迷走、入試改革

来年4月からの実施が予定されていた大学入試共通テストでの英語民間試験の活用。これまでから賛否両論が飛び交っていたが、先週、萩生田文部科学大臣は、「自信を持って受験生にお奨めできるシステムになっていないと判断せざるを得ない」として、導入見送りを表明した。

今回の大学入試改革は、平成25年10月に教育再生実行会議が大学入試センター試験に換わる新テストの導入を提言したのが発端だ。改革のポイントは、「知識・技能」だけではなく「思考力・判断力・表現力」を測るという点。このため国語と数学では記述式の問題を導入し、英語では「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測るために民間試験を活用するとされた。

この民間試験の対象は、英検やTOFELなど7種類。どの試験を選択するかは受験生の自由で、4月から12月までの間に2回まで受けることができるとされている。
この方針が決まったのは平成29年7月。その当時から、そもそも性格の異なる複数の民間試験の結果で公平な合否判定ができるのか?という点が課題とされていた。加えて民間試験の会場は都心部に偏り、地方の受験生の負担が大きいとか、高額な受験料は家庭の所得の多寡による不公平を招くといった指摘もあった。

これらの問題点を解決すべく、文科省では検討を重ねてきた。
まず、各種試験の結果の評価については、大学入試センターで相対的な成績レベルの調整を行う指標を設定し、各大学に報告することとした。
地域による受験機会の格差については、国・公立大学等を試験会場として提供することにより、できる限り多くの会場を確保するとしている。また、経済的に恵まれない受験生については、受験料の減額を実施団体に要請、加えて離島などの受験生については、交通費や宿泊費を支援することも検討している。

文科省は、新テストの受験に必要なID発行日である11月1日までに、試験会場や日程、申請手続きなどの詳細を公表するように、試験実施団体に要請していた。ただ、一連の対応は各団体に判断任せとなり、受験者数の予測が困難な故に、団体間の様子見の状態が続き、試験日程等の公表は進んでこなかった。

1日の会見で、萩生田大臣は「大臣就任以来、慎重な検討を行ってきた。全体的に不備があることを認めざるを得ない」とも言及した。
大臣の「身の丈」発言の影響の有無はともかくとして、受験生の居住地や経済環境による格差の解消が見通せない現状を考慮すれば、導入延期の判断はやむなしとすべきだろう。
英語の入試改革の方針、コミュニケーション能力を判断するために「話す」「書く」能力を評価要素に加えるという方向性は誤っていない。文科省は英語の新テスト導入時期を令和6年度に設定し直し、1年程度の検討で結論を出したいとしている。

今回の民間試験の導入延期は、政策決定に関わってきた我々の責任でもある。来春の実施を前提に準備を進めてきた試験実施団体や大学も影響を受けるが、最大の受難者は受験生であることは間違いない。関係者の皆さん、特に受験生の方々に心からお詫びを申しあげたい。
新試験の再検討に際しては「受験生ファースト」で議論が行われるべきである。我々も党内で議論を取りまとめ、必要に応じて政府に提案していく考えだ。

日本列島を興奮のるつぼに巻き込んだ“ワールドカップラグビー”が閉幕した。大会期間中の日本チームの活躍で「オフロードパス」「ジャッカル」といった耳慣れない用語が国民に広まったが、最も印象的な新語は「ワンチーム」だろう。
これからの日本の国づくりにも、多様性を生かした「ワンチーム」で臨みたい。