未来への責任

1月20日に通常国会が開幕、22日からは代表質問が始まった。前号で私は「政府には国民の疑問に対して丁寧な説明を!野党には活発な政策の議論を期待したいものだ」と、言及したのだが・・・?

 

質問のトップバッターは野党統一会派を代表して立憲民主党の枝野幸男代表。冒頭から “桜を見る会”“IR汚職”“政治とカネ“の政局ネタ三点セットの話が続いた。これらの問題が重要ではないとは言わないが、延々と3分の1もの時間を割く価値があったのか。

 

質問後半で政策課題についても触れてはいたが、「支え合う安心」「豊かさの分かち合い」「責任ある充実した政府」といった抽象的な言葉の羅列にとどまり、それらを実現するための具体的な政策、裏付けはほとんど語られない。政権運営の基本となる施政方針演説に対しての代表質問としては、些か物足りない内容だった。

 

同じく統一会派の代表として登壇した国民民主党の玉木雄一郎代表は、最初にIR汚職にについて少し触れた後は、女性や子供・若者に関する問題への具体的な提案を訴えた。両者の差異は、従来から「対決よりも提案」を重視してきた国民民主党と、「反政権主張」を存在意義としてきた立憲民主党とのスタンスの違いにあるのだろう。

 

野党としての最大の目標は安倍政権打倒かもしれないが、打倒した後には自らが政権を担い、持続可能な政策を実行する責務がある。「政権交代。」「コンクリートから人へ」「政治主導」といったスローガンのみで政権を奪取した、民主党の失政の轍を踏んではならない。

 

立民はリベラルの政治集団として、国民は中道から穏健保守を標榜して活動しながら、昨年来合流に向けた協議を続けている。もし、両党が「一つの大きなかたまり」を目指すのであれば、個別の政策調整以前に、その目的は「責任政党の形成」にあるのか?それとも「批判勢力の拡大」にあるのか?をまず明確にしなければなるまい。27日からは予算委員会で補正予算審議が始まる。両党の所属議員がどのような立ち位置で質疑に臨むかに注目したい。

 

他方、総理をはじめ政府側からも、種々の疑念を払拭するに足りる説明はなされていない。このことは世論調査でも明らかである。より多くの国民の理解を得るべく、更なる努力が求められる。

 

国会の開会日は世界経済フォーラム年次総会(通称:ダボス会議)が開幕した日でもあった。今年のテーマは「ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界」。自国優先主義への歯止め、公益重視の資本主義への転換といった様々な意見表明がなされたが、議論が集中したのは気候変動対策の在り方だ。

 

昨年の会議で「私達の家が燃えている(Our house is on fire)」と訴えたグレタ・トゥンベリさん(17歳)は、今年も「環境問題の対応は全く不十分だ」として、世界に具体的な行動を求めた。インドネシア・バリ島でプラスチックごみを無くすNGOを成功させたメラチィ・ワイゼンさん(19歳)は、「世界の指導者はどこまでやるのか、変化をどう実行するのか見たい」と訴えた。

 

今年のダボスでは、こういった10代の活動家たちのメッセージが注目を集めたが、残念ながらそこに日本の若者の姿は無かった。(政治家もいなかったが…)

ドイツの宰相ビスマルクは「その国の未来を知りたければ、その国の青年を見よ!」と言ったといわれる。このコラムで何度も言及してきたが、改めて我が国の未来が些か気がかりに思える。

 

しかしその前に、この国の活力を維持した姿で次の世代に引き継げるか否かが我々に問われている。強い日本経済の実現や持続可能な全世代型社会保障など、課題は山積している。日本の目指すべき将来像について活発な政策議論が臨まれる。それこそが今、政治に求められている「未来への責任」だ。

国会論戦に望む

 「令和になって初めてのお正月」と言う言葉が、今年の年始挨拶でのキーワードではなかっただろうか。時には寒風が吹きすさぶ日もあったが、年末年始の9連休は総じて穏やかな天候に恵まれた。スキー場の雪不足を除けば、国内的には、まずまずの新時代の幕開けだったと言えるだろう。

 半面、海外からはスパイ映画のような驚きのニュースが次々と飛び込んできた。まずは年末の31日。日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が「私はいまレバノンにいる」との声明を発表した。保釈の条件であった海外渡航禁止を無視して、日本を出国したことを明らかにしたのだ。一説によると楽器のケースに入って、プライベートジェットにより旅立ったという。15億円の保釈金の多寡はともかく、我が国の司法制度がコケにされた形だ。国家として毅然とした対応が必要だろう。

 続いて1月3日には、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のトップ、カセム・ソレイマニ司令官がイラクのラク・バグダッドで米軍のドローンMQ9リーパーによる空爆で暗殺された。

 トランプ大統領は「イラク革命軍によるテロ計画の防止のための措置」と主張したが、とにかくこの攻撃で中東情勢は一触即発の危機に陥った。今のところイランの報復は抑制的で限定的な??米軍基地への弾道ミサイル攻撃に留まり、当面の危機は回避されている。ただ、この事案の巻き添えのような形でウクライナの旅客機がイラン軍の対空ミサイルにより撃墜されたようだ。今年の世界平和と経済は、ただでさえ不安定なこの地域の動向に左右されるだろう。

 このような中、政府は日本関係船舶の航行安全を確保するため、海上自衛隊の護衛艦と哨戒機のアラビア海への派遣を命令した。紛争地域となりかねない中東への自衛隊派遣を巡っては野党が再検討を強くて主張している。しかし、このような事態であるからこそ、自衛隊の派遣が必要なのではないだろうか。

 我が国は主要なエネルギーである石油の85%、LNGの23%を中東地域に依存している。この物流ルートの途絶は、国家存亡の危機を招きかねない。ゴーン氏への対応以上に毅然とした姿勢が求められる。

 20日から始まる通常国会で野党は、この中東問題よりも「桜を見る会」や「IR疑惑」に重点を置き、政府を徹底追求すると言っているようだ。

 しかし、私の知る限り、新年会などで耳にした国民の世論は少し違うようである。国内経済の成長をいかにして導き出すか? そして世界の繁栄にどのように貢献するか? 少子高齢社会の展望をいかにして示すか? それが今、政府に問われており、国会で議論すべき課題であると感じた。

 政府には国民の疑問に対してより丁寧な説明を、野党には活発な政策議論を期待したいものだ。

年頭所感2020

明けましておめでとうございます。

ゴールデンスポーツイヤーズの中心となる2020年が幕を開けました。昨年のラグビーワールドカップは、“ワンチーム”を掲げた日本代表の躍進が大きな感動を与えてくれました。

今夏の東京オリンピック・パラリンピックも日本選手の大活躍で、何度も君が代のメロディが流れることを期待しています。

海外から多くの観戦者が来日するオリパラの期間は、日本文化を世界に発信する好機でもあります。文化オリンピアードを全国で展開し、日本ファンの拡大を図りたいものです。

天皇陛下は即位礼正殿の儀で、「国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与する」と誓われました。令和の時代も我が国の外交は、世界各国との平和と協調を基にしなければなりません。温暖化対策をはじめ、地球環境に対する貢献も我々が果たすべき責務でしょう。

一方、国内では人口減少が加速しています。昨年の出生数は統計史上初の90万人割れで、政府が予測したよりも2年早いスピードで少子化が進んだことになります。

少子化に歯止めをかけるには、教育費等の経済支援とともに、子育てが楽しいと感じられる社会をつくることが大切だと考えます。しかし、その実現は簡単ではありません。今後数十年にわたり日本の人口減少が続くことは避けられないでしょう。

そのなかで社会の活力を維持するために、AI、IoT、ロボットといった新技術の力で、生産性を高め社会課題を解決する“Society5.0”の創出が求められています。

このイノベーションを推進するのは、ICTを駆使する人材です。昨年末の経済対策で打ち出した「全小中学校でのWi-Fi環境整備と全児童生徒へのPC配備」は、未来を担う人材育成の礎となるはずです。

私の初当選は1986年の衆参同日選。早や34年の時が経ちましたが、初登院時の感慨と志を忘れず、“未来への責任”を果たすべく、今年も努力を重ねていく所存です。

引き続き格別のご指導とご鞭撻をお願い致します。