台風19号

過去最大級の勢力を維持し関東地方に上陸した台風19号は、12日から13日にかけて、広い範囲に亘って記録的な暴風や豪雨による甚大な被害をもたらした。

被害の全容はまだ明らかになっていないが報道等によると、17日までに12都県で亡くなった人は78人、行方不明16人を数えている。豪雨により川の堤防「決壊」が確認されたのは7県の68河川、125カ所。うち国が管理する7河川12カ所だ。家屋被害は全国で、全半壊や一部損壊が2,400棟以上、浸水被害も40,000棟以上に及んでいる。このほか、豪雨による土石流やがけ崩れなどの土砂災害も19都県211カ所で発生している。

政府は “令和元年台風19号非常災害対策本部”会議を開催し、情報収集を行うとともに、行方不明や孤立者の救出作業や被害者支援、更に被災地の復旧支援に全力を注ぐ方針を打ち出した。そして被災者が一日も早く安心して暮らせる生活を取り戻せるよう、予備自衛官も動員し約1,000名の“被災者生活支援チーム”を立ち上げ、被災地に派遣するというタイムリーな対応を行った。
安倍総理は「国としてやれることはすべてやる!」との第一声を発したが、一瞬にして生活基盤を失った方々に対して、これからも力強いメッセージを送り続けて欲しい。

先の15号台風に引き続いての今回の被災は、日本の国土が自然災害に脆弱であることを改めて認識させた。今日の気象予報技術は昭和の時代とは違う。19号台風は上陸の数日前から、その進路や風雨の強さがほぼ正確に把握されていた。そして、避難勧告も適切に行われていた。にもかかわらず、77人に及ぶ死者が出たことは大変遺憾である。

全国各地で災害を防ぐための河川改修が行われているが、その計画の想定雨量は最大でも100年に一回の降雨量レベルである。対して昨今の気象は“過去最大レベル”が毎年のように訪れる。市街地の多くは危険な沖積平野、かつては水田が広がっていた湿地帯に築かれていることを忘れてはならない。被災者から「台風をなめていた」との発言もあったが、今回のような災害に際しては、まず、身を守る行動が大切だ。自律的な避難行動ができるよう、日頃からハザードマップを確認していただきたい。そして自力での避難が困難な要支援者の状況をコミュニティで把握し、災害への共助の体制を整えて欲しい。

台風襲来はラグビーワールドカップにも影響を与え、3試合が中止という大会史上初の事態となった。そのなかで、釜石で予定されていたナミビア戦が中止となったカナダチームは、帰国せずに被災した釜石市に残り、土砂や泥を撤去するボランティア活動を行った。厳しい被害状況の報告が続く中で届いた映像は世界に配信され、真にラガーマンらしい行動と好意を持って受けとめられた。

13日の日本VSスコットランド戦も、会場の日産スタジアムが河川氾濫時に遊水地の機能を果たす公園内に立地しているため、当日朝まで開催の可否が検討されたが、大会スタッフ・ボランティアの懸命な努力に支えられ、なんとか予定通りに行われた。決勝トーナメント進出がかかった大勝負のTV中継は瞬間最高視聴率53.7%を記録、結果はご承知の通り28対21で日本が勝利した。

桜ジャパンは当面の目標であったベスト8進出を果たし、いよいよ決勝トーナメントへ。
改めて彼らの活躍に拍手を送るとともに、更なる躍進を信じてエールを送り続けたい。
「頑張れ日本!」「頑張れジャパン!」
 

*この度の台風19号で被害を受けられた皆様にお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い
  復旧、復興をお祈りいたします。

 9月20日から始まったラグビーワールドカップ日本大会。全国各地の競技場が舞台となることもあり、大会前から盛り上がりを見せていた。それが日本チームの第2戦、桜の勇者たちが優勝候補のアイルランドに勝利してから更にヒートアップしている。

 28日夜のテレビニュースは盛り上がり、翌朝刊一面のヘッドラインも日本勝利の話題が独占した。各紙のヘッドラインは大きなカラー写真とともに、

   読売 日本金星 強豪アイルランド破る
   朝日 日本金星 優勝候補アイルランドに19-12
   毎日 日本アイルランド破る 大金星 2大会連続
   日経 日本、大金星 アイルランドに19-12、8強へ前進。

といずれも大金星扱い。戦前は世界ランキング一位のアイルランドが圧倒的に有利と報じられていた。

 英国最大のブックメーカーの掛け率は、アイルランド1.08倍に対して日本7倍のオッズ。多くの日本国民も、「健闘はしても勝利はむずかしい」と思っていたのが本音だろう。実を言うと私もその一人なのだが・・・。

 日本にラグビーが紹介されたのは1899年。横浜生まれでケンブリッジ卒のエドワード・B・クラーク教授が慶応義塾の学生に紹介したという。1930年には日本代表チームが結成されたとのことだが、昭和の時代までは、どちらかと言うと“学生スポーツ”のイメージが強かった。なかでも、1981年、関東大学対抗戦・早稲田対明治戦で、国立競技場が7万人以上の大観衆で超満員となったことは今も語り草である。

 今のようなラグビーワールドカップが始まったのは、1987年のこと。日本代表チームはこの第一回大会から世界への挑戦を始めたが、しばらくは勝てても1勝という散々な結果の大会が続いた。アジアでは勝利できても世界のトップチームには全く歯が立たなかったのだ。1995年の南アフリカ大会では、ニュージーランドに17-145とW杯史上のワースト記録となる歴史的大敗を喫した。

 この間、2003-2004シーズンから 社会人の“ジャパンラグビートップリーグ”が発足。海外から選手を招き、高いレベルの試合を増やす地道な努力を続けた。そして、4年前のイングランド大会でエディ・ジャパンが南アフリカを破るという大金星をあげた。この「W杯史上最も衝撃的な結果」と呼ばれたゲームから、ラグビーは国民的注目度を高めていった。
 
 先週土曜日の夕刻、アイルランド選手のキックがサイドラインを割り勝利が決まった瞬間、日本人サポーターで超満員となった観客席からバンザイの大合唱が起こった。感極まった実況中継のアナウンサーが期せずして叫んだ「もう奇跡とは言わせない!」の言葉は、おそらく年末の流行語大賞にノミネートされるだろう。

 奇跡といえば、我が阪神タイガース。一時は今シーズンは(も?)絶望的と思われたが、終盤に6連勝し僅差で広島を抜き3位に滑り込み、クライマックスシリーズ進出となった。今年はダメだと早々にCS放送(プロ野球チャンネル)を解約してしまった私としては、いささか反省しなければならないと思っている。

 阪神タイガースの矢野監督はペナントレース終了後の挨拶の中で「今現在、日本では、ラグビーワールドカップで日本チームか日本中に大きな感動を与えてくれています。私達阪神タイガースもファンの皆様にこれから感動と,そして子供達に夢を与えられるチームになっていきます。選手が粘って粘って掴んだCSの切符を、皆さんと最後までしっかり戦っていただきたい」と熱く語った。

 暫くは野球とラグビーから目が離せない。「奇跡とは言わせない!」そんな戦いを期待したい。