあっても常に笑顔で励ましあう姿で、日本中を笑顔にしてくれたカーリング娘たち。

 

オリンピック報道では、それぞれの選手たちの表彰台に辿りつくまでの数々のストーリーも放映された。自らを極限まで追いつめ努力を重ねてきた選手たちの感動のドラマに涙した人も数多かったと思う。(私もその一人だったが)

加えて、競技後のインタビューでの選手たちの言葉には、必ず支えてくれた人達への「感謝」の言葉があったことも指摘しておきたい。

 

今回のメダルラッシュは選手たちの努力のたまものであるが、国を挙げてのサポート体制の充実・強化が実を結んできたものでもある。

政府は2001年に定めた「スポーツ振興法」に基づいて、競技ごとの専用練習場や宿泊施設などを備え、集中的・継続的にトレーニングをおこなえる“ナショナルトレーニングセンター”の整備や充実を図ってきた。

 

さらに、トップレベル競技者の強化、優れた素質をもつジュニア競技者の発掘、一貫指導システムによる育成など、国際競技力の向上にむけた組織的・計画的な取り組みをスポーツ科学・医学・情報の側面から支援することを目的とする“国立スポーツ科学センター”を設立して効果的なトレーニング方法の開発も行っている。

これらの下支えが我が国のメダル獲得に大きく貢献している。

 

日本中が熱狂に包まれた今回の平昌オリンピックは、スポーツの力を改めて証明してくれた。

2年後は自国開催である東京オリンピックだ。ナショナルチームの更なる競技力向上を大いに期待したい。その為にも国民の熱が冷めないうちに、更なる支援策を講じる必要があると考える。その前に、9日(金)から始まるパラリンピックの選手たちにもエールを送らなくてはならないが。