社会保障改革

先週30日(木)、政府・与党の税と社会保障一体改革案が決定された。

「自助・公助・共助のバランスに留意」や「徹底した給付の重点化」「給付・負担両面での世代間・世代内での公平を重視」など基本的な考え方は、もっともな言葉が並んでいる。
しかし、具体的改革の方向となると、消費税の目的税化とその段階的引き上げ以外は見るべき内容はない。
本来、この改革に求められる重要な視点の一つは歳出抑制策であり、年金や医療費の給付をいかに適正化するかなのだが、これらについては検討方針が並ぶのみだ。

ただ、この案がこれから与野党協議を始めるための「たたき台」であるのなら、あまりガチガチに固めない方が良いかも知れない。自民党にしても、年金や医療費削減の妙案を持っている訳ではないのだから…。

今回の案で、民主党マニフェストの一部(増税無き年金改革)は破綻していることを自ら示された。後は先送りされているマニフェスト全体の検証・修正も急いで党内調整を終えて欲しい。
そうすれば、様々な政策課題に関する与野党協議も可能になるだろう。(与野党から信頼失墜状態にある菅総理の退場も、よりスムースな協議をもたらすだろう…)

自民党も、この国家的危機に直面している時期に「マニフェストを修正するなら解散しろ」とは言えるものではないし、言うべきではない。
石破政調会長は今回の案が閣議決定されていないことを理由に「協議のテーブルにはつけない」と発言しているが、私はそうは思わない。(石破氏の発言は、多分に菅総理に対する不信感に由来するのだろうが…)

そもそも、社会保障政策や外交政策(安全保障政策)は、短期的な視野で決定すべき事項ではない。たとえ政権交代があったとしても、揺らいではならない政策なのだ。
逆に言えば、これらの政策は、常日頃から党派の主張を超えた国策として、議論しなくてはならない。(今回の政権交代ではこのルールを破ってしまった故に日米関係にひびが入り、子ども手当等をめぐる混乱を来してしまった。)

ここ数年間、私は一貫して社会保障問題について「超党派の協議が必要」と主張してきた。前回の総選挙や昨年の参議院選挙での我が党のマニフェストに「超党派協議機関」について言及することにも汗をかいてきた。

あと1年で団塊の世代(1947~49年生まれ)が65歳となり、年金の受給側=支えられる側になる。加齢とともに医療の世話になる機会が増大することも避けられない。
昨年秋の国勢調査が示すとおり、我が国は人口減少社会に突入した。

急激な少子高齢化に見舞われるこの社会が持続可能であるための条件は、社会保障の給付を抑制するか、さもなければ、負担を上乗せするか、この二者択一だ。
税と社会保障の一体改革は待ったなし。もう先送りすることできない。

ところで会議の席で、「今回の決定は歴史的な決定だ。皆さんの努力を含めて誇りに思う」と言った菅首相だが、かつて「(この問題に)政治生命を賭ける」とまで言っていたのに、今回の取りまとめに汗をかいた姿は一向に見えなかった。
「平成の開国」とかかっこよく叫んでいたTPPは、全く耳にしなくなってしまった。
浜岡原発を止めた時の勢いはどこへ行ったのか、原発再起動問題は海江田経済産業大臣に任せっきりだ。

場当たり的に次々と国民受けを狙った新しい課題を見つけては延命を図って来た菅総理だが、特例公債法・第2次補正予算に加えて、今は再生可能エネルギー全量固定価格買取法案の成立が退陣の条件(一定のメド)と言われている。
「与野党協議を呼び掛ける」とのことだが、貴方の退陣がその実現への最短コースであり、それこそが「政治生命を賭ける」ということだと、私は言いたい。