挙国一致の大連立へ

菅首相得意のパフォーマンスとも思える唐突な入閣要請を谷垣総裁が拒否してから2週間。「大連立論」が再び浮上し、自民・民主両党の執行部で地道に、前向きに検討されている。
先週の自民党各派の会合でも、古賀元幹事長が「与野党の枠を超え政治の信頼回復を果たすべきだ」と指摘。 町村信孝元官房長官も「災害復興には全面協力していくスタンス、大連立を否定はしない」と語った。

一方で、自民党内には、「首相の政権延命に利用されるだけ」との警戒感も根強く、「菅首相の退陣なくして連立はできない」との声も多い。

しかし、日本は今、未曽有の国難と相対している。
ただでさえ、社会保障制度の見直し、税制の抜本改革と財政の立て直し、デフレギャップの改善、国際経済連携(貿易自由化)への対応等々、年度前半で解決すべき喫緊の課題が山積していた。
その上に、世界最大規模の大津波災害と人類未経験の原子力事故である。

この時期に、政局論争や政権交代手続きを行っている暇はない。国家の総力を挙げて、難局打開に専念すべきだ。
これまでの菅首相の政権運営や危機管理対応には数多く疑問があるが、今は、協力せざるを得まい。いや、民主党の人材のみでは、日本を滅ぼしかねないからこそ、各党の総力結集体制が必要なのだ。

自民党が選択しうる現実的な対応として、私は、期間を限定したうえでの大連立を選択すべきだと考えている。

閣外協力では充分な情報の共有はできない。情報の共有ができなければ効率的な議論とはならないし、スピード感を持って有効な対応策を打つこともできない。
「責任政党」として政府に協力するのであれば、入閣をためらう理由はない。
むしろ、閣内で我々の主張を展開し、政府の政策として実行していくことが、責任政党にふさわしい選択だと私は考える。

もちろん連立内閣を組むのであれば、事前の政策のすり合わせは必要だ。
その際、お互いの従来の主張に拘っていたのでは、一致点を見出すことはむずかしい。
我が方とすれば、少なくとも4K政策(子ども手当て、高校無償化、高速無料化、戸別所得補償)は撤回してもらいたいところだが、民主党内がまとめ切れないのなら、一定期間棚上げと言うことで、妥協すべきだろう。

一定期間とは、概ね9月までが一つの目安となる。
被災地の応急復旧のための一次補正予算と特別立法は4月中に施行する必要がある。その次に、中長期的な復興を支援する法制度と第二次補正予算を7月頃には制定・編成しなくてはならない。同時期にTPPへの対応も決断を迫られる。そして、税制改革の方向も含めて、来年度予算編成の大枠を定めるのが9月だ。

この時期まで、9月までは、政治休戦ということにする。
政治休戦というからには、双方ともに大胆に歩み寄る必要がある。というよりも、過去のわだかまりを捨て、党派を問わず最強の人材を結集して難局に当たるのだ。

仮に9月の時点で、各党の協調が強固になっていれば社会保障制度と税制改正の完了まで連立を維持する道が開ける。逆に何らかの路線対立が鮮明化すれば、連立を解消し、論点を明確にした上で国民の判断に委ねればよい。
いずれにしても、最低限、被災地復興の目処をつけるまでは、政治休戦を維持したい。

統一地方選挙が終れば、大連立の環境は整う。補正予算の編成前に挙国一致の政治体制(大連立)を作り上げ、あらゆる課題について超党派で議論し、最短距離で結論を得る。現下の国難を乗り切る術は、これしかない。

それが今、政治に求められている「国家と国民への責任」だと私は考えている