補正予算

気がつけばあと一週間で今年も12月。「時の過ぎるのが早い」と感じるのは、私も歳をとったということなのか?
例年この時期から年末にかけては、予算編成や税制の議論などのスケジュールが立て込み、とても忙しい。加えて今年は災害対策や、3年ぶりの経済対策に向けた大型の補正予算を組むとの方針が定まり、永田町はその準備に奔走している。

その中で、私が最も力を注いでいるのは初等教育におけるICT教育の環境整備である。
新しい学習指導要領では、「デジタル時代の人材を育成する」として、「情報活用能力」を言語能力と同様に、「学習の基盤となる資質・能力」であると位置づけている。

未来社会を生きる児童生徒の情報活用能力の育成を図るためには、各学校においてコンピュータやネットワークなどの情報手段を活用するための必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図らなければならない。いわゆる21世紀型スキルに対応するためには、学校現場にICT環境を整えることが必須条件だ。

2013年6月に閣議決定された“日本再興戦略”では、「2010年代中に一人一台の情報端末による教育の本格展開を目指す」こと、「デジタル教材の開発や教員の指導力向上に関する取り組みを進める」ことが高らかに宣言されている。    そして現在、「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」が施行中で、地方交付税として単年度1,805億円の財政措置が講じられている。

しかし、交付税は制度上自治体が自由に使える財源であり、他の使途に回されることもある。結果として、現時点では教育コンピュータ1台あたり児童生徒数の平均は5.4人(佐賀県1.8人、東京都5.2人、渋谷区1.0人、最低県7.5人)であり、先に述べた“一人一台”の実現は絶望的である。

デジタル時代の日本の未来を背負う子ども達の教育環境に格差があってはならない。かつてのソロバンのごとく、すべての生徒が自分のタブレット型PCを所有すべきであり、すべての教室にはWiFi環境が整っているべきだ。
今回の補正予算は、その実現の大きなチャンスである。
去る11月11日、文部科学部会に、教育再生実行本部と人工知能未来社会経済戦略本部に加え名を連ねる形で関連する議連も含め、総理に申し入れを行なった。

それが功を奏した否かは定かではないが、総理は19日の経済財政諮問会議で「(教育現場に)パソコンが1人あたり1台となることが当然だということを、国家意思として明確に示すことが重要だ」と指示を出した。

財政再建途上にある今の日本にあって、今回の補正の規模を巡っては様々な意見があるが、未来の日本を支える人材育成は、未来への投資であり、国の責任で行わなければならない重要な政策課題である。

ICT以外に私が会長をしている科学技術政策でも、未来への投資となる数多くの政策を提言、要望している。その中でも幅広い分野の研究開発や人材育成、社会の構造を大きく変える可能性があるイノベーション政策や、新しいユニコーン企業を誕生させるスタートアップの為の創業政策などは、特に重要な政策である。

そんな多忙な日々の中、先週、昨年11月に逝去された園田博之氏の一周忌(偲ぶ会)が行なわれた。
政治家、メディア、氏の昔の飲み仲間や当時の事務所スタッフなど、特に親しかった友人知人だけの集いだったが、数々の想い出話で大いに盛り上がった。
当選同期を代表して参加したが、振り返えれば1986年の衆参同時選で当選した仲間(衆院67人・参院35人)で、現在も国政に席を置いているのは園田氏の死去により7人(衆院6人・参院1人)だけとなっている。歳月の経過を感じずにはいられない。
改めてこれまでの政治生活を総括し、これからの活動を意味あるものとすべく日々努力を重ねて行きたい。

迷走、入試改革

来年4月からの実施が予定されていた大学入試共通テストでの英語民間試験の活用。これまでから賛否両論が飛び交っていたが、先週、萩生田文部科学大臣は、「自信を持って受験生にお奨めできるシステムになっていないと判断せざるを得ない」として、導入見送りを表明した。

今回の大学入試改革は、平成25年10月に教育再生実行会議が大学入試センター試験に換わる新テストの導入を提言したのが発端だ。改革のポイントは、「知識・技能」だけではなく「思考力・判断力・表現力」を測るという点。このため国語と数学では記述式の問題を導入し、英語では「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測るために民間試験を活用するとされた。

この民間試験の対象は、英検やTOFELなど7種類。どの試験を選択するかは受験生の自由で、4月から12月までの間に2回まで受けることができるとされている。
この方針が決まったのは平成29年7月。その当時から、そもそも性格の異なる複数の民間試験の結果で公平な合否判定ができるのか?という点が課題とされていた。加えて民間試験の会場は都心部に偏り、地方の受験生の負担が大きいとか、高額な受験料は家庭の所得の多寡による不公平を招くといった指摘もあった。

これらの問題点を解決すべく、文科省では検討を重ねてきた。
まず、各種試験の結果の評価については、大学入試センターで相対的な成績レベルの調整を行う指標を設定し、各大学に報告することとした。
地域による受験機会の格差については、国・公立大学等を試験会場として提供することにより、できる限り多くの会場を確保するとしている。また、経済的に恵まれない受験生については、受験料の減額を実施団体に要請、加えて離島などの受験生については、交通費や宿泊費を支援することも検討している。

文科省は、新テストの受験に必要なID発行日である11月1日までに、試験会場や日程、申請手続きなどの詳細を公表するように、試験実施団体に要請していた。ただ、一連の対応は各団体に判断任せとなり、受験者数の予測が困難な故に、団体間の様子見の状態が続き、試験日程等の公表は進んでこなかった。

1日の会見で、萩生田大臣は「大臣就任以来、慎重な検討を行ってきた。全体的に不備があることを認めざるを得ない」とも言及した。
大臣の「身の丈」発言の影響の有無はともかくとして、受験生の居住地や経済環境による格差の解消が見通せない現状を考慮すれば、導入延期の判断はやむなしとすべきだろう。
英語の入試改革の方針、コミュニケーション能力を判断するために「話す」「書く」能力を評価要素に加えるという方向性は誤っていない。文科省は英語の新テスト導入時期を令和6年度に設定し直し、1年程度の検討で結論を出したいとしている。

今回の民間試験の導入延期は、政策決定に関わってきた我々の責任でもある。来春の実施を前提に準備を進めてきた試験実施団体や大学も影響を受けるが、最大の受難者は受験生であることは間違いない。関係者の皆さん、特に受験生の方々に心からお詫びを申しあげたい。
新試験の再検討に際しては「受験生ファースト」で議論が行われるべきである。我々も党内で議論を取りまとめ、必要に応じて政府に提案していく考えだ。

日本列島を興奮のるつぼに巻き込んだ“ワールドカップラグビー”が閉幕した。大会期間中の日本チームの活躍で「オフロードパス」「ジャッカル」といった耳慣れない用語が国民に広まったが、最も印象的な新語は「ワンチーム」だろう。
これからの日本の国づくりにも、多様性を生かした「ワンチーム」で臨みたい。