闘い済んで

自民党総裁選は20日の投開票で、安倍晋三総裁が3選を果たした。

今回の総裁選は、竹下派を除く派閥(細田、麻生、岸田、二階、石原)が首相支持を表明していたため、国会議員票の趨勢は選挙前から決まっていた。だから、総裁選の関心はもっぱら安倍、石破両候補がどれだけ党員票(約104万票)を獲得するかに焦点が絞られていた。

 

フタを開けてみると、安倍候補が329票の議員票と党員票224票(55.3%)で計553票(69.3%)を獲得し、石破候補はそれぞれ73票と181票(44.6%)で計254票(31.5%)の得票だった。

現職の総理に挑戦する石破氏の前評判は、議員票(50票)と党員票(150票)合計で200票以上獲れれば上出来と言われ、そのラインが政治家として今後の展望が開けるかの分岐点とも言われていた。石破氏が獲得した254票は、善戦どころか“大健闘”だ。

 

私はこの大健闘の背景には二つの要因があると思う。

一つは、一国一城の主と言われる国会議員に対して“安倍支持”の誓約書の提出を求めるなど、過剰なまでの締め付け。いま一つは、永田町の論理と(国民世論に近い)地方党員の意識とのズレだ。私も神戸、銀座、最終日の渋谷と、石破氏の街頭遊説に同行したが、国民に向けた思いを込めた石破候補の演説に、道行く人々の多くが足を止め熱心に聴き入る姿にいささか驚いた。

 

合計票の数字だけを見れば安倍候補がダブルスコアで、前回以上の大勝を飾ったようにも見えるが、中身を考えると必ずしも圧勝とは言えないだろう。安倍総裁には党員票(政治不信≒安倍不信)に表れた民意を重く受け止めていただき、選挙中に言及されていた言葉どおり「謙虚で丁寧な政権運営」を心掛けて欲しい。

 

一方、石破氏にとってはこれからの活動が重要である。

選挙後の打ち上げ会で締めの挨拶を求められたので、「石破さんをはじめとする水月会の皆さんのこれからの政治行動が大変重要である。特に、総裁選討論会で主張された政策の方向性に関する、より具体的な方策を派内で議論し、政策集団としての存在感を高めて欲しいと思う」と、改めての期待を込めて直言しておいた。

 

さらに私見だが、石破陣営は二度続けて国会議員票での大差が勝敗の決め手となったことに留意する必要がある。議員票の総数は前回より大幅に増加(198→405票)している。にもかかわらず、前回決戦投票で石破氏が獲得した議員票89票に対して、73票という結果はいただけない。各派閥の締め付けがあったとは言え、議員への支持拡大が叶わなかったことは、いわゆる「石破アレルギー」といわれる感情が一部の議員に根付いていることも要因だろう。

 

今は、まず当面の人事において問われたこと以上の余計な主張をしないこと。それよりも、自分の政策の具体性をより高め、幅広く党内の議員に呼びかけて志を同じくする仲間(必ずしも派閥の拡大ということではない)を増やす努力をしなければならない

 

大きな事変がなければ、これからの3年間は安倍政権が続くことになる。しかし、政界は「一寸先は闇」である。盟友石破氏には、いつでも次の挑戦に臨めるよう、志を新たに目標に向かって突き進んで欲しい。

 

 

 

この秋3度目の大型台風の襲来となった。

進路にお住いの方々は早めの避難を心がけていただきたい。

 

 

 

 

国民の声は?

7日から始まった自民党総裁選は、直前に発生した北海道胆振地震の被災地に配慮して安倍晋三、石破茂両陣営とも3日間運動を自粛。実質的に選挙戦がスタートしたのは、10日に党本部ホールで行われた所見発表演説会と共同記者会見からとなった。

 

安倍候補は、政権奪還後に自身が取り組んだ“アベノミクス”の成果を強調し、その継続性とともに、昨年の総選挙で掲げた政策の完遂に全力を尽くすと訴えた。また外交・安全保障政策では拉致問題解決への強い決意を表明するとともに、憲法改正については自衛隊の明記を改めて呼び掛けた。

 

一方、石破候補は“経済再生”と“社会保障改革”を成し遂げると訴えた。経済再生については、地方創生が核になり、地方の成長力を引き出すための司令塔を政府内に設置するとし、すべての人が安心して暮らせる社会保障づくりにも強い意欲を示した。また、大規模自然災害に対して平時から万全の対策を講じるための「防災省」の設置も提案した。

 

ただこの会見の直後、安倍総理は東方経済フォーラム出席のためウラジオストックに向け出発。両候補による本格的な論戦再開は、総理帰国後の14日に行われた日本記者クラブ主催の討論会と自民党青年局・女性局主催の公開討論会を待つことになった。

 

結局、総裁選恒例の地方演説会は15日以降となり、しかも京都市(近畿ブロック)、佐賀市(九州ブロック)、津市(東海ブロック)、仙台市(東北ブロック)の4カ所のみとなった。

前回の総裁選では全国17カ所、前々回は18カ所で候補者が街頭に立った。今回の4カ所のみというのは極めて少ない。当初8日に予定されていた東京での演説会も最終的に見送られ、過去に例を見ない論戦の少ない総裁選となった。

 

既にこのコラムでも言及したように、私は石破候補を支援し推薦人にも名を連ねている。石破陣営は首都圏での合同演説会が中止されたため、連休最後の祝日となった17日(月)に銀座三越前で単独の街頭演説会を執り行った。中央通りが歩行者天国となる休日の銀座で、多くの方々が石破候補の訴えに足を止め、耳を傾けていただけた。

 

自民党の総裁選は日本国の総理に直結する選挙である。総裁選を通じて多くの国民に直接訴えることは、政治への関心を高める上で大いに意味がある。国政選挙における政権公約と同じく、総裁選での主張は選挙後の政権運営に直結するものであり、各候補の訴えは我が国の将来を左右する、すなわち国民生活に大きな影響を与えるものである。

 

総裁選を揶揄して、「永田町の論理」とか「コップの中の嵐」とか言われることがある。もちろん、総裁選の投票権は党所属国会議員と党員にしかない。国会議員票は確かに「永田町の論理」で決するのかもしれない。しかし、党員票に国民の声がより反映されると言っても良いのではないだろうか。

 

私は平成26年に党・政治制度改革実行本部長として総裁公選規程を改定し、国会議員票と地方の党員票を同数にした。この改革には総裁選に国民の声がより反映されるようにという、願いが込められている。

だからこそ総裁選では、広く国民に呼びかける機会を十分に確保する必要があると考えていた。今回の街頭演説会の減少は非常に残念だが、数少ない機会を利用した両候補の訴えが、しっかりと国民に届き、政治不信の解消に繋がることを心から期待している。

 

いづれにしても結果は明日、判明する。

総裁選の争点は

このところ世界各地から地球規模の異常気象が報告されている。我が国でも猛暑による熱中症被害が後を絶たず、また、西日本を襲った7月豪雨をはじめ、毎週のようにゲリラ豪雨による水害が報じられる。

台風の数も異常だ。8月の発生数は平年の5割増しの9個となった。23日に私の地元を直撃した20号に続き、4日頃には21号が列島を縦断しそうだ。このような日本の亜熱帯化は、今後も続きそうな気配である。

 

いにしえの世から治山・治水は国家の最重要事項である。

先週出そろった各省庁の概算要求の中でも国土交通省は、水害対策(5,273億円)、土砂災害対策(958億円)、輸送ルート維持(4,156億円)など、防災にかかわる予算の大幅な増額を要求している。また、自治体による防災の取り組みなどを支援する防災・安全交付金も21%増の1兆3,431億円を要求した。

 

6年ぶりに行なわれる自民党総裁選でも、防災に関する政策は重要な争点になりそうだ。

すでに立候補を表明している石破茂元幹事長は、政策の柱の一つとして政府の司令塔機能充実を図る“防災省創設”を掲げ、防災立国で国民の生命・財産を守ると主張している。

これに対して安倍普三総理がどの様に受けて立つのか?選挙戦での議論に注目したい。

 

もう一人、初の女性総理を志し、「最後まで諦めずに努力する!」と言っていた野田聖子総務相がついに総裁選出馬を断念。今回の選挙は安倍普三VS石破茂の一騎打ちとなることが確定した。

 

日程は9月7日告示、20日投開票と決定しているが、両陣営とも選対本部を発足させ選挙戦は実質的に火蓋が切られたと言ってよい状況だ。選挙期間中のスケジュールは、総理のロシア訪問に配慮して10日~14日を除いて、街頭演説会は8,15,16日。日本記者クラブ主催の討論会に加えて青年局などが主催する討論会も9日に設定されている。

 

前号で言及したように、今回の総裁選は国会議員票405票と党員党友の投票結果をドント式で割り振った405票の合計票で争われるが、今回は候補者が二人なので一回目の投票で当選者が決定する。

 

すでに報道されているように、党内各派閥の支持動向は確定し国会議員票の大勢は決した。となると選挙の関心は党員票の行方である。両陣営とも党員票獲得のために地方における様々な活動に時間を割いている。

石破候補は政策スローガンの中心に地方創生戦略を据えてポストアベノミクスを地方から展開すると主張している。安倍総理も地方を意識して鹿児島を立候補表明の地に選んだ。

 

4年前、国民政党としての自民党再生を意図して総裁選規程改正をおこなったが、今回の選挙で狙いどおりの成果が確認できるだろう。国民に開かれた自民党への理解が、より一層深まるような政策議論が展開されることを強く願っている。