大震災発災から5ヶ月

「震災復興に一定のメドがついたら若い世代に引き継ぎたい」という決めセリフで、菅直人と鳩山由紀夫の茶番劇が演じられたのは、6月2日のこと。
当時は今すぐにでも退任するかと思われた菅首相は、次々と思いつきの懸案を語り続け、まだまだ総理の椅子を手放そうとはしない。
今や、「一定のメドがつくまで」という言葉は、「いつのことか定まらない将来」を指す意味のように使われている。

この間、与党執行部があの手この手で自らの党首に総理退陣を迫る茶番、閣議で調整されない「脱原発宣言」を発表する首相記者会見など、言語道断の振る舞いが繰り広げられている。これらが示すのは、強すぎる総理の権限、暴走する独裁者“菅直人”に振り回される日本の姿だ。

2ヶ月の間、与野党間のみならず、与党・民主党内でも総理の退陣に向けて、様々な駆け引きが行われてきた。
しかし、被災地の復興は具体的に進んだのだろうか? 景気回復をめざす政策は打ち出されたのだろうか? 社会保障政策の方向性は議論されたのだろうか?
このままでは、日本は退化を始め、経済的な縮小を余儀なくされる。 

首相周辺が退陣の条件としている「再生可能エネルギー特別措置法案」と「平成23年度公債特例法案」の成立。
だが、前者が成立しても太陽光エネルギーなどの定額買い取り制度が導入されるのみで、即座に発電所が建設できる訳ではない。一方、太陽光発電所が急激に増えてくると買い取りコストも上昇し、電気料金が値上がりすることになる。
そもそもこの法案の目的は温暖化対策であり、提案された2月時点の状況では、再生可能エネルギーは原子力を補完する地位(原子力で稼いだ利益で、再生可能エネルギーを拡大する)であったのだ。孫さんをはじめ発電所設置者は儲かるのかもしれないが…、このような未熟な法案を熟議なしに通す必要があるのか?

後者は、本来、3月末に当初予算案と一緒に成立していなければならない法案だ。それがここまでずれ込んだ直接の要因は衆参のねじれ状況だが、本質的な原因は民主党マニフェストの財源見通しの甘さにある。
そもそも、予算関連法案の審議がストップするリスクは、昨年の参議院選挙で衆参ねじれ現象が生じた時点で分かっていたことだ。

何回となく繰り返された与野党協議を経て、先週、漸く民・自・公3党は子ども手当についての修正合意をした。バラマキ色をやや薄めた、所得制限付きの児童手当の復活だ。
岡田幹事長をはじめ政府与党幹部は民主党2009年マニフェストについて、「見通しが甘かった」と言及し、不十分ではあるがマニフェストの破綻を認め国民に謝罪もした。

民主党内ではこの発言を巡って、「マニフェストは民主党の魂、子ども手当の撤回は自殺行為」(鳩山前首相)との批判もなされている。しかし、「無駄を無くせば財源はあるんです」と選挙カーの上から絶叫されていた演説を、鳩山さんはよもや忘れられてはいまい。

一方、自民党内でも公債特例法案の対応については意見が分かれている。この法案を盾にとり、あくまでもマニフェストの全面撤回を求め、解散を迫っていくか? それとも、今年度財政の早期正常化を進めるか?
私が選択するのは、後者だ。
残されたバラマキ3K(高校、コメ、高速)については、論点を整理し年度内に引き続き議論することとすれば良い。今は、多少の妥協をしても政治を少しでも前に進めることが求められている。

マニフェストが国民との約束(契約)である以上、民主党は野党よりも国民に対して説明責任を負っている。いずれにしても民主党政権の功罪は自民党が追求しなくても次回の総選挙で民意により裁かれるのだ。

大震災発災から5ヶ月、週末には犠牲者の初盆を迎える。
数多の御霊もふるさとに帰って来られるが、帰るべき家を失った方々も多い。
遅々として進まない被災地の復興の光景を見たら、御霊も安らかな想いにはなれないだろう。
あらためて政治が果たすべき責任を考えさせられる。