坂の上の雲

「坂の上の雲」と「南極大陸」。私が今注目している2つのTVドラマだ。

「坂の上の雲」は、言わずと知れた司馬遼太郎氏の代表作。近代国家(坂の上の雲)の建設に向けて、日本が懸命に駆け抜けた明治という時代を、旧松山藩出身の3人の生き様を中心に壮大なスケールで描いた歴史ドラマである。
ロマノフ王朝末期のロシアを再現する海外ロケに、旅順攻防戦や奉天大会戦、そして日本海海戦の戦闘シーンを描くとあって、さすがのNHKでも予算不足に陥り、3カ年にわたる制作、放映となったようだ。

植民地拡大競争を繰り広げる欧米列強国。その仲間入りをすべく近代化を図る日本。その行き着く先は、朝鮮半島と中国大陸北部をめぐるロシアとの対立だった。結果、先進国の座をかけて、この超大国と雌雄を決すべく戦わざるを得なくなる。
ひたすら祖国の繁栄を願って、西洋の知識を吸収する若者の姿。国力戦力の差を埋めるべく、知力を結集して練り上げる戦術と冷静沈着な外交戦略。
国家の存亡を一身に背負い、ロシアと互角に渡り合った明治のリーダー達の気骨に、感動を覚えずにはいられない。

もう一作は「南極大陸」。第二次世界大戦後、廃墟から立ち上がった日本が国際社会への本格復帰をめざし、国の威信をかけた南極越冬に挑戦するドラマだ。
日本各地の都市が焦土となった状況から再出発して、わずか12年後(昭和32年)のことである。当時の国力を考えると、充分な装備を整えることは叶わず、南極大陸での越冬観測は、かなりのリスクを伴う挑戦だった。
実際、観測船「宗谷」は氷に閉じ込められ身動きがとれなくなり、ソビエトの「オビ号」(ドラマはアメリカ船となっていたが)に助けを求め、かろうじて氷海から脱出したのだ。

原作の題名が「南極越冬隊タロジロの真実」であり、最大の見せ場は、置き去りにされたアラスカ犬がたくましく真冬の南極を生き抜き、次期越冬隊と出会う感動のシーンだから、主役は犬達なのかも知れない。

しかし、この物語のもう一つの見どころは「科学技術分野でも先進国の仲間入りをする」という国家目標に向かって、南極という未知の大陸の国際共同観測に参加し、あらゆる困難にチャレンジする研究者たちの姿ではないだろうか。

二つのドラマに共通しているのは、日本という国家に対する先人達の熱い思い、そして、日本人としての誇りである。彼らの尊い「志」があったからこそ、今の日本がある。

学校教育では「日本史が軽んじられてる」との意見も多い。
事実、ゆとり教育と受験中心教育のなか、高校の履修科目で日本史は選択科目の一つになってしまっており、義務教育においても明治から昭和にかけての近代史教育は、特に内容
が薄いように感じる。

しかし、自国の歴史や文化を知らない主体性のない人物は、国際社会でも評価されない。日本史をしっかりと学ぶことは、国際化の時代だからこそ重要となるのではないだろうか。
なかでも明治から昭和への歩みには、先人により創られた教材として、誇りを持って学ばなくてはならない多くのメッセージがある。

国難といわれる今だからこそ、我々は歴史の中の先人の心に学び、この国の未来に責任を持たなければならない。
明治から昭和の時代には欧米先進国という明確な目標(坂の上の雲)があったが、今や先頭を駆ける一員となった日本には倣うべき先例はない。今はまず、「我々がめざすべき“雲”は何か」、そして「そこにたどり着くために何を為すべきか」について、しっかり議論することが求められている。

「今、この国の為に何ができるか?」昭和55年(1980年)大ヒットした映画「二百三高地」の新聞広告のキャッチコピーが、私の頭をかすめた。
国政を志す一人一人がこの問いに応えたなら、今の様な政治にはならない筈だが…。

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