9月20日から始まったラグビーワールドカップ日本大会。全国各地の競技場が舞台となることもあり、大会前から盛り上がりを見せていた。それが日本チームの第2戦、桜の勇者たちが優勝候補のアイルランドに勝利してから更にヒートアップしている。

 28日夜のテレビニュースは盛り上がり、翌朝刊一面のヘッドラインも日本勝利の話題が独占した。各紙のヘッドラインは大きなカラー写真とともに、

   読売 日本金星 強豪アイルランド破る
   朝日 日本金星 優勝候補アイルランドに19-12
   毎日 日本アイルランド破る 大金星 2大会連続
   日経 日本、大金星 アイルランドに19-12、8強へ前進。

といずれも大金星扱い。戦前は世界ランキング一位のアイルランドが圧倒的に有利と報じられていた。

 英国最大のブックメーカーの掛け率は、アイルランド1.08倍に対して日本7倍のオッズ。多くの日本国民も、「健闘はしても勝利はむずかしい」と思っていたのが本音だろう。実を言うと私もその一人なのだが・・・。

 日本にラグビーが紹介されたのは1899年。横浜生まれでケンブリッジ卒のエドワード・B・クラーク教授が慶応義塾の学生に紹介したという。1930年には日本代表チームが結成されたとのことだが、昭和の時代までは、どちらかと言うと“学生スポーツ”のイメージが強かった。なかでも、1981年、関東大学対抗戦・早稲田対明治戦で、国立競技場が7万人以上の大観衆で超満員となったことは今も語り草である。

 今のようなラグビーワールドカップが始まったのは、1987年のこと。日本代表チームはこの第一回大会から世界への挑戦を始めたが、しばらくは勝てても1勝という散々な結果の大会が続いた。アジアでは勝利できても世界のトップチームには全く歯が立たなかったのだ。1995年の南アフリカ大会では、ニュージーランドに17-145とW杯史上のワースト記録となる歴史的大敗を喫した。

 この間、2003-2004シーズンから 社会人の“ジャパンラグビートップリーグ”が発足。海外から選手を招き、高いレベルの試合を増やす地道な努力を続けた。そして、4年前のイングランド大会でエディ・ジャパンが南アフリカを破るという大金星をあげた。この「W杯史上最も衝撃的な結果」と呼ばれたゲームから、ラグビーは国民的注目度を高めていった。
 
 先週土曜日の夕刻、アイルランド選手のキックがサイドラインを割り勝利が決まった瞬間、日本人サポーターで超満員となった観客席からバンザイの大合唱が起こった。感極まった実況中継のアナウンサーが期せずして叫んだ「もう奇跡とは言わせない!」の言葉は、おそらく年末の流行語大賞にノミネートされるだろう。

 奇跡といえば、我が阪神タイガース。一時は今シーズンは(も?)絶望的と思われたが、終盤に6連勝し僅差で広島を抜き3位に滑り込み、クライマックスシリーズ進出となった。今年はダメだと早々にCS放送(プロ野球チャンネル)を解約してしまった私としては、いささか反省しなければならないと思っている。

 阪神タイガースの矢野監督はペナントレース終了後の挨拶の中で「今現在、日本では、ラグビーワールドカップで日本チームか日本中に大きな感動を与えてくれています。私達阪神タイガースもファンの皆様にこれから感動と,そして子供達に夢を与えられるチームになっていきます。選手が粘って粘って掴んだCSの切符を、皆さんと最後までしっかり戦っていただきたい」と熱く語った。

 暫くは野球とラグビーから目が離せない。「奇跡とは言わせない!」そんな戦いを期待したい。