あれから一年

政治の世界では、政権は解散(勝利)で求心力を得ると言われる。

ちょうど一年前の11月9日(日)、 “消費増税先送りなら解散”との見出しで、某有力紙から早期解散説が発信された。当時、女性2閣僚の辞任騒動はあったものの、与党は衆院480議席中325議席を有し、政権運営上の支障は殆ど無いと言えた。衆議院は常在戦場とは言っても、前回の総選挙から2年も経過していない。

当初、永田町でも「よもやこの状況で解散は無いだろう」という声が支配的だった。

ところが総理の外遊中に流れは一転、政局は一気に解散・総選挙モードへと動き出し、あれよあれよという間に、21日には衆議院は解散となった。

 

野党は“大義なき解散”と喧伝したが、「解散は政権党にとって最も有利なタイミングでやるもの。理由は何とでもなる」とする金言もある。

直接の解散理由は、「消費税10%の引き上げを延期する。“景気回復、この道しかない”」とし、アベノミクスの成果を国民に問うというもの。これが“大義”といえるかどうかは後世の歴史の判断に任せるとして、選挙結果は与党の圧勝。475議席中、326議席(自民291、公明35)を獲得した。

 

小選挙区制は二大政党(一対一の対決)を想定して設計された制度であり、小さな政党が乱立する状況での意見集約には適さない。我が党が小選挙区の得票率48%で76%の議席を獲得したことが示すように、小政党からの多数立候補は死票を多くするだけだ。

 

中小政党は、まとまって大きな集団にならなければ、小選挙区では勝てない。まとまる過程では、当然、政策のすり合わせ、妥協点を見出すための努力が行われる。その結果、極端な主張は排除され、政権を担当できる穏健中道的な集団が形成されていく。

そうなるべきだった。そうなって政権担当力のある二大政党が、現実的な政策議論を行う政治の実現が、私が“さきがけ”の同志とともに目指した政治改革の基本だった。

 

しかし、実態は厳しい。一度政権与党を経験すれば、現実的な政策運営論が身につくものと期待していた民主党は、野党になったとたんに再び、与党批判の主張に終始するようになってしまった。先の通常国会の安全保障をめぐる議論のように、前向きな対案提言を放棄し、なんでも反対を繰り返す姿はとても責任野党とは言えない。

 

今、民主党と維新の党の間で、統一会派結成、政界再編、選挙協力といった動きがみられるが、民主党の中で意見が割れているようだ。選挙の勝利(候補者調整)だけを目的とせず、きちんと政策のすり合わせ行い長続きする新党・協力関係を作ってもらいたい。

 

“大義”の有無が問われるような解散、求心力を高める恣意的な解散をさせないように政権与党を縛るのは、いつでも政権交代できる責任野党の存在しかないだろう。国会を政策創造の場とするためにも、本物の“影の内閣”の存在が望まれる。次の総選挙までに国民のみなさんに選択肢と言える二つの政策方針が示されるか?

一強多弱の政界にあって、来年の参院選が野党協力の試金石となる。

 

自民党はこの15日に結党60周年を迎えた。引き続き政権を担当するには、驕ることなくしっかり党内議論を深めていかなければならない。