晴れたらいいね

5月の播州地方は思った以上の少雨(平年の43%の降水量)だったらしく、先週金曜日には、11日から加古川大堰の取水制限を行うことが決定されていた。これから田植えにかかろうという農家の方々は気が気でなかったに違いない。
その直後、先週末の雨とともに近畿地方の梅雨入りが宣言され、制限はひとまず未執行に終わった。この一週間で加古川平野の田園には水が張られ、早苗が並ぶ美しい水田風景に模様替えするだろう。

梅雨の長雨は、稲作には無くてはならない気象である。特に盛夏の雨量が少ない瀬戸内海地方にとっては、ため池に水を満たしておくために不可欠だ。
しかし一方で、じめじめと蒸し暑いこの一月余りは決して過ごしやすい季節ではない。むしろ気分は鬱陶しく、体調も崩しやすい。
「梅雨」の語源である中国語「黴雨(ばいう)」の「黴」はバイ菌のバイであり、カビのことである。カビはもとよりサルモネラ菌やブドウ球菌等々、つゆ時期の高温多湿は細菌の増殖にも最適だ。食中毒にも気をつけなくてはならない。

ところで、このところ全く日が差さず、カビがはびこった感のある永田町。
決められない政治に国民の不満と不信は最高潮に達し、今や世論調査の政党支持率で第一位を占めるのは「支持政党無し」に定着してしまった感がある。
その永田町の今週。通常国会の会期末を21日に控え、まさにヤマ場を迎える。先週末には総理がようやくながら原発再稼働の意思表示をし、また、15日を実質上の期限として「社会保障と税の一体改革関連法案」についての民主、自民、公明の修正協議も始まった。

この修正協議の成否は、日本の政治が意思決定能力を有するか否かを示すものとなるだろう。仮に金曜日までに何も決められなければ、総理がその地位を危うくするのみならず、既成政党そのものが存在意義を問われることになる。

確かに、「年金のあり方」や「高齢者医療保険」をはじめとする社会保障制度の根幹に関する議論を棚上げし、消費税増税や被用者年金の一元化等のみを決定することには抵抗感もあるかもしれない。
しかし、今、合意できる部分だけでも決定していかなくては、改革を一歩でも進めなくては手遅れになる。それだけ、日本の財政は傷んでいるということを国民にご理解をいただかなくてはならない。

本来、社会保障制度は時間をかけて、じっくりと議論すべき課題である。「棚上げ」という消極的な受け止めではなく、今回の協議手法をこれからの与野党協議のルールとして確立していくという気概が欲しい。
社会保障制度や税制のみならず、国防も、外交も、通商も、いづれの政党が政権を担うにしても政権交代の度に180度方向転換できるはずがない。国家の基本政策は常に与野党が協議し、一定の大枠を定めておくべきなのだから。

梅雨の語源は、梅の実の熟する季節という説もある。この一週間、実りある議論を尽くし、野田総理には晴れ晴れとした、後顧無き気持ちで18日からのG20に臨んでもらいたい。
「晴れたらいいね」という、DREAMS COME TRUEのヒット曲がふと頭をかすめる、今年の梅雨入りである。