会期末のドタバタ

10月15日から始まった第185回臨時国会が閉幕した。
アベノミクス第三の矢である成長戦略を具体化する国会のはずだったが、終盤は特定秘密保護法案をめぐり与野党が激突。担当大臣、国家安全保障特別委員長の問責決議案、さらには内閣不信任案までも提出されるなど、またしても法案審議を度外視した茶番劇が繰り広げられてしまった。

会期不継続の原則(会期中に議決されなかった議案は廃案となる)の弊害だが、このところ国会の会期末には必ずと言って良いほど、法案の廃案をねらった無意味な審議引き延ばしが見られる。これに対抗する手段として行使せざるを得なかった強行採決。今回については、いささか強引で稚拙であったかと思わないでもないが、ギリギリになって時間稼ぎの修正案を提出した民主党の対応にも辟易するものがある。

ただ、混乱はあったとしても、成長戦略実行の二本柱となる国家戦略特区法と産業競争力強化法は成立し、日本経済の飛躍に向けた布陣は整えられた。デフレ脱却を確かなものとするために、今週末にも編成する補正予算案とともに早期の執行に移していきたい。

今国会冒頭の所信表明で訴えたもう一つの重要政策が、世界の平和と安定に寄与する「積極的平和主義」を唱える外交政策である。就任1年で、すでに25か国を歴訪した安倍首相。とりわけASEAN加盟10か国はすべて訪問し、激変する北東アジア情勢をにらみ外交・安全保障上の布石を着々と打ってきた。

昨今の東アジアを取り巻く最大の懸念事項は中国の領土拡張政策だ。我が国の固有の領土である尖閣列島を中国領と主張し、海洋進出を名目に度重なる領海を侵犯する。先月には一方的に尖閣諸島上空に防空識別圏まで設定した。同様の強引な拡張行為はフィリピンやインドネシア海域でも行われている。
また、罪なき民を拉致し、あまつさえ核とミサイルによって隣国に軍事的恫喝をおこなう北朝鮮。そして本来同盟国であるべき韓国までもが、我が国が領有を主張している竹島を占拠し、反日外交を世界各地で展開している。

これらの行為に対抗する手段が、新たに安全保障の指令塔となる日本版国家安全保障会議(NSC)であり、その活動基盤となる特定秘密保護法である。
アメリカの上院外交委員会で「日本はスパイ天国」と証言されたこともあるように、我が国は、外交上の機密情報が漏れやすいと指摘されている。
今回の法制で、外交、防衛、スパイ活動防止、テロ防止に関する秘密保全のルールがようやく整備された。首相、外相、防衛相、官房長官の4者を基本とするNSC設置と相俟って、インテリジェンス(情報収集、分析力)は格段に高まるだろう。

法案審議の最中、戦前の治安維持法になぞらえたメディアの喧伝が行われたが、首相が「一般国民が特定秘密を知ることはあり得ない。ゆえに処罰されることはあり得ない」と答弁したとおり、法の趣旨は国家機密を知り得る立場にある政治家や官僚の行動を縛るものであり、一般国民が処罰の対象となることは基本的にはあり得ない。
アメリカ、英国、ドイツ、フランスなど、民主主義の先輩国も同様の国家機密保護法制を有している。これらの国で言論の自由が棄損されているだろうか。
戦後、国民が育んできた民主主義国家が全体主義国家に後戻りすることなど、あり得ない。ここに断言しておく。ブログ読者の方々には、まずはご安心いただきたい。

しかし、法案審議の過程で、政治に対する国民の不信感が増大してしまったことは、重く受け止めなければならない。法施行まで最大1年の猶予期間がある。政府はより丁寧に法の趣旨を説明し、国民の疑念や不安を解消しなければならない。
国会議員も一人ひとりがその責務として、国家安全保障に係る特定秘密をどのように限定し、特定秘密指定権限の濫用をいかにしてチェックするか、更なる議論を深めて行く必要があると思う。