与党の審議拒否

3月1日未明、平成23年度予算案は関連法案と分離という形で衆議院を通過した。イレギュラーな形で予算案を受け取った参議院では、西岡参院議長が不満の意を示すごとく「2日受理」としたうえ、質問時間の配分を巡って民主・自民が対立し、理事会の席から民主党理事が退席、野党が前田武志委員長に早期開催を求めるという異例の展開をたどった。
予算審議は、2日遅れで、ようやく4日からスタートしたものの、今度は前原“前”外相の外国人献金問題や厚労相の主婦年金救済問題を巡り紛糾しそうな雰囲気である。

紛糾の種をまき続ける閣僚の脇の甘さもさることながら、民主党は政府“与党”として本当に予算成立をめざしているのだろうか?
予算の早期成立(年度内)は政府が責任を負うべき最優先課題である。今回の「政府与党による審議拒否?」という事態はにわかには信じ難い出来事だ。

枝野官房長官でさえ国会日程が遅れることを知らされていなかったようだが、政府と与党の意思疎通もままならない状況なのだろうか?
まるで(小沢氏の影響力の強い)参議院民主党が政府に対して嫌がらせをしているようにも見える。
いずれにしても政府与党内部の意思統一のなさや風通しの悪さ、もっと率直に言わせてもらえば「民主党の国益を忘れた党内抗争」が、ただでさえ難しいねじれ国会の運営を一層混乱させているのは間違いない。

このような情況では、与野党間の法案修正の話し合いなど出来る筈がない。
菅総理は「関連法案が成立しなければ国民生活に大きな影響がある」と繰り返し、4月から新年度の予算執行ができなければ、それは野党の責任であるがごとくの発言をされる。
しかし、党主討論で「予算案の対案を出して欲しい」とまで要求したにもかかわらず、衆議院予算委員会に提出された自民党の対案について全く議論もせず、政府案を早々に強行採決した行為は言行不一致と言わざるを得ない。

政府が自民党案について堂々と議論できない理由は明らかだ。議論の前提となるマニフェストの見直しについて、民主党内の意見集約さえままならないからである。
その証拠に、民主党執行部は、1月の党大会で公約見直しの機関を設置すると表明しながら、未だにその気配さえ見えない。(今年9月という遙か彼方の見直しの期限の設定からも本気度のなさがうかがえる。)

問題は、小沢氏寄りの議員が「政権交代の原点に回帰せよ」「公約は国民との約束」だと見直しに反対していることだ。
確かに、政党が公約を実現する努力をするのは当然であるが、その公約が「勉強不足の故に架空の財源をあてに描いた空手形」では実現しようがあるまい。これまでの事業仕分けを通じて、17兆円もの財源捻出は不可能であることを自ら証明したはずだ。
民主党内の原点回帰論は、党内権力闘争の為にする主張に過ぎない。

このままではいつまで経っても関連法案の出口は見えない。総理が呼びかけている社会保障と税の一体改革についての与野党協議なんて、到底実現する筈がない。
国民の目には政治屋の抗争としか映らず、政治不信はますます広がるだろう。

小沢氏の処遇を巡る一党内の対立が、国会運営を左右し、予算成立の命運も握ってしまうという状況を許しおいて良いのだろうか?
総理は野党に対して「熟議」を求める前に、自らが党首を勤める政党内での「熟議」を促した方が良いのではないか?

それにしても、政府民主党のこの体たらくにも拘わらず、自民党への期待が一向に回復しない事が悩ましい。