平成のうちに

安倍総理が「働き方改革国会」と命名した第196回通常国会は、22日に閉幕した。

今国会は政府が新規に提出する法案を65本に絞り込んだにもかかわらず、成立したのは60本にとどまり、成立率は92.3%と昨年の95.5%を下回った。

 

多数の法案が厚生労働委員会と内閣委員会に集中したため、水道事業の広域化を促す水道法改正案や、規制を一次凍結して人工知能(AI)やドローンなどの次世代技術の実用化を目指す国家戦略特区改正案などの重要法案が継続審議となった。

私が昨年から議員立法での改正準備を進めてきた “研究開発力強化法”の改正も、文部科学省の局長逮捕のあおりを受けて先送りとなった。法案の内容について野党との合意はほぼ取り付けていただけに非常に残念であるが、次の国会では是非成立させたい。

 

このような法案審議停滞の一因は、旧態依然とした国会審議の手法にある。5月の連休前後には野党の審議拒否により18日間も開店休業状態が続いたし、そもそも昨年来「モリ・カケ」問題の追及に野党が多くの時間を費やし、法案や予算案についての質疑が十分に行われてこなかった。

今、こうした国会審議のあり方を巡り改革の議論が盛んに行なわれている。発端は、自民党内で小泉筆頭副幹事長ら30人の若手議員がつくる勉強会だ。政策議論を重視する国会運営を目指すことを柱として、6月27日に二階幹事長に国会改革の提言をした。

 

その第一の柱は、各委員会は法案審議を優先し、不祥事等の追及は案件ごとに特別委員会を設ける。それ以外にも、党首討論のあり方や首相や閣僚、副大臣らの国会への出席軽減や、押しボタン式投票方式の導入などが提案されている。

 

この提案に対して、総裁選に向けた若手のパフォーマンスだと不快感を示す党執行部もいたらしい。ある幹部は、「閣僚の出席日数を減らすと、野党に転落した時に政権を追及しにくくなる」と批判しているそうだが、全く見当違いだ!

若手の意図がどうあれ、今の国会の審議のあり方について多くの国民も疑問に思っていることは、各種世論調査でも明らかである。

 

今や改革議論は超党派の議員に広がり、“「平成のうちに」衆議院改革実現会議”(会長:浜田元防衛相)が活動を開始した。この会議には自公両党のほかに国民民主党や日本維新の会など、野党議員も参加している。

 

7月12日の会合では早速、①党首討論を2週間に1回、テーマを決めて夜に開催、②タブレット端末導入で資料のペーパーレス化、③妊娠、出産した女性議員が国会に出席できない場合の「代理投票」を認める制度の導入の3点に絞り込んだ改革案をまとめた。近々、古屋議院運営委員長に提出し、議運内の国会改革小委員会で議論するよう働きかけていく予定である

 

この動きに対して、野党第一党の立憲民主党は「少数会派も含めた全会派が揃ってやらないと全く意味のないパフォーマンス」との考えから会議に参加もしていないが、一方で独自案をまとめる考えも示しているのは、全くの論理矛盾と言わざるを得ない。

 

何れにしても、国会審議のあり方が今のままで良いと思っている議員は一人もいない筈だ。

だとしたら、全ての政党(また全会派)が同じテーブルにつき、党利党略でなく国民の信頼回復に資する国会審議のあり方について議論し結論を得る努力をすべきだろう。

その意味で、私は衆議院改革実現会議の今後の活動に大いに期待している。

災害列島、なすべき事は。

私たちの住む日本列島は古来より、地震、津波、台風、洪水、噴火と天変地異がいつどこで発出するかわからない、別名「災害列島」とも呼ばれる。

 

地震や噴火の原因は、マントルの対流が作り出すプレート(地殻)移動だ。日本列島は4枚のプレートの衝突部に位置する不安定な構造の上にあるが故に、定期的にプレート型地震が発生し、地殻のひずみが生んだ活断層は直下型地震を引き起こす。時にはプレート境界で生成されるマグマが火山から噴出する。

 

風水害を引き起こすのは、温帯モンスーンの気候だ。毎年夏から秋にかけて台風が襲来し、初夏や秋には前線が停滞し、長雨をもたらす。地球温暖化の影響か、近年は熱帯のようなゲリラ豪雨も多発している。

気象庁のホームページには、災害をもたらした気象事例が掲載されているが、今年新たに“平成30年7月豪雨”が一覧に加わることとなってしまった。

 

同庁は7月6日以降、「数年に一度の重大な災害が予想される」「生命に重大な危険が差し迫った異常な事態にある」として、京都・広島・岡山・兵庫・岐阜・愛媛など1府10県に「大雨特別警報」を発令。8日までの2日間の雨量が123地点で観測史上最高値を記録した。

 

洪水や土砂崩れによる被害は西日本の広い範囲に広がっているが、特に広島・岡山・愛媛県では多くの死者が確認されている。行方不明者数の捜索も続いているが、被害の全容が明らかになるには、まだ時間がかかりそうだ。いずれにしても、平成に入って最悪の豪雨災害になることは間違いない。

 

事前に豪雨が予報され、発災時の被害を予測するハザードマップも整備されていた。さらには、市町村の避難勧告や避難指示も発令されていた。にもかかわらず、結果的に大きな被害が出てしまった。

予報の迅速性や危険性の周知など、行政の対応に瑕疵があったとは思えないが、たとえマニュアル通り行なわれていたとしても、多くの犠牲者が出た事実を重く受け止めなければならない。今回に限らず、避難勧告・指示が発令されても避難されない方が数多い。また、夜間の増水など、避難することが困難なケースもある。住民への情報伝達のあり方、避難誘導の手法を再検討する必要があるだろう。

 

一方で、河川改修や治山・砂防事業の成果により、災害を免れた地域も数多い。自然災害への強靭さを増すためには、計画的な公共事業は欠かせない。

それでも突然発生する豪雨には、ハード対策では手の打ちようがない場合がある。逃げるしかないのだ。そして、日本の都市の大半は、水害に脆弱な沖積平野に形成されてきたことを忘れてはならない。

 

政府は13日、この度の西日本豪雨を被災者の権利や利益を保全する“特別非常災害”に指定する方針を固めた。過去に指定された例は、阪神淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震の4件のみで、地震以外の指定は初めてとなる。

 

「善く国を治める者は、必ずまず水を治める」と言われる。

“治水“は国家にとって最大の優先的政治課題であることを改めて考えなければならない。

 

 

今回の災害により亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災者の皆さまに対して

心からお見舞い申し上げます。

究極の選択

サッカーの競技人口は、200以上の国と地域で25000万人以上。故に4年に一度の祭典、“2018FIFAワールドカップ”は世界の人々が盛り上がる国際イベントだ。TV視聴者数は10億人とも言われている。

 

開催国ロシアはFIFAランキング70位と出場32カ国中最下位だが、熱狂的なサポーターの応援を受けてグループリーグで2連勝し、早々と決勝トーナメント進出を決めた。一方、ランキング1位で大会2連覇を狙っていたドイツをはじめ、ランキング上位国が続々と敗退する波乱含みの大会となってきている。

 

番狂わせと言えば、ランキング61位の日本代表(サムライブルー)は、初戦に16位の格上コロンビアに2対1で快勝し勝ち点3を獲得、世界からは「奇跡の勝利」と称賛された。アジア勢が強豪の南米勢に勝利したのはワールドカップ史上初のことらしい。

 

今大会のサムライブルー、羽田出国時の見送りファン数は150人程度であったという。大会直前の監督交代劇や新鮮みに欠けたと言われたメンバー選出などが、影響したかもしれない。ところがコロンビア戦の勝利で機運は一転、日本中がワールドカップ一色となった。

 

その後押しもあり、第2戦のセネガル戦では2度のリードをはね返し2対2のドローで勝ち点1を獲得した。その結果、最終のポーランド戦で引き分け以上であれば、自力でベスト16、決勝トーナメント進出が決定するということで、先週木曜日、列島の応援ボルテージは最高潮に達し、深夜にもかかわらずTVの瞬間最大視聴率は54%を記録した。

 

前半は日本が押し気味だったがチャンスに得点できず0対0で折り返した。後半に入ってもボール保持率、シュート数などほぼ互角に戦ったが、後半14分のセットプレーからポーランドに得点を許しリードされる展開となった。

 

同時刻にキックオフされたグループHのもう一つの試合(セネガルVSコロンビア)は前半終了時で0対0。2つの試合がこのまま終了すれば日本は3位となり、予選リーグ敗退となる。サムライブルーは残された時間内に得点し、最低でも引き分けに持ち込まなければならない苦しい状況に追い込まれた。

ところが後半37分過ぎ、日本は突如攻撃を止めて“パス回し”を始めた。

状況を把握できずに自分の目を疑ったのは私だけではないだろう。

その後コロンビアが後半29分に1点を先取しリードした速報が入った。このままの状況で試合が終われば、負けても日本の決勝進出が決定するとのことだが、攻撃を放棄してパス回しに終始する超消極策は、他人任せ、運任せの謗りは免れない。

 

2試合ともアディッショナルタイムも含め10分程度の時間が残っている。ポーランド戦がこのまま終了しても、もう一方の試合が現状のまま終わるとも限らない。

セネガルが得点する可能性、日本が得点する可能性、ポーランドに追加点を許すリスク、反則を犯すリスクなど、すべての状況を考えたうえで総合判断した西野監督の戦術(究極の選択)であったと思う。報道によると、日本のベンチの中でも意見は分かれていたらしい。

 

この采配をめぐっては内外で疑念が噴出した。海外メディアは批判的な意見が多かったようだ。国内でも賛否は分かれた。

西野監督は、試合後のインタビューで「不本意な選択であった」と自ら言及した。

誇り高きサムライブルーにとって、「フェアプレーではない」と酷評された戦術であったが、

セネガルとは勝ち点、得失点差、総得点が全く同じで直接対決で引分け、日本が競り勝ったのは今大会から採用されたフェアプレーポイントの差であったことは特筆しておきたい。

 

目の前のゲームの勝敗よりも、決勝トーナメント進出という大目標の達成を優先せざるを得なかったと思う。そして、その方向で決断し、結果を出したことは肯定されるべきだろう。

 

いずれにしても、サムライブルーの戦いはまだ続いている。大会の総括は全ての戦いが終わった後でよいのではないだろうか。今はベルギー戦へのエールを全力で送ろうではないか!