野党再編

先週、国民民主党(以下、国民)は党を解散した上で立憲民主党(以下、立憲)と合流し、新しい党をつくることを正式に決定した。国民の平野博文幹事長から合流の報告を受けた立憲の福山哲郎幹事長は、「政権交代し得る野党として認知してもらえるよう頑張る」と強調。その上で、「一人でも多く参加してほしい」と呼び掛けた。

いまのところ国民の衆参62議員の過半数が合流する方向と言われており、野田佳彦前首相や岡田克也元外相がそれぞれ率いる無所属グループの20人ほどを合わせると、「少なくとも150人前後」の政党になると予想される。衆院議員数では政権奪取直前の民主党(115人)に肩を並べそうだ。

しかし、玉木氏をはじめ一部議員は合流せず、別に新党をつくる意向だ。同氏に近い山尾志桜里衆院議員がれいわ新選組の山本太郎代表と会談するなど、連携に向けていろいろな動きが出てきている。また、国民の産別労組出身議員の間では、合流新党が綱領に「原発ゼロ」を明記したことなどから、玉木氏とも別の「第3党」を模索する動きもある。もうしばらく混迷は続きそうだ。

2012年12月に旧民主党政権が終焉して以来8年間、野党は数合わせの離合集散を繰り返してきた。安倍首相が憲政史上最長の在任期間を更新できたのは、政権交代可能なしっかりした野党が存在しなかったことも一因だろう。今回の新党も、立憲が旗印とする「立憲主義」に内心で同調していない国民の保守系議員の参加も見受けられ、簡単には一枚岩になれそうにない。

にもかかわらず、この時期に合流が一気に進んだ背景には、この秋にも解散総選挙があるとの思惑から、とりあえず「大きな塊」となって議席を死守したいという心理が垣間見える。しかしこのシナリオの成功は、年内の総選挙が前提になる。

政界の常識として新党の賞味期限は3ケ月と言われている。その程度の期間であれば、成果が無くとも国民の期待感が継続するし、内輪もめがあっても顕在化しないということだ。

だが私の読みでは今秋の解散の可能性は低い。よって来年になると新党が再び離散への道を歩む可能性も否定できない。

現在の衆議院選挙制度の基本である小選挙区制が目指したものは「2大政党による政権交代可能な政治」だ。選挙区ごとに一人を選出する制度とすれば、政党は自ずと二つに収れんし、それぞれの政策の是非を競い合う選挙が行われるはずだった。しかし、わが国では比例代表制を残したこともあり、二大政党への流れは起こらず少数政党が存続し続けている(与党も含めた課題ではあるが…)。

本来、政権担当可能な責任政党をめざすのであれば、野党各党は今回のような「目の前の選挙のための数合わせ」ではなく、「時間をかけても政策方針の共有を実現すべき」である。ただ、最近の世論調査に見られるように、野党が政権批判の受け皿になれず、無党派層が4割を超えるというのも問題だ。このような状況が続くと国民と政治の距離がますます遠くなってしまう。

今は、次の選挙での与党候補への影響は度外視して、今回の野党再編による150人規模の大規模野党の設立が国民の政治への関心を高めてくれることを望む。今回の野党再編が与党の政権運営に良き緊張感をもたらし、政治倫理の確立と政策の質の向上を通じて政治の復権に繋がることを期待したい。