いつか見た景色

安倍晋三総理大臣の後任を選ぶ自民党総裁選挙について、総務会は2時間にわたる議論の末、全国一斉の党員投票は実施せず、8日告示、14日に両院議員総会を開いて新しい総裁を選ぶことを決定した。

 

総務会で、党執行部は「新型コロナウイルスへの対応もあり、早急に新たな体制を確立して政策を前に進める必要があり、後継総裁の選出は喫緊を要する」として、党員投票は実施せず、両院議員総会を開いて、国会議員と都道府県連の代表による投票で新総裁を選ぶことを提案。

 

これに対し、出席者からは「一刻も早く新しい総裁を選ぶべきで、党員投票を実施しないのもやむを得ない」などと、賛成する意見がだされた一方、「開かれた方法で総裁選を行うため、広く党員の意見を反映させるべき」などと、党員投票を求める意見も出された。

 

前日の8月31日には、中堅・若手を中心とする有志グループが、党員・党友投票の実施を求め、党所属国会議員の3分の1を超える145人分の署名を執行部に提出した。

党員投票を省略する党方針に対する反発は地方に拡大している。背景には、一部の有力者の主導で選んだ印象を与えかねない。国民には“密室政治”と映り、不信感が強まるとの危機感がある。

残念ながらそれらの動きは効を奏さず、今回の総裁選は、両院議員総会での投票(国会議員票394票と、47の都道府県の3票ずつ割り当てられた141票の合計535票)で争われることになった。

 

私はこの決定には大いに疑問を持っている。

執行部の説明だと「フルスペックの総裁選をやるとなると、準備におよそ2ケ月かかることもある。2ケ月間も安倍総理に負担をかけさせられない」とのこと。

確かに2ケ月は長すぎるが…緊急時なのだからフルスペックでやらなくてもよい。私の知るところでは、20日~1ケ月もあれば実施可能である。1ケ月程度であれば、総理も理解して頂けるのではないかと思う。また任期満了以外では党員投票を実施したことはないらしいが、いまは危急存亡の時、過去の慣例に捉われることはない。

 

若手議員の一人、小林史明青年局長は決定事項に対して「正直言って負けた。全国の党員員の皆さんの声をいただいたが、本当に申し訳ない」と、記者団を前にコメントしたが、全く同感である。

しかし、党の正式な手続きを経て決定されたのだから、あとはこのルールに従ってやる

べきことを粛々とやるしかない。

 

それにしても疑問なのは派閥の在り方だ。一致結束することが前提というが、派内に候補者がいないケースでも、何故一致結束して支持候補を決めなければならないのか!

候補者も政策も出揃っていない段階で支持候補を決める必要があるのか、私には疑問だ。

候補者を持つ派閥は理解できるが、候補者がいない派閥まで一致結束して候補者を決めるのは、派閥の論理以外の何ものでもない。そんな派閥の論理が嫌だから、私は無派閥でいる。

 

小選挙区になって選挙区でのサービス合戦はなくなったが、人事面での派閥の役割が残っている。なので、派閥の長が発言力を持つために結束が必要と言うのだが…果たしてそうだろうか?派内に候補者を持たない派閥は自主投票にすべきと私は思う。いずれにしても党の近代化のためには、人事制度改革が必要である。

 

石破茂・元幹事長、岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官と、立候補者の顔ぶれも揃い、いよいよ8日から選挙戦がスタートするのだが、各派閥の動向をみると既に勝負はついていると言えるだろう。

派閥の論理と力学で結果が決まる今回の総裁選と過去の自民党の古い体質が、私には重なって見える。「いつか見た景色」の再来に、国民からの批判を受けることは避けられないだろう。

 

私は前回同様、今回も石破茂候補の推薦人を引き受けた。

当選同期ということもあるが、彼の国民と向き合う政治姿勢「国民を信頼しなければ国民の信頼を得られない。信頼がなければ正しいメッセ―ジが伝わらない」に共感を覚えるからである。

政治に対する信頼が揺らいでいる今、石破氏の言葉が国民の政治に対する信頼回復に繋がるような戦いになることを期待したい。