「タイガーマスク運動」に思う

それは昨年のクリスマスに、群馬県中央児童相談所(前橋市)に贈られたランドセル10個から始まった。

その後「タイガーマスク運動」は北海道から沖縄まで全国各地に広がり、贈り主にも様々なキャラクターの名が登場している。

加古川市でも児童養護施設に「明石の伊達直人」さんから肌着や靴・文房具が入った箱が届けられたということだ。

この施設の施設長は私の親しい方だが、「ありがたいこと。(施設の子に)何かしたいが、どう切り出していいのか分からない人がたくさんおられたのだと、今回感じた」と話しておられる。

贈られた品々が生活支援に役立つのは言うまでもない。しかしそれ以上に、福祉施設で暮らす子どもたちにとって、「贈り主の温かい心」こそが何よりのプレゼントだろう。

「タイガーマスク運動」は子どもたちに、「世の中に自分を思ってくれる人がいる」という希望を運んでいるのだ。

寄付者の実名を明かさない「匿名」という奥ゆかしい手法も、いかにも日本的で美しい。寄附と言う行為を名誉を得るための道具として使わない、日本が誇るべき素晴らしい文化ではないだろうか。

日本の国に閉塞感が充満している今、この運動の広がりは、全国の国民にほのぼのとした温もりをもたらしている。

思えば16年前のこの季節。阪神・淡路大震災の被災者に救いの手をさしのべるべく、全国から兵庫に続々とボランティアの方々が集まった。その数は延べ160万人を超え、後に、平成7年は「ボランティア元年」とも呼ばれるようになり、NPO法(特定非営利活動促進法)の創設を加速する力ともなった。

今回の「タイガーマスク運動」も一過性のものに終わらず、新しい寄附文化として日本に定着することを願う。

一方で、民主党の目玉?施策である「子ども手当」。

こちらの方は、所得の如何を問わず(大金持ちのお孫さんでも)まんべんなくばらまかれるシステムだ。逆に、実の親と切り離されて暮らす児童養護施設の子どもたちには、手当が届かないケースも多いと聞く。

当初案では、そのために必要な財源は5兆円余り、これは政府の教育科学振興予算総額(文部科学省の予算総額)に匹敵する巨費である。

総理の唱える「最小不幸社会」がいかなるものか不明だが、政府が税を徴収して福祉の名の下に現金を配分するよりも、一人ひとりの国民が愛情を込めて恵まれない方々に奉仕する方がずっと効率的で、効果も高いはずだ。

身の回りには、奉仕活動の機会はいくらでもある。

そして、思いやりと絆を大切に、「仁愛」を尊重してきた日本人には、それを実行できる心があるはずだ。

いよいよ、通常国会が開会した。

冒頭の予算審議では、持続可能な財政の確立に向けて、社会保障改革や税制改革も主要テーマになるだろう。

アジア諸国の範となる制度をめざし、互助の精神に基づく「日本らしい社会政策のあり方」について大いに議論がなされるべきだ。