決戦の年?

先週24日(火)、社会保障と税の一体改革を最大の論点とする第180回国会が開会した。
いよいよ政治決戦の幕明け。と言いたいところだが、首相の施政方針演説からも、自民党谷垣総裁の代表質問からも新しい政策論戦の気概は感じられない。
相も変わらず永田町内の口げんかにも等しい、政策度外視の足の引っ張り合いが演じられている…と感じているのは私だけだろうか?

政権与党と野党第一党がこんな具合では、第三の極を求めて石原新党なる動きが活発になるのも無理もないことだ。
責任の一端は解散総選挙を迫るばかりの我が自民党の戦法にもある。目を覆うばかりの敵失が積み上がっていることは認めるが、まずは自らの政策を堂々と提案し、本質的な論議を深めてもらいたい。国会審議は政権担当能力をアピールする絶好の機会なのだから。

そもそも年金についての自民党の政策はいかなるものだろうか。
平成16年の年金制度改革、これは人口構成の高齢化により急速に重くなる年金保険料負担に一定の歯止めをかける目的であった。
保険料の最高限度を厚生年金については所得の18.3%、国民年金については月額1万6千9百円とし、それ以上の引き上げは行わないこと。そして、基礎年金への国庫負担=税金投入をそれまでの3分の1から2分の1に引き上げる。また、給付抑制のために、それまでの物価単純連動方式から、平均寿命の延びや支える者の減少を考慮したマクロ経済スライド方式(端的に言えば物価上昇率より年金上昇率を低くする方式)を導入した。

この方式で数十年先までの収支見通しは立ったはずであったが、残念ながら成長するはずの経済が停滞したため保険料に不足が生じ、長期の物価下落はマクロ経済スライドの出番を無くしてしまった。
今後も保険料方式を基本としていくとしても、新たな給付抑制策、保険料率の見直しが必要となる。なおかつ、基礎年金の2分の1の国庫負担を維持するにも消費税率の引き上げは必要だ。

一方で、民主党の年金案は岡田代表時代の平成16年参院選マニフェスト以来、全額税負担による最低保障年金のうえに、保険料を財源とする所得比例の積立年金を重ねる二段階方式を主張している。
ただし、全額税負担で月7万円の最低保障年金を実現するためには、相当の消費税引き上げを覚悟しなくてはなるまい。民主党にはその税率案を明らかにする責務がある。

両党の主張の違いは、大きく言えば基礎年金(もしくは最低保障年金)部分の給付対象をどうするか、税投入の規模をどの程度にするかだ。

いずれにしても、両党の主張とも消費税引き上げが必要という点では一致している。と言うよりも、既に消費税増税を当てにした交付国債を投入しなくては基礎年金が賄えないほどに財政は痛んでいるのだ。
仮に、ここ数ヶ月のうちに自民党が政権を奪回したとしても、この状況は変わるものではない。

今国会審議の争点は、社会保障制度と消費税問題のみではない。24年度予算をはじめ、早期に結論を出すべき課題は山積している。
事前協議への参加表明をしたままのTPP対応に、20年に及ぶデフレ経済からの脱却、超円高対策、エネルギー政策の転換等々、もちろん普天間基地の移転問題もなんとかしなくてはならない。

個人的には一日でも早く国政に復帰したいのは言うまでもない。しかし、今の日本が置かれた状況を考えると、解散総選挙の前に、まず、政策議論を尽くす必要がある。今すぐ解散しようにも、国民には政策の選択肢が示されていないのだから…。