平成から令和へ

今年の統一地方選挙の後半戦、全国218の首長選(市町村長、特別区長)と689の地方議会選(市町村議会、区議会)、あわせて907の投開票が4月21日に行なわれた。

平成28年4月の“女性活躍推進法”成立後はじめての統一地方選で、女性候補の進出が注目されていた。市長選でみると24人の女性候補が立候補し、無投票も含め過去最多の6人が当選した。兵庫県芦屋市では女性候補同士の熱い戦いも繰り広げられた。

前半戦の道府県議選で当選した女性候補は237人で、4年前の207人を超えて過去最多で割合も10.4%とこれまでで最も高い。また、市議選の当選者数においても過去最多の平成15年の1,233人をオーバーし、1,239人となっている。
列国議会同盟が発表した2018年レポート(一院制又は下院)によると、我が国の女性国会議員比率(衆院)は10.2%で、193カ国中165位。女性議員が増加傾向にあるものの、まだまだ道半ばと言えよう。

一方、同日に行なわれた大阪12区と沖縄3区の衆院補欠選挙では、メディアの事前予想では与党候補の苦戦が伝えられていたが、双方とも予想通りの結果に終わった。
大阪は府市統合をめぐる維新旋風、沖縄では基地問題という特有の事情があったとは言え、我が自民党にとっては痛い敗北である。特に大阪は、自民党議員の死去に伴う「弔い戦」であっただけに残念な結果となった。

野党第一党の立憲民主党・枝野幸男代表は、衆参ダブル選挙を想定し、参院のみならず、衆院の候補者についても野党統一候補の擁立を調整すると言及し、野党各党代表と協議をスタートさせた。また、26日には自由党が解党し、国民民主党に合流することが決定した。国政選挙にむけて野党の動きが一段と加速してきている。

先日、萩生田光一幹事長代行が10月の消費税引き上げとからめて、「(延期する場合は)国民の了解を得ないといけない。信を問うことになる」と発言をしたように、自民党の一部にもダブル選挙を主張する意見もあるようだ
しかし、すでに税率UPを前提に平成31年度予算が組まれ、様々な準備作業が進行している。「リーマンショック級の出来事が起こらない限り、消費税UPの延期はあり得ない」との政府見解は揺るがしてはいけない。

「解散は勝てると思う時にやるものだ。理由は後から考えればよい」と言われた元総理がいたが、あまりに党利党略で国民を馬鹿にした話だ。
加えて、中選挙区時代と違って小選挙区で行なわれる今の選挙制度の下では事情が全く違う。「政権交代。」のスローガンで闘った民主党に風が吹いて、自公連立政権が大敗を喫した平成21年の総選挙の悪夢を思い起こすべきだ。

いよいよ27日からゴールデンウィークが始まった。今年は天皇陛下の御代替わりもあり10日間の大型連休となる。テレビでも多くの特別番組が放映され奉祝ムードが盛り上がっている。ゴールデンウィーク恒例の民族大移動も今年は長期滞在型が多いようだ。

国会ではこの連休を利用して海外に出かける議員も多いが、今年は日本にとって時代が変わる節目の時期。私は国内にとどまり新しい時代に想いを馳せたいと思う。
「令和」が素晴らしい時代となりますように・・・。

野党再編は?

今年は12年に一度の統一地方選と参院選が重なる亥年の選挙イヤー。国会審議日程が非常にタイトとなるので政府は提出法案を絞り、加えて対決法案も避けた。その効果で国会は極めて平穏に推移していたが、ここにきて場外での失言に起因する閣僚の辞任、更迭騒ぎが続き、安倍政権は対応に追われている。
この状況に、統一地方選前半戦、大阪の維新以外はもう一つ振るわなかった野党各党が、にわかに勢いづいている。

閣僚の辞任ドミノとも言える光景は、ちょうど12年前の選挙イヤーでも見られた。
当時の第一次安倍政権は、相次ぐ閣僚の不祥事による辞任と消えた年金問題から弱体化、夏の参院選で自民党は歴史的大敗(改選64議席→37議席)を喫した。首相は続投を宣言したものの、自身の健康問題もあり最終的には退陣に追い込まれた。
参院の与野党勢力逆転(自83+公20VS民主109)により、以降の自公政権も苦しい国会運営を強いられ、平成21年(2009年)の政権交代へと繋がっていくことになる。

ただ、今年は前回の亥年と違い、野党勢力が分散しており、参院選に向けた選挙協力も進展がみられない。少々政権批判の声が高まっても、「安倍首相退陣、枝野内閣組閣」といった雰囲気には程遠い。(だからと言って、閣僚が失言を続けて良いというわけではない。)

野党の参院選候補者調整が難航している原因は、野党第一党の立憲民主党(以下、「立民」)と第二党の国民民主党(以下、「国民」)の再編にむけての主導権争いにある。両党とも選挙を意識して、一致点を見出すよりも、むしろ独自色を出そうとする傾向が強まっている。
統一地方選を見ても、両党の支持母体である連合が、官公労中心の旧総評系労組は主に「立民」を支援し、民間労組主体の旧同盟系労組は主に「国民」を支援するという、股裂き状態を強いられている。政策面での相違点は、憲法改正と原発政策だろう。

「国民」は憲法議論には積極的な態度を表明しているが、「立民」は安倍総理の下での憲法改正議論には一切応じないという。
原発に関しては、民主党政権時代にまとめた「2030年代原発ゼロ」の目標を維持して先の総選挙を闘った「立民」は、昨年3月に「原発ゼロ基本法」をいくつかの野党と国会に提案している。一方、電力総連の組織内候補を参院に擁立する「国民」は、「政治的スローガンとして既存原発ゼロを主張するだけでは無責任」と牽制する。

統一地方選前半終了直後、菅直人「立民」最高顧問がツイッターで「「国民」は政治理念が不明確なので解散し、参院選までに個々の議員の判断で「立民」との再結集に参加するのが望ましい」と投稿した。江田憲司氏も「「立民」がもっと積極的に候補者をぶつけていたら、「国民」は壊滅した」と投稿。いずれも統一地方選の結果を受けて、「立民」中心の野党再編成を主張したものだ。もちろん「国民」側はこれらの声に猛反発している。

これらの投稿には身内からも批判が噴出している。野田佳彦前首相は、「対自民党との決勝戦に勝つかどうかが大事なのに、準決勝のことしか考えていない」と苦言を呈した。
旧民主党から現在に至る経緯(民主党→民進党→希望の党→分裂)もあり、「立民」、「国民」両党の感情的なしこりは相当根深いものがある。
イギリスにおいてもブレグジット(EU離脱)をめぐって膠着状態が続き一向に出口が見えない。イギリス国民は「内輪もめと政治ゲーム」にうんざりしているようだ。

国会は経済や国民生活のために政策の方向を議論し、決定する場である。健全な議論のためには明確な政策の対立軸が必要であり、その主体として大きな主張の方向性に応じて結成されるのが政党であるべきだ。そして政党には、細かな意見の相違はあっても、党として一つの主張をまとめ上げる調整能力が求められる。

失言の追及ではなく、しっかりと噛み合った政策議論ができる与党と野党、政権交代可能な二大政党の時代は、いつ来るのだろうか?
とにかく「野党再編が進まない故に、政権与党内に気の緩みが生ずる」といったことがないよう、心を引き締めて選挙戦に臨まなくてはならない。

日本版NEC

 先月27日、平成31年度予算が参院本会議で自公などの賛成多数で政府案通り成立した。一般会計予算総額は過去最大の101兆4,571億円、当初予算で初めて100兆円を超えた。
29日には41道府県議選と17政令市議選がスタート。統一地方選の前半戦は、先に告示された11道府県知事選とあわせて7日に投開票される。政治は一斉に選挙モードに突入した。
政治日程が窮屈な中、先週は党本部で多くの会議が開催され、私にとっても会議室を梯子するほど、とても忙しい一週間だった。

 そんな中、私も所属するルール形成戦略議員連盟(甘利 明会長)で、戦略的外交・経済政策の司令塔となる「国家経済会議(日本版NEC)創設」の提言を急遽取りまとめた。従来、通商政策と安全保障政策は別個のものと捉えられて来たが、今や米中両国は経済力と安全保障を一体化して覇権争いを強めている。我が国もこういった情勢変化への対応を急がなくてはならない。

 デジタル帝国主義をめぐる争いとも呼ばれる米中新冷戦は、ハイテク摩擦、データ(デジタル)覇権争いを舞台に激化している。
 中国・通信機器最大手の華為(ファーウェイ)は、中国都市部を100%カバーするAI監視システム“天網”の基幹技術を担っている。一説には、僅か数秒で20億人の顔が判別できるシステムだと言われている。
この技術を展開すれば世界中の社会を管理(人々の動きを監視し、情報を入手)することも可能になる。中国は2017年に国内外の組織や個人に情報工作活動の協力を義務付けた「国家情報法」を制定しており、ファーウェイ社がこの法律の下に世界規模の諜報活動を行うことも否定できない。すでに同社は、80カ国・約200都市のプロジェクトに関わっており、世界中に“天網”システムが普及してしまう可能性もある。

 また、「一帯一路」(現代版シルクロード)経済圏構想では、AIIB(アジアインフラ投資銀行)によるインフラ投資への資金提供を切り口に、中国の政治的影響力を拡大している。
このような、経済的な外交術を操り安全保障上の国益を追求する経済外交策(エコノミック・ステイトクラフト)は、今後激しさを増していくだろう。

 米国は、英戦終結直後の1993年から国家経済会議(NEC)を設立しているが、中国のエコノミック・ステイトクラフトに対抗するために、NECを更に発展させなければならないと考え、現在、再構築に取り組み始めている。基本的には、国防権限法や安全保障上の最先端技術輸出規制強化や外国企業の対米投資の監視強化だ。

 また、米国はこういった政策の実効性を高めるため、自国のみならずUKUSA協定を締結しているファイブアイをはじめ、我が国および独仏にも同調を求めはじめている。
日本も米国等の要請に受動的に対応するのみでなく、自らの発想でエコノミック・ステイトクラフト政策を包括的に構想し、経済界とともに実行していく仕組みを早急に構築しなくてはならない。

 日本版NECのもとで、主体的に戦略的外交・経済政策を練りあげ、経済的パートナーシップと経済制裁、知的財産管理とデータ流通、国際標準やルール形成といった取組を主導していくこと。そして国際社会の安定と繁栄に積極的に貢献することが、平和を希求する経済大国“日本”の使命である。

*UKUSA協定=ウクサ協定。(United Kingdom-United States of America Agreement)
イギリス帝国の植民地を発祥とするアングロサクソン諸国の機関であること。ファイブアイとも呼ばれ、米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで構成している。