衆参同日選挙はあるのか?

このところ永田町で、衆院の解散総選挙を巡る様々な発言が続き物議をかもしている。以前にこのコラムでも言及したが、ことの発端は4月18日のインターネット番組での自民党幹事長代行・萩生田光一氏の消費増税に関しての発言だ。

萩生田氏は「景気が腰折れしたら何の為の増税か!この先危ないとなれば違う展開はあり得る」と述べ、景気動向次第では10月に予定されている消費増税を先送りする可能性を示唆し、さらに「消費増税を延期するとなれば、国民に信を問うことになる」と続けた。
翌日には自身の発言について「個人の見解であり、政府の方針に異議を唱えるつもりはない」と釈明したのだが…。

その後、北京訪問中の二階俊博幹事長が同行記者団から「衆参同日選」について問われ、「国民に信を問わなければならない差し迫ったテーマはいまのところない」と慎重な姿勢を示したが、「いつ選挙があってもおかしくないのが衆議院議員の宿命だ」とも述べた。

連休に入って解散風はやや納まったかにも見えたが、改元の前日30日に麻生副総理が安倍総理の私邸を訪ねて約2時間にわたって会談したことが、新たな憶測を呼ぶことになる。平成29年9月の衆院解散前にも会談があった。二人が長時間話をすると重要な決定が行われることが少なくない。
今回の話題は、表向きは「連休明けの国会対策や参院選の情勢」だったとされている。その一方で、麻生氏は「10月に消費税を10%に引き上げた後や、来年のオリンピック・パラリンピックの後は、景気が落ち込むと予想される。衆院選をやるなら今年の7月以外に無い」と進言したとの声も聞こえている。

それでも連休直後は、それほど強い風が吹いているとは思わなかったが、5月の半ば以降解散総選挙に関する発言がますます増えている。解散を煽っているのではないかとさえ思えるメディアの報道も相まって、風力が徐々に強まっているようにも思える。
13日には二階幹事長が「衆参同一選をやりたくてしょうがない訳ではないが、首相が判断すれば党として全面的にバックアップして対応していく用意はある」と発言。更に17日の記者会見で菅官房長官が、内閣不信任案の提出が衆院解散の大義になるかどうかを問われて「当然なるんじゃないでしょうか」と答えた。翌日には、甘利選対委員長が官房長官発言について「理屈の上では成り得るが、衆院解散の可能性は低いというのが真意だと思う」と火消しに動いてはいたが…。
20日には再び二階幹事長が「近頃、衆院解散の風が吹きかけているように思う」と語り、その後も与野党幹部の発言が相次いでいる。加えて先日トランプ大統領が発した「7月の選挙後(July elections)」という選挙を複数にしたツイートまでもが憶測を呼んでいる。

とかく解散の理由(大義)は何かが取りざたされているが、その根底となるのは政策の争点だ。これまでの経済政策や政権運営、外交政策、また今回は憲法改正なども争点にはなるが、一番取り上げられ易いのは消費増税の要否だ。すでに、我が党の中からも景気の弱含みを懸念して延期の声があがり始めている。

予てより私は消費増税を争点として選挙を行うべきではないと考えている。少子高齢社会に突入した我が国にあって、長期にわたり増大を続ける社会保障費を賄うには、広く浅く課税でき、安定した税収が得られる消費税に依存せざるを得ないからだ。法人税や所得税では年度間の変動が大きすぎるのだ。これ以上の消費増税の延期は、今を生きる我々の税負担を将来の子どもや孫たちに押し付けることになり、政治的選択としてやってはいけないことだ。

地元の会合でも有権者の皆さんの関心は、解散についての話題に集中している。
私は今のタイミングでの解散は無い(やるべきではない)と思っているが、問われれば「総理に聞いてください」と苦笑しながら応じている。ただ永田町界隈では、「このような生煮えの状況が続くなら、いっそ選挙になった方がよい」という声も出始めている。

客観的に見て、現時点での衆参ダブル選の可能性は5割に満たないだろうが、解散風は一度吹き出すと容易に止まらない傾向がある。6月26日の会期末までの一カ月は政局から目が離せない。
政界は一寸先闇。常在戦場は衆議院議員の宿命でもある。日々緊張感を持って臨みたい。

象徴天皇制

御代替りで10連休となった今年のゴールデンウィーク。
4月30日の「退位礼正殿の儀」で平成が静かに幕を閉じ、つづく5月1日、古式にのっとった「剣璽等承継の儀」により、徳仁皇太子殿下が第126代天皇に即位され令和が始まった。新天皇はその後「即位後朝見の儀」に臨まれ、即位後初めて三権の長ら国民の代表を前にお言葉を述べられた。

4日には皇居一般参賀が執り行われた。全国的に晴天に恵まれたこの日の日本列島、東京では日中25℃を超える夏日となったが、14万人以上の国民が参賀に訪れ、皇居周辺は祝賀のムードにあふれた。
9日の衆院本会議でも、即位に際し「天皇皇后両陛下のいよいよのご清祥と令和の御代の末永き弥栄(いやさか)」を祈念する内容の賀詞奉呈を、全会一致で議決した。

今回の一般参賀で私が最も注目したのは、若い世代の参列者が目立ったことだ。皇室への崇敬の念は年配者に多いものと思っていたが、必ずしもそうではないようである。
ある報道によると、先帝が即位された1989年の世論調査では、「皇室に親しみを持っている」とする回答は54%だったが、直近の調査では76%なっている。

上皇上皇后両陛下の平成の御代30年間にわたり国民に寄り添った活動や、いかなる時も国民と苦楽を共にされたお姿が、親しみを以って広く国民に届いた結果だと思う。
新天皇皇后両陛下がこの道を引き継ぎ、令和流の皇室像、新しい時代の象徴像を国民とともに作り上げられることが期待される。

その一方で、皇室は「皇族数が減少するなかで、いかにしてご公務の質と量を維持し、また、安定した皇位の継承を実現していくか」という大きな課題に直面している。

今回の皇位継承は、平成29年に成立した“陛下一代限りの退位を容認する”特例法によるもので、終身在位を定めた明治以降では初めて。約200年ぶりのご退位が実現した。
この結果、現時点で皇位継承権のある皇族は、53歳の秋篠宮さま、12歳の悠仁さま、83歳の常陸宮さまの3名である。未婚の女性皇族は6名いらっしゃるが、現行ルールではご結婚とともに皇族の身分を離れられることとなる。

今上陛下と皇位継承1位の「皇嗣」秋篠宮さまとの年齢差はわずか5歳。今回同様、陛下がご高齢で退位される事態が生じた場合、秋篠宮さまもすでにご高齢になっておられる。
皇室典範による男系男子による継承を貫こうとすれば、継承2位の悠仁さま、そしてそのお妃さまのご負担は非常に重くなるだろう。

今回の特例法を審議した衆参両院は、一連の皇位継承の儀式終了後に、安定的な皇位継承確保の在り方や皇族数の減少への対応について、政府に対して速やかな検討を求める付帯決議を行っている。
日本国民に浸透し、幅広く受け入れられている“象徴天皇制”を、より安定的に確固たるものにするためにも、国民的な議論を進めることは避けられない政治課題である。