コップの中の嵐

 例年この時期になると、「朝夕に秋の気配を感じる季節となりました」と挨拶をしていたものだが、今年は8月も下旬に入ったというのに猛暑が収まらない。

 加えて、永田町でも民主党の代表選がヒートアップしているようだ。
 ニュースで流れている政治の話題も、(困ったものだが…)目の前の円高対策よりも、9月1日告示の代表選が主役を張っていると言っても過言ではない。

 毎日のように、○○グループが集まって菅支持を決めたとか、△△グループの会合で出席議員の多くが「小沢さんに出てもらいたい」と発言したと報道されている。
 「○○派」が「○○グループ」にすり替わったが、これまで自民党で見られた光景と全く同じだ。

 親小沢か反小沢かという分け方もあるようだが、ここへきて路線の違いも見えてきた。
 一方は、財政の現実に即してマニュフェストを修正していこうというもの、他方は、もう一度マニュフェスト原理主義に立ち戻ろうというものだ。

 しかし、マニュフェストに関わるこの論争は、政権構想論ではなく選挙戦術論でしかない。
 昨年の衆議院選挙のマニュフェストは国民に対する民主党の公約であり、誰が代表になろうとその成否に対する責任を負うことには変わりない。

 この一年の政権運営で、マニュフェストの矛盾点や問題点がかなり明らかになってきた。既に破綻している政策に拘れば、ただでさえ深刻な財政をさらに悪化させることは必定だ。

 民主党の代表は総理大臣になるのだから、立候補者はまず、日本をどんな国にしたいのかという自らの国家像を語って欲しいものだ。
その上で、これまでの政策実施状況を検証し、改めて“財源に裏打ちされた”新政策を提案すべきだろう。そうしなければ与野党協議の前提条件が整わず、野党自民党も協議に応ずることは難しい。

 代表選の最大の焦点は、小沢さん本人が出馬するか否かといわれている。
 政治資金の問題がクリアされてないと言われるが、小沢氏本人は「疾しいところは何もない」と言っているのだから、出馬するか否かは小沢氏自身が判断されることだ。

 ただ政治と金について、国民への説明責任はまだ果たされていない。立候補されるなら、まず選挙を通じて国民に説明をすることが最低限の責任と考える。
 いずれにしても影から政権を操るような政治はもう国民が許さないだろう。

 与党民主党が代表選にうつつを抜かし、政府が政策決定能力を失っているうちに、気候だけでなく日本経済もおかしくなってきている。

 円は15年ぶりに84円/ドルを割り込み、日経平均も遂に9000円を割った。円高・株安によって、さらなる景気悪化が懸念されている。既に4月から6月のGDP成長率は年率換算+0.4%と大きく低下している。
 すべては、日本政府と日銀の無策のなせる結果。世界中が、民主党代表選が終わるまでは、日本に政策決定能力はないと判断しているのだろう。

 今こそ政治主導を見せる局面ではないのか。何故、政府が日銀をリードし、迅速に金融緩和、為替介入に踏み切らないのかと苛立たしい。

 民主党も政務調査会が復活したのだから、一年生議員の囲い込み合戦よりも、緊急経済対策や中長期の社会保障、財政運営について、早急に議論すべきである。
 政府も与党もあまりにも危機感が欠けている。