オスプレイ

海岸部に生息するタカの一種“ミサゴ”。魚を見つけると空中に静止(ホバリング)した後に、急降下して獲物を捕らえる。別名“魚鷹”とも呼ばれるこの鳥の英語名は“Osprey”、米国海兵隊と空軍が採用する輸送機V-22の愛称でもある。

V-22はオスプレイの名に恥じない性能を有する機体だ。ヘリコプターと同じく垂直に飛び立ち、固定翼機として高速で遠距離を飛翔し、ホバリングも急降下もできる。現在、在日米海兵隊が装備している大型ヘリCH-46シーナイトとは比較にならない能力差だ(CH-46は50年前の設計だから当然だが…)。沖縄本島から尖閣諸島ならわずか1時間で防衛隊を送り込むことができるし、空中給油を行えば朝鮮半島までも飛べる。

仮に3年前の政権交代がなければ、何の問題もなく配備が進み、オスプレイの名もこんなに有名になることはなかっただろう。導入反対派は「事故が多い危険な機体」と言うが、パイロットの命を危険にさらすような機体を米軍が採用するだろうか? 現に事故率自体も垂直離着陸戦闘爆撃機AV-8ハリアーに比べると3分の1に過ぎない。(10万時間あたり事故率1.93対6.76) 離島防衛を考えると我が自衛隊でも導入を検討すべきと思える輸送機である。

問題はオスプレイの性能ではなく、街中に存在する普天間基地にある。仮に事故を心配するなら、万が一の場合も市街地への墜落を避けられる海上空港を整備するキャンプ・シュワブへの基地移転を急ぐべきだろう。その努力を放置して、事を進めようとするから問題がこじれてしまう。元をたどれば「少なくとも県外」という思いつき発言により、普天間返還を台無しにした鳩山元総理の責任は極めて重い…

もう一つの問題とされているのは訓練飛行。こちらはオスプレイに限った話ではないが、人家に危害を及ぼすような危険な訓練飛行を歓迎するはずがない。訓練飛行ルートは集落を避け、また、必ず事前に公表してもらいたい。

そもそも在日米軍は、何のために日本に駐在しているか? その目的を忘れ、ただ米軍基地を危険視、迷惑施設視することは無責任だ。我が国から見れば60数年前の占領軍も今や国土を守ってくれる傭兵的な側面を帯びている。さらに言えば沖縄の海兵隊は、日本防衛はもちろん、韓国からフィリピンまで東アジアの国々の平和維持のために存在しているのだ。

マキャベリは君主論で言っている。「自らの安全を自らの力で守る意思の無い場合、いかなる国家といえどもその独立と平和は期待できない」と。
米軍基地の存在を否定的に唱えるとき、それに代わる自国軍を配備するという発想であればそれも一理ある。(自衛隊がその能力を有するか否かはともかく) 逆に基地は危険だから要らないというだけなら、国家の最重要機能である安全保障政策を考えない平和ボケの無責任な主張だ。

7月に発表された防衛白書にも記されているとおり、巨大な隣国の軍事費は年々二桁の伸びを続けている。装備は近代化し、海軍の充実により沖縄列島を越えて太平洋進出の姿勢も見られる。尖閣諸島だけではない、中国は南シナ海の南沙諸島でも周辺諸国と理不尽な領有権紛争を起こしている。

東アジア全体の安全保障を考える上でも、こういった動きは無視できない。外交を優位に進めるためにも力は必要だ。それが国際社会の現実である。まずは米軍をはじめとする同盟国とともに、備えを固めなくてはならない。