内閣改造

先週末、通常国会前の恒例行事と化した内閣改造が行われた。一昨年の鳩山内閣改造では藤井大臣辞任劇の後を受けた菅財務大臣が目玉、昨年の菅内閣改造では野党にいた与謝野経済財政大臣の引き抜き起用が注目を集めた。
そして、今回の改造の主役は「社会保障と税の一体改革」担当大臣として入閣した岡田副総理だ。

世間ではこの改造を、先の国会で問責を受けた二閣僚(山岡賢次前国家公安委員長、一川保夫前防衛相)更迭の隠れ蓑と揶揄する声も聞かれるが、私は改革実践に向けた野田総理の不退転の決意を示す改造と、前向きに受け取りたい。

このコラムで繰り返し言及しているが、高齢者への給付を生産年齢層が負担する形の社会保障制度は、もはや持続不可能であり、無理を重ねてきた日本の財政は瀕死の状況にある。今すぐ構造改革に取り組まなくては、この国の将来は危ういのだ。
だからこそ私は、消費税の増税に真正面から取り組む野田総理の一貫した姿勢を、大いに評価している。岡田副総理も、平成21年の民主党代表選挙における主張から強力な財政再建論者であることがわかるし、官僚出身だけに当然ながら政策通である。
この内閣改造を契機に、両人の下に与野党を問わず憂国の士が結集することを期待したい。

それにしても、ここ数日の野党の発言にはいささか首を傾げたくなる。
「山岡、一川の両大臣は問責を受けたのだから、両氏が出席する審議には出席できない」と審議拒否にまで言及しながら、両大臣が変わったら、「適材適所でなかった事が明らかになった。総理の任命責任を追求する」と言っているらしい。
国民の政治に対する厳しい目を考えたら、今はそんなくだらない議論で時間を空費している時ではない。

与野党協議への呼びかけに対する自民党の対応にも違和感がある。
谷垣総裁は「消費税増税はマニフェスト違反、嘘つきの民主党に手を貸すつもりはない」との理屈で協議を挋否しているそうだが…。果たして正しい対応だろうか?
確かに、かつての福田内閣当時、テロ特措法や道路特定財源を巡り、再三与野党協議を呼びかけたものの、不誠実な民主党の対応により合意に至らなかった。しかし、それは少なくとも、協議の席に着いた上でのことであり、門前払いではなかった。

マニフェストは「有権者」が支持政党を選択するための材料であり、政府の政策提案権を拘束するものではない。むしろ、マニフェストに掲げた政策が誤っているのであれば、修正するのが当然である。勿論、国民に対し変更の理由を説明しなくてはならず、今回の場合は大変更(マニフェスト総崩れ)なのだから謝罪も必要かもしれない。

しかし、解散に追い込みたいがために、協議の席にすら着かないという行為では「党利党略」という誹りは免れない。このようなことを繰り返していては、誰も再度自民党に政権を託したいとは思うまい。

自民党がとるべき行動は、早急に自らの社会保障と税制の改革案を取りまとめ、堂々と与党に、国民に示すことだ。そして、与党に対しても、素案ではなく、合意された大綱の提示を求めるべきであろう。(そのプロセスで民主党の分裂、自壊も想定されるが…)

今からでも遅くない。自民党には責任政党として、国益のために小異を捨てる王道の政治を期待したい。
政権復帰はその延長線上にあると、私は確信する。